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水晶《せいれい》に選ばれし者  作者: 川初 流
4章 白銀に閉ざされし山
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21話 吹雪の檻

 村に到着すると、異様な光景に目を疑った。


「なんで、こんなに吹雪いてるんだ・・・?」

 少し前までは雪が降っていても視界はクリアで木々に積もる様子もなかった。それが村を目の前にした途端、急に雪の量が増え、風まで強くなってきている。


 ハルカが咄嗟に風の精霊ペリドットを召喚し、結界を展開してくれなければ危なかった。

 ただの雪や風なら体力と根性でなんとかなったかもしれないが、何やら魔力も感じる。確認した訳ではないが、これがただの自然現象ではないことは明らかである。


「とりあえず、村に入って情報収集と少し休ませてもらおう」

 ここまでずっとハルカの精霊に頼りっぱなしでもあったので、ここで一度休憩を入れる必要がある。


 村の入口付近に小さな食堂兼宿屋らしき建物を発見し、扉を開けて中に入る。

 十数人は入るであろう食堂には人影もなく、電気もついていない。

 雪や風が防げるだけでもありがたいが、一体どういうことだ・・・


「すみませーん、どなたかいらっしゃいますかー?」

 ハルカが奥の方へ向け声を掛けると、微かだが人の足音が聞こえる。


「・・・お店閉めてたのかな?」


 少し待つと、この店の女将さんらしき女性が出迎えてくれた。


「あなたたち、まさか村の外から来たの!?」


「えぇ、山の麓からここまで登ってきましたけど」

 僕たちの姿を見るなり、驚きの声を上げて目を見開いた。


「お、お父さんー! 村の外からのお客様が・・・!」

 そんなに驚く出来事だったのか・・・叫んで奥にいるであろうご主人を呼び寄せる。

 すると呼ばれたご主人だけでなく、複数の人間が集まってきた。


「あんたたち、どうやってこの村に入れたんだ?」


「どう、と言われましても・・・普通に山を登って、地図の通りにこの村を目指しただけだよね?」

「あぁ・・・」

 尋ねられた内容が不思議でハルカが首を傾げながら説明し、それにキースが相槌を打つ。


 2人の言葉にその場に集まった村人はざわつき、驚きを隠さない。


「この吹雪も異様だし、何が起きてるんですか?」

「あと、この食堂ってやってるなら注文させてもらえると・・・長時間山登ってたらお腹すいちゃって」

 全くもって緊張感のないハルカの一言に、一同の視線が集まり、村人たちもぽかーんとした表情を浮かべる。


「え、えぇ・・・たいしたものはないけど、簡単なスープとパンくらいな」

 微妙な空気を破ったのは最初に対応してくれた女将さんだった。


「無理のない範囲で、それを3人・・・できるなら4人前。食事を摂りながらお話聞かせてもらえますか?」

 こんな雪に閉ざされた状態では食料も潤沢にあるわけではないだろう。

 普段なら4~5人前食べるハルカは2人前で我慢するつもりのようだ。


「準備してくるからそこのテーブルにかけて待っててくださいな。明かりは備蓄が少なくて・・・この時間はごめんなさい、少し暗いけど我慢してもらえるかしら」


「それなら・・・」


【ホーキサイト 精霊召喚(クリスタライズ)


照明(ライト)


 ハルカのホーキサイトが店内に明かりを灯す。


「おぉ、術師の方でしたか」

 たいそうな術でもないのに、一般の人・・・それもこんな田舎の村だと珍しいのか。


「まぁ、このくらいはそんなに手間でもないから。ホーキサイト、しばらく頼むよ」


「マスター、かしこまりました!」

 きりっとした顔つきのハルカのホーキサイトは真面目な明るい少年。

 こうして使役しているところを見るのは初めてかもしれない。


「さて、改めてこの村の状況を聞かせてもらえますか?」


 テーブルに腰かけたのは僕ら3人と、村の男性が4名。広めの円卓の席を選んだ。


「この村は2年前から何かに呪われてしまった・・・この吹雪のせいで人が訪れることはおろか、村の者は誰も外に出ることが叶わない」


「でも、私たちは普通には入れたよね」


「そう、だから皆不思議に思った。君たちはどうしてこの村に入れたんだ?」


 村人はもちろん、ハルカもキースも不思議そうに首を傾げている。


「・・・あー、ひとつ心当たりが。ハルカ、嫌な気配感じた時にペリドットで結果張ってくれたよね?」

 その一言で察しのいいハルカは気が付いたようだ。


「なるほど。最高位の精霊の術を使ったから、何かしらの干渉は受けなかったのか」

「そう、しかもあの子は・・・あの人のところにいた子だから、元々力が強いんだと思う」

 ただのAランクの精霊だったらどうなっていたかわからないが、エメラルドの影響下にある子であれば通常の精霊よりも力は強いだろう。


「何人もの村人がここから出ようと試みた・・・しかし、旅立ったはずの者は村の入口で倒れた状態で発見された。全身が凍り付いた状態で」

 

「1人だけ、かろうじて生きている状態で発見された者がいた。手足は凍傷で動かなくなり、その上精神を病んでしまって、まともに会話ができる状態ではないが」


 なるほど、結界のようなものでこの村の出入りは出来ないようにされているのか。

 しかもこの手の結界は入るより出る方が難易度があがる。ハルカの力だけでのこの村を出ることが出来るか・・・それすらわからない。


「とりあえず、その無事だった人に会えます? 話が出来ずともわかることもあるかもしれないし」

 なぜ1人だけ無事だったのか、会えばわかる可能性もある。


「・・・わかりました。お連れしましょう。どうかこの村を助けてください」


 さて、自分の身すら守れる力がないのにこの状態をどうやって乗り切るのか。

 まずは原因を探りつつ、力を取り戻す方法も並行して動かないと本当にこのまま一緒に閉じ込められかねない。


「・・・お待ちどうさま」

 ちょうどタイミングよく、女将さんが頼んだ食事を持ってきてくれた。


「ありがとうございます。遠慮なく・・・」


「「「いただきます」」」


 シンプルな味わいだが、干し肉から出汁を摂っているのかしっかりした味付けだった。

 腹が減っては戦も出来ぬ、ともいうし・・・まずは休んでそれから調査のことを考えよう。

この章の展開はどうするのか道筋が決まったものの、肉付けであれやこれや考えてさくさく書けないターン・・・キャラたちが暴走しませんようにw

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