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ウル

私は夢を見た。

今は亡き両親の夢を。

優しい両親の夢を。

これは夢だとわかっているのに浸ってしまう。

それでも目は覚めてしまうものでだんだんと両親の姿が遠くなるいかないでと手を伸ばすもとどくわけもなく暗闇に消えて行った。

ただあの時ほどの絶望はなく心なしか暖かみを帯びて意識が覚醒していく。



朝食を作ろうと思っていたのだが時は既に昼時であった。

昼食はパンに燻製肉と生野菜を挟んだものにした。

二人分より多いくらいの量をおおざらに乗せる。

「ひゃああああぁぁ。」

昼食を彼女の元に届けようとしたとき彼女の部屋の方から甲高い悲鳴が聞こえる。

「ああ、目が覚めたのか。」

俺は慌てることもなくそそくさと彼女の元に向かった。



目が覚めて意識がもうろうとしているときに感じたのは痛みと違和感だった。

まず頭が痛い、これは二日酔いだろう酒場に入ったのははっきり覚えている。

次に感じる違和感はここを私は知らない上に自分は真っ裸である。

「何で私は裸なの?」

ただその疑問はすぐに解ける。

何せ頭痛より痛く何よりも違和感を感じる下半身(お腹らへん)。

そこから導き出される答えは一つしかない。

何より私はお酒で記憶が飛ぶことがない。

意識がはっきりしてきてしっかりと思い出せる。

「ひゃああああぁぁ!!!」

たまらず顔が紅潮し悲鳴が出てしまった。



部屋に入ると顔から火が出るぐらい顔を紅潮させ申し訳程度のシーツで体を包んだ彼女がこちらを睨んでいる。

もちろんその理由はお察しのとうりである。

ただ過ぎたことはどうしようもないのでその辺は無視して食事を進める。

「食うか?」

ブチりと聞こえるはずのない音が彼女の表情から聞こえた気がした。

案の定彼女は平手打ちの構えになっていた。

かわせないこともないがあまんじて受け入れることにした。

バチン!

案外痛かった。



現在彼女は俺の作った食事をボソボソと食べている。

落ち着いたのかそれとも単に放心状態なのか彼女はひたすらに無言なのだ。

そもそも話すことがない何せお互い昨日初めて出会ったのだから。

恐らく互いに名前すら知らない。

俺自身はある程度有名人だと思っていたがあのようすでは知らないのだろう。

とりあえず名前くらいは聞き出したい。

「ところであんたはどこのどいつだ俺はあんたが冒険者ってことぐらいしか知らないのだか。」

彼女はポカンとしている。

そしてだんだんと顔が青ざめる

そう彼女からしたらどこの馬の骨とも知らない奴に初めてを捧げてしまったのだから。

「あんたの気持ちは察して余りあるが、どうか名前だけでも教えて欲しい。」

「ウル。」

小さな声だったか確かに聞こえた。

「ウルか、それでだウル、俺はこれからどうすればいい?」

「はぁ‼」

「俺は男として責任をとればいいのか?それとも慰謝料を用意すればいいのか?それとも別の何かをすればいいのか?俺はこういった経験がない、どうすればいいのか全く分からん。」

「そんなこと言われたって私だってわからないわよ。」

「そうか。」

「それに昨日のことはお互い様でしょ、そもそも自業自得だと思うし。」

「そうゆうものか。」

「だから責任なんてとらなくても。」

「・・・いや、やはりそういうわけにはいかない。」

「いいってば、悪いのは私なんだから!」

「だがしかし・・。」

「しつこい!」

どうしたものかここまで頑なだと本当に何も出来そうに無い。

しかしそれは困る謝罪の形を示さなければならない理由がある。

これより五日後に聖女との会談を控えているのだが聖女には嘘や罪を隠すことが出来ない。

俺はそれをよく知っている。

この場合俺は強姦の罪を確実に背負うことになる。

そんなことになれば俺の地位や名誉今まで築いてきた信頼はもとより聖女(・・)は可愛い姪に二度会わせてくれなくなる。

それはダメだ絶対にダメだ、最近やっと俺を叔父と理解し始めたのに。

だから俺が彼女に誠意を示したことを聖女わかって貰わねばならない。

「金貨はどうだ数十枚もあれば何年かは裕福な暮らしが出来るはずだ。」

「いらない。」

「クソ、なら冒険者と言ったなギルドに掛け合ってランクを上げて貰えるように推薦してみよう俺が言えば確実なはずだ。」

「結構です、身の丈にあわないランクはいずれ身を滅ぼしますので。」

「・・・」

「もう話が無いなら私はいきます。」

「・・・帝都まで送ろう、地図が無ければ帝都まで着けないだろう案内させてくれ。」

「・・・よろしくお願いします。」

結局何もする事が出来なかった。



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