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対向列車の⭐君に恋をして  作者: 伊龍幸介
第3章 旅路
55/57

55話




「藤もっちゃん、悪いんだけど、もしもめぐみがここに帰って来た時の為に、出来ればここに残っててほしいんだ。」


「わかった隆介。ここに残ってるよっ。で何かあったら直ぐに電話するから。だから隆介っ、気を確かになっ!」


「うん、わかった、有難う。」

「じゃ俺、行ってくる。」


そう言って、足早にパトカーの中へ乗り込んだ。

不安を(にじ)ませながら


「すいませんお願いします。」


「わかりました。哀川さん、一応向こうの管轄には連絡を済ませています。先に向かってると思います。だから落ち着いて下さい。」


「わかりました。宜しくお願いします。」



           ✳




ピンコーン


隆介さんからのラインだわ。


住所が書かれている。


{麗奈さんここで待ってる}

{めぐみはここにいるかも知れない!!}


私はこの住所を直ぐにナビに入れ、この連絡先に向かった‥




          ✳



「哀川さん大丈夫ですか。」


「えー、大丈夫です。」


大丈夫じゃない。体の震えは止まらない。

頼むからめぐみを返してくれ。今の俺にはそう祈ることしか出来ない。



           ✳



めぐみの身を案じている俺だけれど、何か違和感が体にある。多分それは沙也加の言った、この子紗希じゃない!と言う言葉が引っかかっているに違いない。


でも、めぐみだよな。紗希な筈が有るわけないだろ!

紗希はもうこの世には居ないんだから。




          ✳



「兄貴!!大変だ!!大変だ!!」


「馬鹿!!ビックリすんだろ!!」

「何が大変だって?」


「兄貴!」

「察に囲まれてっすよっ!」


「何ー!!」

「ちょっと待てよっ、おい。何故ここが判んだぁ?えーっ?」


「分かんないっすよぉ」

「取り敢えずパトと覆面合わせて5台はいるっす!」

「これやばいっすよぉ兄貴?このまま逃げましょうぜ!」

「このクルーザーなら一気に沖まで出れるし、逃げれますぜっ。」


「逃げれる訳ねえだろっ!」

「直ぐ海上で逮捕だろっ!」

「横に小型のモーターボートが有るだろー、いざとなったらそれに乗り移るぞ」


「分かりました」


「それにまだ俺達だと分かった訳じゃねぇだろ。」

「他の事件かもしんねぇだろ!」



          

          ✳




「哀川さん、向こうの所轄が現場に着いたとの事です。」

「こちらも、あと15分程で着きます」


「有難う御座います。」

「めぐみは無事何でしょうか!?」


「今、近くの建物を捜索してるでしょう。」


「・・・お願いします!めぐみを助けて下さい!!お願いします!!」


「落ち着いて下さい。哀川さん!きっと大丈夫です!」




           ✳




私、ナビの通り先に進んではいるけど、これって先ずめぐみのお父さん、お母さんに連絡しなきゃいけないんじゃない?


こんな事…

こんな大事なこと。


会社に電話だ。








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