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水晶《せいれい》に選ばれし者  作者: 川初 流
3章 北からの修練
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18話 南の城での休息

「おはよう」

 気が付いた時はどこかの客室に放り込まれていた。

 目を覚ました時に聞いた話だと丸1日眠っていたらしい。


「呑気なものだね・・・それで、体の方はどう?」

 身支度を整え、朝食の席に着くと呆れたような顔のハルカと連れのキースまでいた。


 悪魔の書(デモンズブック)から十の災厄(デクデット)の出現、闇の精霊書(ダーク・バイブル)騒動・・・とこの数日だけで色々ひっくり返りそうな出来事が続いている。が、そんなこと正直僕には関係ない。


「やっとこの体に慣れてきたかな。日常生活なら大丈夫そう」

 相変わらず傍にラピスはいるし魔力も吸われているが、体が魔力の節約を自動調整しはじめたようだ。

 少しずつ体を動かせるように鍛えなおさないとな・・・


「けど、早くみんなを呼び戻さないと師匠に何を言われるか。ゆっくりもしてられないよ」

 1年以内という制限まで設けられている。全員を呼び戻せるだけの魔力をつけつつ、どこにいるかも、どう呼び戻すのかもわからないこの状況でのんびりしている時間もない。


「一目お会いしただけだけど、クイナが強かったのもわかった気がするよ。ついていける人の方が少ないだろうけど」

「強くなるには手っ取り早いとも言う。今日はゆっくりさせてもらうけど、明日にはここを出るよ」

 のんびりと言ってもただゴロゴロしているつもりはない。城の中庭に出て、体内の魔力コントロールと大気との同期を試みるつもりだ。


「私も鍛えなおしつつ旅続けようと思うんだけど・・・しばらくキースと3人で旅しない? 今のクイナは私より弱くなっているだろうけど、今までの知識とこれからのことを考えれば私たちもプラスにもなるだろうから。どうかな?」


「何かあった時、今の僕じゃ力不足だからね。ハルカたちがいてくれるのは助かるよ」


 とりあえずまずはラピスの簡単な術くらい使えなければ自分の身も守れない。

 少ない魔力の中で使える術、回数など確認もしなければならない。


「明日の朝ここでるつもり。行先は夜にでも相談させて」

「わかった。キースもそれでいいよね?」

 会話にはほぼ口を挟まないキースはハルカの提案にただ黙って頷くだけである。


 なんだか、ほぼ初対面にもかかわらずキースとは波長が合う。あのハルカと2人旅を続けていた同士、何か通じるものがあるのだろう。


「基本は剣だが、少しなら水の魔術も使える。改めてよろしくな」

「あ、水属性なんだ。それは気が合いそうだ。よろしく、キース」


 魔術を剣に乗せることが出来る剣士を魔法剣士、なんて呼んだりすることもあるが、そこまでではないのか、剣士であることに固執しているのか。思ったよりレアな使い手だった。ハルカが気にいるのもわかる。


「ごはん食べたらジュリアスかリュウイに話をしておくよ」

「了解」



 城の片隅にある小さな庭に生えている木の根元に座り込み、瞑想を始めた。この庭は小さく、城内でも人気の少ない位置にあるため、周囲が騒がしくなくて助かる。


 自身の魔力の流れを感じ取り、うまく体全体に行き届くようにコントロールしつつ、どのくらいの魔力が残っているか・・・アスに封印されてから何度も試しているが、なかなか調整が難しい。


「クイナ様…」

 傍にいるのは水の精霊ラピスラズリただひとり…

 そんな彼女もAランクとしての力は封じられており、Cランクくらいと思った方がよさそうである。


「魔力の循環の方はなんとか上手くいくようになってきたよ」

 少ないながらもきちんと魔力が全体に行き渡れば、無闇に体調に影響が出ることはなくなるはず。体も魔力に合わせてか省エネタイプになっているようだし・・・


 体内の魔力の流れを意識しつつ、大地に手を当てて土の気配を感じる。

 木の力、地の力、水の力・・・そして光の力。自然の気を柔らかく感じ、その力を少し吸収させてもらう。わけてもらえる力は僅かではあるが、体内に流れ込んできた気を魔力と融合させてそれを再び巡らせる。


 それを何時間していたのだろうか・・・光の力が弱くなってきたことを感じて瞳を開けると、空に昇っていたはずの太陽はすでに沈みかけ、空を茜色に染め上げていた。


「部屋に戻るか・・・」


 優しく見守ってくれていた大樹と力を貸してくれた大地にお礼を伝えてから庭を後にし、借りている客室へと足を向けた。


「ラピス、何か伝言預かっている?」

「・・・えぇ。まずは東の地へ。クイナ様の1番適した力を鍛えるように、と」

 東は水と氷のサファイヤが守護する地。自分の属性である水の力を取り戻せ・・・ということか。


 そして、昔僕と姉さんが住んでいた地でもある・・・あれ以来、東の地へ行ったことがない訳ではないがどうしても避けがちになっていた。


 あの時の悲しみ、憎しみ、そして怒り。

 負の感情ばかりが心を支配してしまう。自分にもっと力があれば・・・後悔しかない。


「わかった。ラピス、目的はメリア・シティ。メリア湖を目指す、とハルカとキースにも伝えてきてくれるかな」


 東に存在する大きな湖の側にある町、メリア・シティ。湖には精霊の伝承なんかも色々あったりするのだが、近くに鉱山もあるので精霊の力は捉えやすいところだ。

 東の水晶精霊(ジェード・フェアリー)使い(マスター)はまずここで修行することが多い。そして、そのうちのいくつかの鉱山は水・氷属性のAランクと出やすいポイントでもある。


「かしこまりました」

 ラピスは小さく頭を下げ、ハルカたちの部屋へ飛び去って行った。


 魔力を封じられたこの体は脆弱で頼りない。普通の人間よりも力もなく、魔術や精霊術を食らえば耐性もなく消し飛ぶだろう。


 魔力容量(キャパシティ)を増やしつつ、水晶(オーブ)を失った為、精霊たちをコントロールするためにあちらの世界を繋ぐ(ゲート)を僕自身が開かなければならない。

 

 水は結界や思念伝達、氷は空間遮断や精神攻撃にも強い属性なのでまずはこの力を使って身を守る術と精霊を使う為の土壌を整えなければ・・・


 自身の復讐の為・・・それでなくとも魔族たちの動きに巻き込まれる可能性もある。何かが起きている訳ではない、が・・・時間はあまりないだろう、と直感が告げていた。

次の目的地は東に決まりました!

そろそろ修行したり戦ったり、といったシーンをいれていきたいです。

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