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水晶《せいれい》に選ばれし者  作者: 川初 流
1章 カシズと悪霊
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5話 次なる町に向けて

 朝の光で目を覚まし、体を起こして魔力の流れを確認した。


 丸1日寝て過ごしたおかげで完全とまではいかないがほぼ問題なく復活。予定より1日遅れてしまったが、これでようやくこの町を出発できる。


 結果、この町でも悪霊(ゴースト)やレッサーデーモン倒したりと色々あったが・・・ここはあくまで中継地点。ここから北に2日ほど歩いたところにある町に行く予定だったのだ。


「クーイーナさーん!」

 ドアをノックされ、外からカシズの能天気な声が聞こえてきた。


 というか、まだこの宿に泊まっていたのか。

 しぶしぶ扉を開け、室内に迎い入れた。


「おはようございます!」

「・・・おはよう、何?」

「色々お世話になったのでちゃんとご挨拶したかったのと。あとお渡ししたいものがあったので」

 そう言うと腰につけていた袋から女性物と思われるネックレスを取り出した。

 細身ではあるが、金細工で立派な青い宝石もついていた。


「あの、僕がクイナさんにお会いしたかったのは、尊敬する水晶精霊(ジェード・フェアリー)使い(マスター)というのもあるんですが・・・亡くなった母が、昔クイナさんに助けてもらったんです」


 ・・・正直どの事件かもわからない・・・


「クイナさんからしてみれば旅の途中にあった些細な出来事だったのかもしれません。でもそのおかげで母は助かりましたし、いつもその話を聞かされていたのでいつか御礼を言いたかったのです。それとたいしたものではないのですが、母の形見を受け取って欲しいと・・・」

 ネックレスを差し出され、それを素直に受け取った。


 当然精霊は宿っていないが、一粒の小さなサファイアがついている・・・


「サファイアのネックレス、ね・・・」

 優しい青い光・・・少し懐かしさも感じ、ありがたく受け取ることにした。


「母の件もそして今回の件も色々とありがとうございました!」

「君はもう少し知識を付けたほうがいい。まぁ、何をするも君の自由だけど・・・」

 カシズとはこの町で別れる。その先何をしようがどうなろうが僕には関係ないことである。


「それじゃ、俺は先に旅立ちますので」

「はいはい、元気で」


 すでに身支度を整え終わっているカシズはどうやらこのまま宿を出るらしい。

 随分早起きなものだ。カシズを見送ると再びベッドに横になる。


 サファイアの宝石を見たせいか、色々なことを思い出してしまい。なんだかやる気が出なくなってきてしまった。


 とりあえず、朝食・・・それから着替えて、ここ数日で得たアイテムを売ったりしないといけない・・・と頭ではわかっているのだが、ゴロゴロがやめられない。


「・・・朝食はいいかな」

 元々そんなに食べ物には興味もないし、食べれないものも多い。(好き嫌いではなく、食べれない物があるのだ)


 さすがに二度寝をするつもりはないが、もう少し休んでもいいかと思い瞳を閉じた・・・




「・・・おい、てめー金目の物があればすべて出すんだな!」

 ここ最近やけに盗賊らしき者たちとの遭遇率が高いのは気のせいだろうか・・・


 だらだらもほどほどにし、旅支度を整えサキノグラス・シティを旅立ち、北の街道を進んでいると細い横道の方から物騒な声が聞こえてきた。


 耳が良すぎるとこういうことまで聞こえてしまうのが難点だ。だが、聞いてしまったからには聞かなかったことにして無視するのも後味が悪い。

 横道に足を向け、声がした方が小走りで急いだ。


「・・・クイナさん!」

 盗賊に絡まれている男・・・それは先ほど別れたはずのカシズだった。


 早く出たのにまだこんなところに、という気持ちと盗賊とこうして遭遇するのはカシズの体質なのか、と思ってしまう。


「何、してるの?」

「見てわかりませんか?悪い盗賊に絡まれてるんですよー」

 情けなくすがりつくような声でこちらに助けを求めてくる。


「・・・既視感(デジャヴ)か」

「そんなこと言ってないで助けてください!」


「これくらい自分で倒そうよ・・・」

 盗賊は見たところ2人。簡単な術でも追っ払えそうなものである。


「おい、てめーら。何勝手に話してやがるんだ!」


【パライバトルマリン 精霊召喚(クリスタライズ)


 ここで時間をかけていても仕方ないので、精霊を呼び出し、追い払う準備をする。


「げっ!こいつ水晶精霊(ジェード・フェアリー)使い(マスター)か!?」

 ・・・君たちの目の前にいるカシズ君もですよ・・・


風斬ウインド・ブレイド


「まだ僕たちに用がありますか?」

 全身を薄く切り刻み、にっこりと微笑みをサービスした上で盗賊たちを見下ろす。

 足が震え出した盗賊たちは思い切り首を振ると一目散に逃げ出した。


「あんな雑魚捕まえても金にもならないし・・・」


 ふう、とため息をついてトパーズを水晶(オーブ)へ戻す。


「クイナさん、ありがとうございます」


「というか、なんで先に旅立ったはずのカシズがこんなところに?」

「いや、ウェリア・シティに行こう!と思って宿を出たんですが、ちょっと道に迷ったり、大きな荷物を持って困っているおばあさんを助けてたりしてたら・・・あはは」

 そして、ここで盗賊にまで襲われたのか・・・こいつ本当に一人旅今までよく無事だったな。


「クイナさんはどちらに?」

「・・・グランティノ・シティまで行くんだよ」

 嫌な予感はした。ウェリア・シティはグランティノ・シティの手前の街道を西にいった先にある大きな港町。


「それなら、途中までご一緒していいですか?」

 やっぱり・・・断ったところで歩いていく道は同じである。

「途中までだよ・・・」

 うきうきしているカシズに気づかれないよう大きなため息をつき、短い間の旅の連れを見つめ面倒なことが起きないように祈った。


 誰かと旅をする、というのは初めてではないがこんなに不安を感じた相手は過去いない。


「面倒なことはしないでよね」

 とりあえず、横道それてしまったので元の街道に戻るべく、体を翻しさっさと歩き始める。


「ちょ、クイナさん待ってくださいー!」


 慌てて追いかけてくるカシズに振り向きもせず、足を進めた。


 予定外のことが多すぎたが、とりあえず当初の目的グランティノ・シティまであと数日・・・今日も気を抜かずに旅をしよう。

1章のエピローグ的な感じです。ちょっと宿屋でクイナとカシズのできごとをさくっとはぶいたら文字数が減りましたが。ぐだぐだしてもしかたないので、これでよし!とアップしました。

2章ではまた登場人物が増える予定です!


※諸事情により1話同様、風属性の精霊を変更しました(2018.11.25)

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