55話
「藤もっちゃん、悪いんだけど、もしもめぐみがここに帰って来た時の為に、出来ればここに残っててほしいんだ。」
「わかった隆介。ここに残ってるよっ。で何かあったら直ぐに電話するから。だから隆介っ、気を確かになっ!」
「うん、わかった、有難う。」
「じゃ俺、行ってくる。」
そう言って、足早にパトカーの中へ乗り込んだ。
不安を滲ませながら
「すいませんお願いします。」
「わかりました。哀川さん、一応向こうの管轄には連絡を済ませています。先に向かってると思います。だから落ち着いて下さい。」
「わかりました。宜しくお願いします。」
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ピンコーン
隆介さんからのラインだわ。
住所が書かれている。
{麗奈さんここで待ってる}
{めぐみはここにいるかも知れない!!}
私はこの住所を直ぐにナビに入れ、この連絡先に向かった‥
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「哀川さん大丈夫ですか。」
「えー、大丈夫です。」
大丈夫じゃない。体の震えは止まらない。
頼むからめぐみを返してくれ。今の俺にはそう祈ることしか出来ない。
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めぐみの身を案じている俺だけれど、何か違和感が体にある。多分それは沙也加の言った、この子紗希じゃない!と言う言葉が引っかかっているに違いない。
でも、めぐみだよな。紗希な筈が有るわけないだろ!
紗希はもうこの世には居ないんだから。
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「兄貴!!大変だ!!大変だ!!」
「馬鹿!!ビックリすんだろ!!」
「何が大変だって?」
「兄貴!」
「察に囲まれてっすよっ!」
「何ー!!」
「ちょっと待てよっ、おい。何故ここが判んだぁ?えーっ?」
「分かんないっすよぉ」
「取り敢えずパトと覆面合わせて5台はいるっす!」
「これやばいっすよぉ兄貴?このまま逃げましょうぜ!」
「このクルーザーなら一気に沖まで出れるし、逃げれますぜっ。」
「逃げれる訳ねえだろっ!」
「直ぐ海上で逮捕だろっ!」
「横に小型のモーターボートが有るだろー、いざとなったらそれに乗り移るぞ」
「分かりました」
「それにまだ俺達だと分かった訳じゃねぇだろ。」
「他の事件かもしんねぇだろ!」
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「哀川さん、向こうの所轄が現場に着いたとの事です。」
「こちらも、あと15分程で着きます」
「有難う御座います。」
「めぐみは無事何でしょうか!?」
「今、近くの建物を捜索してるでしょう。」
「・・・お願いします!めぐみを助けて下さい!!お願いします!!」
「落ち着いて下さい。哀川さん!きっと大丈夫です!」
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私、ナビの通り先に進んではいるけど、これって先ずめぐみのお父さん、お母さんに連絡しなきゃいけないんじゃない?
こんな事…
こんな大事なこと。
会社に電話だ。




