恋の扉
アナウンスが流れだし
地震の震度と地域の説明をしている。
そして列車が動き出す案内も聞こえてくる。
もうすぐ列車が動き出すんだ。
約15分遅れとのことだけど、凄く長くも感じたし
短くも感じた。
そして彼女と俺は知らぬまにドア越しに更に
接近していた。
列車が動き出す。
彼女に再び目を向けると俺を確り見つめている。
俺も彼女の方を見つめ無意識の内に小さく手を振った。
すると微笑みを付け足して小さく手を振りかえしてくる。
綺麗で凛とした佇まいから
手を振る彼女は凄く可愛らしく見えた。
少しづつ離れるにつれ彼女の目が悲しげな目に変わってきた。
昨日と同じ目だ。
まるで離れていくのが辛いかのように。
同じ思いを感じる。
そして小さくなっていく。……………………
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列車に揺られながら、切なさが膨らんでくる自分が
なにか不思議でならない。
普通はやったーじゃないのかと。
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なにか、もやもや思いながら会社に着いた。
青空喫茶には有田さんの姿はもうない。
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会社の自分の持ち場に座り込むと急ピッチで
キーボードを打ち込む。
頭の中が仕事に切り替わる。
今、会社を上げて行っているプロジェクトにかなりの遅れが出ている。残業が長引くのは必至だ。
でもこの会社、週休2日は崩さず、しかも
日曜日は必ず休みだ。日曜日以外は隔変だけど。
忙しい時は残業、残業でどうにかなってきた。
でも今回のプロジェクトの遅れは会社的にはちょっとヤバイかも知れない。
どう乗り切るんだろう。
ふと自分のライフスタイルを思い出したように考える。明日は金曜日か。
月に1回、月の最終金曜日だけは必ず行くところがある。
シフトも最終金曜日だけは休みにしてもらっている。
キーボードを打つ手が疲れてきた。そろそろ休憩しよう。
青空喫茶に着き、たまにしか吸わないタバコに
火を付ける。1日2、3本位だろうか。
有田さんがそこにやって来た。
「よう隆介!!ちょうどよかった。
今日また飲みにいこうぜ。明日休みだろ」
「休みですけど、明日は最終金曜日だから」
「あっ!そうか。でも前にちょっと位ならって行ってなかったっけ?」
「まっ何回か。ただ寝坊しないかと。起きるのは会社へ行くのと同じ時間なんで」
「昨日は起きられたんだから、大丈夫だって。」
なんか一昨日と似ている。
有田さんのお陰もあったしなー
「わかりました行きましょう。飲みに。今日は俺が奢ります」
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会社を後にし2人で居酒屋へ
ビールを継ぎあいながら有田さんが
「なあ隆介。お前何かいいことあっだろー」
「えっ、分かりますか」
「あー何となくな」
「そのいいことに、有田さんも少なからず関わってるんですよ」
「えっ、俺がか?」
「はい」
「何か良いことしたみたいだな。何かよーわからんけどホッとしたよ」
「何かそのホッと感が俺にも伝わってくる」
なんでだろう。
まっいいか。
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「じゃ隆介また明後日、今日はありがとな。」
「はい、お疲れ様てしたまた明後日」
居酒屋を離れて1人になるとまた彼女のことを考えてしまう。
彼女の通勤経路を考えている。
乗り換え駅で通勤快速に乗り換えてるんだろうか?
それともそのまま、あの列車に乗っているのか。
次の駅か?乗り換え駅か?
どっちにしろあの対向列車に乗ってしまえば
こっちのもんだ。
明日更に早起きしてあの離れ小島の次の駅まで
行こう!!
気持ちが先へ先へと進んている。
もう止められない。
そしてあの列車にのるんだ!!
明日のことを考えると今日は快速で帰るしかない。
駅に着き
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ホームに降りると各駅列車が止まってた。
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結局各駅列車に乗って帰った。
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