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水晶《せいれい》に選ばれし者  作者: 川初 流
4章 白銀に閉ざされし山
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24話 子竜

 無事にハルカも契約が済み、一息ついてから更に洞窟の奥を目指すことにした。


「コントロールは課題だけど、私もここでタンザナイトと出会えたのは幸運だったよ」


 偶然にもハルカが契約したのもタンザナイト。やんちゃそうな男の子だったので、属性の相性も良くないし、制御が大変そうだ。


「とりあえず、僕も水晶(オーブ)を失ってからこいつを使うの初めてだから、冷気の制御を代わるよ」


 元の僕とタンザナイトの力であれば冷気制御など、呼吸をするよりたやすいことであったが、さすがに同じ状況で使えるとは思わない方が良いだろう。


冷気制御コールド・コントロール


 Cランクの精霊でも使える術なだけあって、そこまで負担も乱れもなく発動した。


「・・・うん、大丈夫そう。タンザナイト、頼むね」


 冷気をコントロールしているだけなので、温かさは感じないが十分だろう。


 ラピスと共に日々魔力のコントロールを訓練していたかいがあった。水と氷の違いはあるけれど、類似属性で僕にとっては相性のいい属性でもある。


「わかった。そっちは任せるよ・・・さてと、そろそろ本番かな?」


 奥の方から白く輝く光が見えてきた。人工的なものではなさそうだが、この暗い洞窟の中で光っているのだから、何かがあるのだろう。

 先ほどと違って聖とも魔も何も感じることがないのが不思議だ・・・


「とりあえず、様子を見よう。手出しできるレベルじゃなかったら即時撤退」


「了解」

 ハルカが頷くの確認してから、入口近くにある岩陰に身を隠し気配を抑える。

 反対側を見るとハルカも別の岩陰に隠れていた。


「タンザナイト、様子見に行けるか?」


気配遮断(プレゼンスカット)


 空間を渡ったり、気配を断つ能力は氷の精霊の中でもタンザナイトが得意とする能力。Aランクのアクアマリンは攻撃能力が高いので、こういう裏方仕事はタンザナイト頼りなのだ。


 タンザナイトの気配を隠し、そのまま一番奥の空間へと侵入させた。

 近い距離であれば契約者とは思念で会話もできるので、状況を聞くことができる。


『クイナ、入ってきて大丈夫だ。大丈夫なんだが・・・』


 どうやら危険はなさそうだが、どうにもタンザナイトの言葉の歯切れが悪い。


「ハルカ、そのままいけそうだ。中に入ろう」


 一旦は警戒を解き、ハルカと共に奥へと進む。

 すぐにタンザナイトがいる位置まで追いつくと、あの言葉の意味がわかった。


「これは・・・」


(ドラゴン)・・・それも子竜か?」


 中央には鎖の魔術で縛られた2体の白い竜が存在していた。

 見えないが、その周りにはきっちりと結界が張ってあるようでそう簡単に手出しが出来ないような代物だろう。


「クイナ、これをどう見る?」


「何かの動力にされている・・・それとも・・・」


 子竜たちは必死に暴れ叫び、鎖や結界で己が身を傷つけようともその行為を止めない。

 結界のせいでその叫びはこちらまで聞こえることはなかったが、竜たちが苦しい想いをしている思念だけはわずかに伝わってくる。


「この結界を壊すには時間がかかりそうだ。それに、この結界を壊した時に何が起きるかがわからない。ただ、そのまま解除していいものか」


 結界を支えるポイントは眼で見れば理解することは出来た。手持ちの精霊も少ない中、さてどうしたものか・・・


「ハルカ、ここの結界をすぐ解けるように色々探ってみる。ここはこれ以上のことはないから一度村に戻ってキースと合流。この原因となる何か、それを探ってくれないか?」


「わかった」


【ラピスラズリ 精霊召喚(クリスタライズ)


 ハルカは自身のラピスラズリを召喚する。


思念伝達(コールネクト)


「クイナと私のラピスを繋げておく。何かあればラピスを通じて報告する」

 それだけ言い残すとハルカは急いで来た道を引き返していった。


「さて、この仕組みをどうにかしないと・・・」


 手持ちの貴石と魔石を取り出し、使えそうなものを確認していく。

 これでも(ドラゴン)に関しては詳しく、そして何よりも愛でるべき存在だと考えている。それをこんな目にあわせているやつらが許せない。


 村のこともあるが、何よりこの子竜たちのためにも犯人絶対ぶっ潰してやる・・・

この章の肝となるドラゴンをやっと出すことができました!

ドラゴン出てくると一気にファンタジー感があって楽しいです。精霊たちも可愛いんですけどね。ドラゴンはかっこいい、というイメージです。

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