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第14話:新米冒険者、休日に付き合う

 しばらく宿の部屋で雑談を楽しんだ後、近くの店で朝食を摂った。

 今日は休日ということで、商業地区に行くというスケジュールが勝手に決まっている。俺が知らない間に俺の予定は埋まっていたのだった。


 ミリアの防具は溶けてしまったし、シロナは使いすぎてボロボロになっているし、ルビスに至っては着ているのかすらわからない。俺の防具も買い替えるほどではないが痛んでしまっているので、修理に出さないといけない。

 ……ということで、まずは新しい物を買いに行くことになった。


 パーティメンバーはそれぞれが互いの能力を正確に知っておかないとスムーズな連携が取れないので、装備を選ぶ際は同行するのが普通だ。……前のパーティではやっていなかったようだが。


 商業地区は、どの地区からでもアクセスしやすいようにと考えられたのか、ユニオール村中央に広がっている。

 数日前に俺が世話になった装備屋に入った。趣を感じる――もとい古臭い建物の中には、棚の上に大量の武器や防具が展示されている。


 俺がこの前に購入した武器や防具もそこに並んでいる。同じ装備がいくつもあるというのはなんとなく違和感を覚えるのだが、それが量産品というものである。


 ミリアとルビスは興味津々で棚を見て周るが、シロナはその場を動かない。


「どうした?」


「これだけ量が多いと逆に選びにくいわ。良さそうなのをシオンが選んでくれないかしら」


「え、俺!? 別に構わないが……あんまりセンスは期待するなよ?」


「ええ……シオンが選んでくれたものなら納得できるわ」


 シロナは足をくねくねさせて、落ち着かない様子。

 ギルドの名前に執着しないシロナは、自分の装備にもあまり興味がないらしい。本当は自分で選んだ方が納得できる買い物になるのだが、頼まれれば拒む理由もない。

 にしてもなんかモジモジしてるなぁ……トイレかな?


「じゃあ、防具のタイプと予算、あと何かあれば言ってくれ」


「ローブタイプならなんでも。予算は五十万リルまでなら出せるわ。そうね……見た目はシオンの好みで構わないわ」


「俺の好みって言うのやめてくれない!? シロナに似合いそうなのを選ぶんだぞ」


「ふふ、冗談よ。シオンが選んでくれたのなら何でも嫌がらずに着るから気にしなくていいわ」


 はぁ……。

 俺は嘆息して、防具棚に向かう。

 量産装備は似通った性能のものが多種多様な数存在する。ファッション的な遊びを重視する冒険者の需要を満たすために、こんなに面倒なことになっているらしい。


 予算は五十万リルまでなら出せるということで、ほとんどの防具が対象になる。

 となれば、まずは数を絞るか。

 防具の強度は、鍛冶職人により打ち込まれた魔力の大きさによって決まる。同じ種類の装備でも、個体差というものはあるのだ。

 それをふるいにかけ、性能の高い装備を探す。


 その結果……候補は五つ。どれも性能は同じだが、色やデザインが違っている。そして、ここからの見た目選びこそが難しいのだ。センスを問われる。


 黒……俺と被るからダメだ。

 白……シロナには合わない。髪の色と同化してしまう。

 青……クールな感じのシロナには一見似合いそうだが、全体的にチープなデザインをしている。

 黄……うーん、これもいまいちだな。っていうか論外だ。


 残った一色……紺色。ワンポイントで猫のデザインが白線で施されており、高級感がある。実際にこれを来た姿を想像してみる――アリだな。これなら、シロナの魅力を一層引き立てることができる。一目見て、これしかないと思った。


「シロナ、来てくれ」


「早いわね」


「まあな。一目惚れってやつだ」


 さっき決めた紺色のローブを指差す。


「……なるほど、シオンの理想ってそうなのね」


「ん?」


「なんでもないわ。ありがとうシオン、これに決めるわ」


 シロナは店主を呼んで購入すると、その場で着て帰ることにしたらしい。

 更衣室から戻ってきたシロナ。俺が思った通りのイメージだ。


「いいんじゃないか? よく似合ってると思うぞ」


「そ、そう……やっぱりシオンに選んでもらって良かったわ」


「そう言われると頑張った甲斐があったってもんだな」


 シロナの買い物が終わったタイミングで、ミリアとルビスの様子を見る。二人ともまだ決めかねているようだ。悩まし気にあれでもないこれでもないと探し続けている。


「どんな感じだ?」


「多すぎてどれを選んで良いのか……ってあれ? シロナもう決まったの!?」


 ミリアが驚いた顔で、新しい装備に身を包んだシロナを見る。


「このくらいのことはお手の物よ」


「選んだの俺だけどな」


「……そうね」


 俺たちのやりとりを聞いていたミリアが、何かろくでもないことを思いついたような悪い顔になる。


「私もシオンに任せる!」


「ミリアもかよ!?」


 この会話がルビスにも聞こえていたらしく――。


「私も、シオン様にお任せします」


 ――と、結局全員分俺が決めることとなった。


 最終的に俺が選んだのは、ミリアには弓の刻印が入った白色のローブを。ルビスには赤色に竜の刻印が入ったローブの二つだ。


 早速着替えた二人の評価も上々だった。


「へえー、シオンってセンスいいんだ!」


「さすがはシオン様です」


 たくさんの候補の中から選ぶのは大変だったが、こうして喜んでもらえると嬉しかった。俺の装備を修理してもらうことも忘れない。

 リペアは装備屋に置いてある専用の道具を使うと一瞬で終わるので、その場で着て帰れる。


 そういえば、ルビスがもともと何を着ていたのかは結局わからなかった。

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