8.5話 ハルカの生態
「カシズ君はどうする?」
クイナさんと別れ、ハルカさんと二人きり・・・親切な人ではあるがまだ出会って1日目、いきなり置いていかれてどうしたものかと悩む。
「特にこの街で何かする目的はなかったので・・・露店とか見に行こうかと」
「なら、せっかくだし一緒に回ろうか。魔法具店も行くんだけど、君もこれから旅を続けるなら色々見ておいた方がいいよ」
返事をする暇もなく手を引かれ、街へ繰り出すことになった。
まるでクイナさんとは正反対の性格。明るく人を惹きつける・・・ハルカさん中心に物事が動いているのにそれがちっとも不快に感じられない。太陽みたいな人だなぁ。
「・・・と、その前に何か食べるか。夕食前に少し露店でおいしいもの探そう」
街のメインストリートに繰り出し、歩きながら露店を覗いていく。
「色々ありますね」
牛串、コロッケパン、焼きそば、アイス、飴細工・・・うぇ、へびのかば焼き・・・
定番の食べ物から普段見たことのないようなものまで色々なお店がある。
キョロキョロしながら歩いているとハルカさんは露店に立ち寄り、食べ物を買い、更にはおまけまでサービスされて、数メートル歩いただけで気付けば両手いっぱいの食べ物を抱えていた。
「・・・買いすぎじゃないですか?」
夕食まであと数時間。お腹が減っているとはいえ、凄い量・・・
「ん? そうかな? それに、可愛い女の子たちがみんなこれも食べてくれっていうからさ、断れなくて」
爽やかにほほ笑む笑顔が眩しい。
切れ長の瞳、肩まで伸びた金髪は後ろできっちり結ばれ、白く細い首筋まで美しい。身長は自分より少し高いくらいだから、そんなに高い訳ではないんだけど、手足が長くスラリとした体格はうらやましいものである。
クイナさんも美形だが、どちらかというと性別不明で雰囲気のある感じ。ハルカさんはまさに王道な王子様タイプ。女性の視線があちらこちらから向けられているようだが、本人は気にもとめていない。
「ほら、カシズ君も食べな」
串焼きなどいくつか手渡され、お礼を言ってから食べ始める。
「うわ、おいしい・・・」
「だろ?」
満面の笑みでウインクまでされ、女の子でもないのになんだかドキドキしてしまう・・・
美形ってなんだかやっぱりずるい。
ドキドキを誤魔化すように手にした牛串を勢いで口に突っ込み、食べ物に集中する。
「あとは甘いものかなぁ」
数本の串と揚げパン、焼きそばを食べてお腹いっぱいになり夕飯が心配になり始めた頃・・・まだ食べるのか!と突っ込みたくなるようなセリフが横から聞こえた。
「ハルカさん、僕の3倍は食べてますよね・・・」
その細身の体のどこに入っていくのか、謎である。
「あはは、燃費悪いんだよね・・・」
そういう問題なのか・・・この様子だと夕飯はちゃんとしっかり食べるのだろう。
「あ、あの露店でタルト買ってくるから待ってて」
近くにあった木の実やフルーツで作ったタルトの露店を見つけるとハルカさんは走って行ってしまった。
「ハルカさんって凄い方ですね」
側にいたホーキサイトがくすくすと笑いだした。
「あんなにかっこいいのに、おもしろくて素敵な方だよね」
「そしてとても魔力が高くとても綺麗な気をまとっていらっしゃいます。マスターも色々と教えていただくといいですよ」
「そうだね・・・」
2人で雑談をしていると紙袋いっぱいにタルトを詰めてハルカさんが帰ってきた。
「・・・いくつ買ったんですか」
「あぁ、さすがに全部今食べないよ? 夕飯のあとのデザートにしようかと思って。クイナの分もね」
そう言いながらもさっそくタルトをひとつ取り出して食べ始めた。
「んー、このイチジクのタルトめっちゃうまい。カシズ君も食べる?」
「いや、もうおなか一杯で・・・」
これ以上食べたらさすがに夕飯が食べられなくなる。
「そっか。じゃ、これ食べたら魔法具店に行こうか」
「はい!」
その後、物珍しい魔法具店内で色々教えてもらったり、勉強する為のアイテムを購入したのだが・・・街中散策を終え、クイナさんと合流したあとに大盛の夕食を平らげ、デザートにと購入していたタルトを3切れ食べていたことばかりが強烈に脳にインプットされ、勉強は後日改めて復習することになったのは言うまでもなかった・・・
クイナがまじめ(?)に調べ物をしている最中にお祭りをひたすら楽しむ2人をなんとなく書きたくなったのでSSでちょろっと書いてみました。