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44話 ブロンズソードの引き渡し

「ラルド兄さん! 頼んでたやつ、できたー!?」


「ああ、できているよ」


 朝方に開店準備や品の整理に勤しんでいると、元気のいい声音と共にミアが現れた。

 肩で息をしている辺り、急いで来たのか。


「ほら、十本。重たいけど持てる?」


「あたしだって伊達に冒険者続けてないから、これくらいなら大丈夫……っとぉ!」


 纏めたブロンズソードを渡すと、ミアは担ぐようにして持ち上げた。


「それに行きは馬車だし、いっぺんに遺跡へ持ち込むのは二、三本だから」


「ってことは、何度も遺跡に出入りするのか?」


 これは知り合いの冒険者から聞いた話だが。

 冒険者も新発見された遺跡へ潜ったら、一気に最奥部まで進行するわけではないとか。

 大抵の場合、遺跡付近に野営地を設置してそこを拠点にして、消耗したら野営地に戻って休息、の繰り返しで攻略を進めるらしい。

 つまりミアは今回、新発見された遺跡の攻略にでも行くんだろうか。

 そう思いつつ聞くと、ミアは「そうなんだけどねー」と答えた。


「ただ、ちょっと今回の依頼は変でね。何でも第七遺跡を攻略してこいって話で」


「第七って、五十年も昔に攻略済みになった遺跡をまたどうして?」


「どうしてって言われても、あたしにもさっぱり。ただケルベロスまで遺跡の出入り口に現れているから、早く攻略しろってのが国から各ギルドに出された依頼だよ」


「ケルベロスか……」


 そうか、遺跡からそんなものが出入りしているから、各地の冒険者が慌ただしくなっていると。

 かつて遺跡攻略時に討ち損じたケルベロスが付近の街三つを廃墟に変えたという話もあるし、遺跡から出ている時点で大問題だ。


「まぁケルベロスはともかく、【抗魔力】スキル持ちのミアなら大抵の魔物のブレスも攻撃も無効化するか半減できるだろうし、大丈夫だろうけど。それでも気をつけて行ってくるんだぞ? それにブロンズソードも十本もあるから、遠慮せずに使っていってくれ」


「うん、ありがとうね。それじゃ、行ってきます!」


 ミアは出発間近だったのか、大急ぎといった様子で店から飛び出した。

 台風のようにミアが現れて過ぎ去った後、誰かが店に入ってくる気配があった。

 見れば、マロンが現れていた。

 不安げな表情から、ミアの話を聞いていたらしかった。


「……ミアさんを行かせてしまって、よろしかったのですか? ケルベロスが徘徊する遺跡など……」


「うーん、正直少し心配ではあるけど」


 でも、と俺は思い直した。


「きっと大丈夫だ。ミアも仲間と一緒に遺跡攻略は何度か経験したようだし、一人で行くって訳じゃないだろうから」


 それに冒険者を生業としているなら、多少の危険があっても行く覚悟はあるだろう。

 今までそうやって生計を立てていたのに、今更俺が引き止めるのは野暮だ。


「ですが、もしご主人さまと一緒になるなら冒険者引退も十分視野に入ると、ミアさんも言っていましたよ?」


「……マジで?」


「マジです。ミアさんが少し心配と言うなら、早めに一緒になるのもありかと」


 ふふん、と意味深げに笑うマロン。

 うん、それは……そうだな。

 心配なら早めに一緒になれと言うのも、割とその通りだと思う次第だった。

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