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13話 【精霊剣職人】スキルとアーティファクトの修理

「ふむ、今日も中々繁盛しているようで何よりだな」


「おっ、サフィアか」


 決闘が終わり、サフィアがブロンズソードをどか買いしてからしばらく。

 最近店へ来ることが多くなったサフィアは、仕事終わりか今日も顔を出していた。


「サフィアがギルドの人たちに紹介してくれたお陰で、大分売り上げも増えたよ」


 サフィアはS級冒険者にして街で五人しかいない【聖剣】所持者。

 そんな大物の紹介があったからか、店の売り上げもぐんぐん伸びている。


「それは何よりだ。わたしも皆に紹介した甲斐があったと言うものだが……ん、アーティファクトの修理だと?」


「ああ、これな。【精霊剣職人】スキルのレベルが上がったから最近始めてみたんだ」


 サフィアはカウンターにあった張り紙を見て、目を丸くしていた。

 そう、【精霊剣職人】スキルのレベルが上がって通常の武器と同時にアーティファクトの修理もできそうだったので実際にやってみたところ……できてしまったのだ。


 刃こぼれも内部の魔力機構も、炉に放り込んで数日経てば元通りといった寸法。

 これはもしやアーティファクトを扱う中級冒険者たちを店に呼び込めるのでは、と思って始めてみたのだが……。


「なるほど、こんなことを始めたからギルドでも見るC級冒険者たちもこの店に出入りしているのか」


「まぁ、そんなところだ。実際アーティファクトの修理の方は、もう結構予約も入ってて。俺も新規層の取り込みに頑張ってるんだよ」


 何せ【武器職人】って職業は、基本的に新米冒険者以外需要がないのだ。

 だからこそ世の【武器職人】たちにとって、新米冒険者以外の物品購入者を増やすことは死活問題でもある。


「……しかしアーティファクトの修理とは、またとんでもないことを始めたな」


「ん、何か問題でも?」


 聞くと、サフィアは呆れ気味に笑った。


「普通、アーティファクトは壊れたら使い捨てる物だ。数千年前の遺跡から発掘されるアーティファクトは、製造方法どころか修理の手法すら解明されていないものが多い。それを修理できる者など、聞いたこともなかった」


「なっ、そうなのか?」


 自分で武器を作る仕事柄、アーティファクトについてはあまり詳しくないものの。

 アーティファクトが普通修理できないものとは、知らなかった。


「あなたの【精霊剣職人】スキル、それは我々が思っている以上の代物なのかもしれない。特に……これはわたしの憶測だが、太古の昔に【聖剣】を作った者もあなたと似たようなスキルを持っていたのではないかとも思う。現にあなたの作った【精霊剣】は、わたしの【聖剣】をも魔力出力の点では凌駕していた」


 ……言われて見れば、マロンも「アーティファクトの【聖剣】も元を正せば太古の【精霊剣】」と前に言っていた。

 サフィアの言う話も、あながち間違っていないのかもしれない。


「しかしまぁ、アーティファクトを修理できると言うことはわたしの【聖剣】も直せるということ。万が一の時は、どうか頼みたい」


「それは勿論。友達の頼みなら」


 そう言うと、サフィアはきょとんとした表情になった。


「……どうかしたのか?」


「いや。……そうか、友達か。あなたとの関係は同業者でもなければ、取引先の人間と言うにも少し砕け過ぎていた。だからどう表したらいいものかと思っていたのだが……友達か」


 サフィアはどこか満足げな表情になって、うんうんと頷いていた。

 そんなサフィアの様子に、思わず笑いがこぼれた。


「ああ、俺たちは友達だ。だから持ちつ持たれつで行こう」


「分かった。……しかし仕事帰りにこうして誰かと気軽に話せるのも悪くないな。同じパーティーの仲間や友人でなくとも、もしかしたら旦那がいる女性冒険者たちは家に戻ればこんな感じなんだろうか?」


「ばっ、また何を!?」


 サフィアに他意はないだろうけど、またこの手の話に敏感な誰かさんが聞いたら勘違いしそうなことを。

 しかし少し焦っていた俺とは裏腹に、サフィアは変わらず満足げな表情を浮かべていた。


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