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32話 サフィアの頼み

 仕事に余裕ができたこともあり、作業場に篭り続けて数日。

 チョコたちへのミスリル加工もあと一息といったふうに感じていた、そんなある日のこと。


「話がある?」


「うむ、少々頼みたい件があってだな……仕事中にすまない」


 久しぶりに店に現れたサフィアは、少し硬い気配を漂わせていた。

 それからサフィアは、どこか申し訳なさそうにしながら言った。


「……近日、我々のギルドに力を貸して欲しい」


「んーっと、手を貸すのは構わないけど……具体的にはどんなふうに?」


 また遺跡へ行っての【聖剣】回収だろうか?

 それとも……。


「最近台頭している【双頭のオロチ】残党の件だ。どうか奴を倒すのに……とまでは言わないが、手練れたちがギルドを留守にする間、番を頼みたい」


 やっぱり闇ギルド絡みの話かと思案しつつ、サフィアに聞く。


「手練れたちが留守って、サフィアたちでどこかに行くのか?」


「……もしや、手練れが大挙して【双頭のオロチ】残党を叩きに?」


 横で話を聞いていたマロンの言葉に、サフィアは頷いた。


「その通りだ。これまで【双頭のオロチ】残党の手にかかったと思しき正規ギルドの犠牲者は、既に三十人を超える。……その中には、あのマイングも含まれている」


「なっ、あの人が……!?」


 確かにミアの話では連絡が取れないって話だったが、同時にかなりの手練れだとも聞いていた。

 その人までもが【双頭のオロチ】残党の手に。

 ……マイングにはあまりいい思い出がないけれど、それでも。


「……サフィア。俺もその【双頭のオロチ】残党の討伐に加わるのはまずいか? 元々は俺がサフィアたちに助けを求めたところから始まった話だ、放ってもおけない」


 もしかしたら、マイングのように今度はミアまで。

 そう思うと、居ても立っても居られない気分になった。

 俺は椅子から立ち上がろうとするが、サフィアはそれを制してきた。


「いや、闇ギルドの討伐は正規ギルドの義務だ、武器職人のあなたが責任を感じることではない。それに【双頭のオロチ】もいずれどこかの正規ギルドの手で討たれていただろうし、その場合も今回のように残党による犠牲者も出ていただろう。……加えて今回の件は、現場にいながら残党を討ちもらした我々の責任でもある」


「サフィア……」


 サフィアは渋面を作って首を横に振って、口を引き結んでいた。

 そこから「どうかここは堪えて欲しい」と言われた気がして、俺は少し閉口した。


「……悪かった、ちょっと冷静じゃなかった。それじゃあ俺はサフィアたちが残党を倒しに行っている間、ギルドを守っていればいいんだな?」


「その通り。本来、武器職人のあなたに頼む筋の話ではないのは重々承知している。しかし万が一にも行き違いも起こりうる以上、信頼できて腕の立つ人物をギルドに置いておきたい。最近の被害の数と大胆な手口から、残党がギルドに乗り込んでくる可能性もなくもない……だからこそどうか、よろしく頼みたい。【精霊剣】を扱うあなたにこそ」


 サフィアの真摯な思いに、俺は即座に頷いた。


「ああ、了解したよ。サフィアたちが全力で残党討伐や捜索に専念できるよう、しっかり番は引き受ける」


「ラルド……! ありがたい、そう言ってもらえると助かる」


「それでその残党討伐、いつ頃やるのか聞いてもいいか?」


「ああ、それはだな……」


 俺はサフィアから、残党討伐の日程やら段取りを店の奥で聞いた。

 サフィアも「どこからか漏れる可能性がある以上、計画はあまり詳細には言えない」と話していたが、それでも俺がいつギルドで番をすればいいかはちゃんと教えてくれた。


 こうして俺は、サフィアたちのギルドに微力ながら力を貸すこととなった。


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