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水晶《せいれい》に選ばれし者  作者: 川初 流
4章 白銀に閉ざされし山
22/26

20話 山を登ろう

 さて、本日は天候も良く絶好の出発日和・・・そんな朝はハルカの余計な一言から始まった。


「ここから北の山を越えたところにある村からの定期便がこなくなって、心配しているという話を聞いたんだ。私たちの目的の洞窟にも近いし、寄ってみない?」


 どこから噂を調達したのか・・・目的とは関係ない話を拾ってきたようだ。


「・・・めんど」

「人助けは大切だし。寄って行くよ。はい、決定!」


 意見を求めてきたのはなんだったのか・・・

 僕の言葉を遮り、決定事項として伝えてくるハルカ。


「せめて、もう少し詳しく話を聞かせて欲しいんだけど?」


 ハルカとキースが朝食を摂る横で、質問を投げかけた。

 どちらにしてもこの宿を出て、更に北へ向かう予定ではある。目的は山中にある洞窟だが、話を聞く限りさらに奥地へと足を踏み入れなければいけなさそうだ。


「東のエリアの中でも標高が高く、山々に囲まれて1年の半分は雪が降っている村なんだって。それでも暖かい時期には交流があるみたいだけど、ここ数年その町の人を見かけないんだとか」

「それで、そんな山だの雪だの大変なところなのに様子を見てくる、とか言った訳か」


 ハルカは人に頼られると断れないタイプだ。

 特に子供やお年寄り、困った人を見かけるとすぐに手を差し伸べる模範的な冒険者。


 しかし、同行する身としてはそんなハルカの行動に全て付き合わされてはたまったものではない。助ける人たちのことはとても真摯に考えるのに、連れに対してはかなりおおざっぱ。そのせいでパートナーも入れ替わりが多いと聞いていた。


「その村で何かが起きてるかもしれないし、この町の人も心配してるしね。ちょっと立ち寄るくらい大丈夫だろ?」


「ちょっと・・・で済めばいいだけどね。氷の精霊がいないのがきついな・・・」

 今までは精霊たちのおかげで寒さや暑さで困った事はない。なんなら雨だって結界や水の術でなんとかなっていた。

 しかし、手元にラピスラズリしかいないとなると防寒や雪の対策は厳しいものがある。


「あー・・・そっか。キースもいるし、どちらにしても精霊だけではカバーしきれないだろうから、どこかで防寒具を調達しないと厳しいか」


 精霊たちを取り上げられていることを知っているハルカは納得した様子。見ているだけでも胃もたれしそうなこってり系朝食を食べながら、地図を取り出しルートを確認している。


 人よりは暑さ・寒さに耐えられる自信はあるが、1年の半分は雪が降っているような村・・・しかも間もなく氷の季節に入り、寒さが増す時期である。さすがに何もしないで行けるとは思えない。

それに、ハルカの連れのキースも剣士なので、ハルカが術でカバーするにしても限度があるし、別行動になった時にはそのままだと困るだろう。


「山の麓に少し大きい町があるみたいだから、そこで休憩かねて準備して・・・天候次第だけど翌朝、山に入る感じかな。一度は通りすぎるけど、先に目的の村に行って、確認しつつそこを拠点に洞窟に行った方がいいかもね」


 地図で方向と距離を確かめ、2つの目的を同時に行うのであればハルカの考えるプランが最適であると判断する。


「それじゃ、あまり気乗りはしないけど・・・そのプランで向かいますか」


 タイミング良く二人も朝食を終えたので、まずは山の麓の町を目指して出発することにしたのだった。



 さすが麓町というだけあって登山や防寒のための装備の品揃えがよかった。それなりの値段はしたが暖かい毛皮のコートと登山用の靴を購入し、ここで一晩宿をとる。

 翌日も天気が良く、山に入るには問題なさそうだったので出発したのはよかったのだが・・・昨日の買い物をしていた時に言われた靴屋の店主からの一言が気になった。


『いまあの山に行くのはやめたほうがいい。雪の魔物に惑わされるって噂があるよ』


 地元の人はもちろん、旅人たちも近寄らないようにしているらしい。

 明らかにやばい魔物や害獣なら国が放置している訳がない。あくまで噂の範囲で、目に見える大きな被害が出ていないようではあるが、そう言われる何かはあるようだ。


 ハルカの属性は火。氷や雪といった属性には一番有効な属性である。

 よほどの大物がでてこなければ、ハルカ一人でもなんとかなるだろうと考え、店主が止めるのも聞かずに僕たちは山へ足を踏み入れることにしたのだ。


【ピンクトパーズ、ホワイトトパーズ】


 山を登り始めて4時間程・・・気温もだいぶ下がり、ちらほら雪も見え始めた。

 そろそろ精霊でサポートしたほうがよいと考えたハルカが二人の子を召喚()びだした。


精霊召喚(クリスタライズ)


 出現したのは双子のような可愛らしい女の子たち。

 Cランクのトパーズは火、水、氷、地の4つの属性の精霊がいる。理由はわからないが、誰と契約しても決まって女性の姿しており、トパーズ四姉妹なんて呼ばれていたりもする。


「「ハルカちゃん」」


 呼び出された二人は声を重ねながら、ハルカの左右の頬にそれぞれ飛びつく。

 火と氷の属性を持つトパーズは熱・冷気のコントロールを得意とするので、寒いこの地では重宝する精霊たちだ。


気温管理(テンプトロール)


 ハルカが使ったのは火と氷の複合術。

氷だけの冷気コントロールでも過ごしやすくなるのだが、火の要素を加えた複合術はより快適な環境を生み出すことができる。

 範囲を広げてくれたおかげでハルカはもちろん、僕やキースの周りの冷気も和らぎ、温かささえ感じた。


 常にこの状態なのであればコートも必要ないのだが・・・そう甘えすぎるのも良くないしな。


「さて、寒さ対策もしたし、サクサク進んでいきますか!」


 ハルカが先頭を歩き、殿(しんがり)はキースに任せる。今の自分では精霊術はハルカに、剣術はキースに敵わないだろう。それでも魔力で周囲の様子を探りつつ、慎重に歩みを進めていった。


 それにしても、靴屋の店主が言っていた魔物、とは・・・

 特にそれらしき瘴気や気配は今のところ感じないし、この山にはそもそも野生の獣も少ない。ここまで登ってみたものの、吹雪などの自然の猛威に襲われているようなこともない。


 色々な可能性を考えてみるものの、当てはまる要素がなくただ黙々と目的地である村を目指していく。


 何事もなければそれが良いし、確認が済めばすぐに発掘にもいけるだろう。

 この時はそんな風に気楽に考えていたのであった・・・

ひさびさの更新です(汗)

またちまちま更新していけるようがんばります。

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