22話 ふたつの思惑
温かいご飯をいただきながら、村の人から聞いた話をまとめると大きく3つ。
ひとつめはこの2年ずっと吹雪がやまず、酷い日は出歩けない。村に訪れる者はおらず、村から出ようとした人間は村の入口で凍り付いた状態で発見される。
ふたつめは村の北にある洞窟に魔物らしきものが住み着いているらしい。たまに村まで不気味な雄叫びが聞こえてくるそうだ。
みっつめはその魔物の仕業かわからないが、強い風が吹いたと同時に村人が姿を消す事件が何度か起きているようだ。それも若い女性が消えることが多いとのこと。
全てが同一の事件かどうかはわからないが、何かしら関連があることは想定される。
「もし、これがその魔物のせいだということであれば、村に何かしらの結界を貼り、吹雪で閉じ込めた上で人間を攫っている・・・ということになるよね」
「人間を餌にするやっかないやつがよくやる手段といえばよくある話だが・・・ここまでのやつは聞いたことがないな」
キースの言う通り、魔物が人を喰う時によく使う手法ではある。
しかし、2年もの間、周囲からも気づかれずにここまで大がかりな結界を展開する相手ではそう簡単に片はつかなさそうだ。
「クイナはどう思う?」
「んー・・・ハルカの線が濃厚だとは思うけど、それだけではない気もする」
「理由は?」
「・・・勘、かな」
特に気になった出来事や話の内容があった訳ではない。
シンプルに1匹の魔物の仕業、であれば話は簡単なのだが。どうも複数の意思を感じる・・・
「たかが勘、されど勘。しかもこういう時のクイナの勘はあたるから馬鹿にできないんだよね。いくつかの可能性を考えながら調査してみますか」
「・・・マスター、まず北の洞窟に向かった方がいいと思います」
今まで横で大人しく黙っていたラピスが、遠慮がちに耳元で囁いてくる。
「何か感じる?」
「微弱ですが、精霊の気配がします。先に調べてみてはいかがでしょうか」
精霊は魔とは相対するものだ。通常の精霊が同じ空間に存在していることはほぼない。
この現象が魔物の仕業なのであれば、そこに精霊がいるのはおかしい・・・
「さすがラピスちゃん。じゃ、北の洞窟の調査だね」
「まて、ハルカ。村に誰か残しておいたほうがいい。戦力は落ちるが、本命が他だった時に対応できる方がいいだろう」
立ち上がったハルカを制したのはキースだった。
本来は入れるはずない外部の人間である僕らがここにいる時点で、結界を張っている何者かに伝わっている可能性はあるな。
キースの意見を受けて、ハルカが僕に視線を向けてくる。
「村と洞窟、二手に分かれるか・・・それとも戦力は集中しておいた方がいいか。僕はキースの意見に賛成かな」
洞窟に精霊がいるなら、この不愉快な存在は別にいる可能性が高い。
「なら、キースはここに残って備えてもらうべきだね。クイナはどうする?」
敵の襲撃に備えてキースと共に村に残ることも考えたが、今の僕では強力な術を使うことは出来ない。
「・・・力は落ちているとはいえ、水晶精霊使いだし。洞窟にいくよ」
精霊がいるエリアに向かった方が、何かしら得られるものがあると判断した。
「それじゃ、キース。ここは頼んだ。私たちもなるべく早く調査して戻るようにする」
話がまとまれば行動早いに越したことはない。
すぐに村の人たちに伝え、ハルカと二人で村の北にある洞窟へと向かった。
ドタバタしてたけどなんとか12月中にアップできました。(少し短いのはご容赦ください)
キースがちゃんと会話に入ってて、書いてる自分がおぉーってなっていました(笑)




