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15話 【聖剣】回収の依頼

「マスター、妾も冒険に行きたいぞ!」


 プラムが現れてからしばらく経ったある時、店の定休日にて。

 そう言われた時に感じたことと言えば「遂にきたか」だった。

 ……最近店に来る冒険者たちの話を聞いてプラムが目を輝かせているのは知っていたので、そろそろそんなことを言い出すとは予想していたのだが。


「そう言われてもなぁ。俺は職業【武器職人】で冒険者じゃない。それに冒険って、遺跡やダンジョンへだろう? あそこに立ち入るには冒険者ギルドの許可も必要だから、そもそも入れなくてだな……」


「許可が何か。マスターには【精霊剣】が三本もついているから、そこいらの冒険者よりは十分以上に戦えるではないか。マスターも男なら、そんな決まりごとより浪漫を求めるべきと進言するぞ。……その方が面白そうだし」


 そう言って、プラムは豊かな胸の前で腕を組んで少し頬を膨らませていた。

 ……進言とか言っていたが、その後の本音が小声とは言えダダ漏れだった。


「どっちかと言えば、プラムは店番ってよりは外に出るタイプって言うのは俺も思うけど。それでもせめて山とかにしておかないか? そっちにも魔物はいるし、十分冒険っぽいことはできるさ」


「いんや、山には宝がないからダメだ〜っ! 金銀財宝にアーティファクト、それらを魔物と戦い勝ち取るロマンを妾は語っていてだな……」


 と、プラムが諦めずに食い下がってきたところ。

 コンコン、と店の扉がノックされた。

 今日は店が休みなので鍵をかけていたのだが、誰か来たのだろうかと俺は扉を開けた。


「ラルド、定休日にすまない。急ぎで頼みたい用事があるのだが、少しいいだろうか?」


 扉を開けた先に立っていたのは、サフィアだった。

 それにサフィアの後ろから、ひょこりとミアも「ラルド兄さんこんにちは!」と現れた。

 それを見て、さしものプラムもひとまず静かになった。


「おお、二人とも今日はまたどうしたんだ。まだ午前中なのに」


 普段二人が店に来るのは、依頼が終わる夕暮れ時だ。

 なので午前から二人が顔を出すのは、だいぶ珍しいことではあった。


「それで用事って言うのは?」


「うむ……今日は丁度店も休みで客もいないようなので、単刀直入に言ってしまおうと思うのだが」


「ラルド兄さん、あたしたちと一緒に遺跡に来てくれないかな?」


「……えっ? 遺跡!?」


 ミアの誘いを聞いた途端、プラムが「おおぉ〜!!」と声を漏らして瞳を輝かせた。

 えーと……遺跡って確か、冒険者以外は基本的に立ち入り禁止だった筈なのだが。

 一体どういうことなのかと、俺はミアとサフィアから詳しい話を聞くのだった。


 ……そうして、それから数時間後。

 ミアやサフィアの所属するギルドの【魔術師】スキルを持つ冒険者の転移魔術によって、俺たちはとある遺跡の前まで来ていた。

 場所はおおよそ、俺たちの街から大山を東へ六つほど超えたあたりなのだとか。


「それで、ここが例の遺跡か」


「その通り。半年ほど前に発見された第九七番遺跡ログレイア、ここが今日の目的地だ。まずは同行してくれたこと、心から感謝する」


 軽く会釈してきたサフィアに、俺は一応と思い聞いてみる。


「そういえば確認だけど、俺本当に入っても大丈夫なんだよな? アーティファクトの盗掘防止とかの理由もあって、冒険者以外で許可なく遺跡に入った奴は捕まるって噂だけど」


 サフィアはこくりと頷いた。


「問題ない。今回に限ってはわたしがギルドマスターから直接、あなたを連れて遺跡に入る許可を得ている。わたしもS級冒険者の端くれ、その辺りの抜かりはない」


「なら大丈夫か。それで今回はこの遺跡の最奥部で未知のアーティファクトが見つかったからその調査や回収を頼みたい、って話だったよな」


 ……そう、ミアやサフィアが俺に頼んできたのは今言った内容の話だった。

 しかもこの遺跡の最奥で見つかったアーティファクトと言うのが……。


「【聖剣】……か。しかも回収しようにも最奥部は結界が張られていて入れないから、前にサフィアの【聖剣】の結界を破った俺やマロンの力を借りたいと」


「うむ、先ほど店で説明したがその通りだ。残念ながらわたしや知り合いの【聖剣】では出力不足なのと、そもそも結界を破る仕様でもないのでな」


「それに【聖剣】って古代のトンデモ兵器だし、見つけた以上は放置できないから。……大丈夫、道中はあたしたちがラルド兄さんを護衛するから。安心してね?」


 そう言ってミアは、可愛らしくウィンクしてきた。

 B級のミアとS級のサフィアが一緒なら、遺跡の中でも安心だとは俺も思う。

 しかし……。


「おぉ、これが遺跡なのですね……! 実物を見るのは初めてです」


「チョコ、早く入ってみたい」


「妾の腕の見せ所が遂に……!」


 我が家の【精霊剣】たちは既に石造りの遺跡の入り口に立っていて、早くも中へ進んで行きそうだった。

 ちなみにこの三人は俺の武器扱いとのことで、特に遺跡に立ち入る許可は必要ないとか。


 ……と言っても、俺が近くにいないと魔力供給が絶たれて三人は武器の姿に戻って動けなくなるので、許可の有無に限らず勝手に遺跡へは入れないのだが。


「ラルド。あなたの【精霊剣】たちはもうやる気も十分と言った様子だし、もう行ってしまおうか?」


「ああ、それがいい」


 現にプラムが「まだ入らないのか、マスター!?」と視線で訴えてきているし。

 俺は【精霊剣】たちに「皆、今回も頼むぞ」と言ってから、共に遺跡の中へと入って行った。


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