密着
明けて土曜日
俺はベットの上‥
「隆介くん」
「隆介~」
ん~なんか、ほっぺが左右に広がってるみたいな
「隆介~、起きて~」
「もう、9時だよー」
「ん?あっ」
目が醒めると目の前にめぐみの顔がある。そのめぐみは俺のほっぺをムニュ、ムニュしてる。
半端ない優越感が込み上げて来た。
「あっ、めぐみお早う」
「お早う隆介」
「ごめんなさい。呼んでも起きないからついついぷよぷよしちゃった」
かわゆい‥めっちゃかわゆい。
ぷよぷよなんだ。
「起きられる?」
「うん、大丈夫、グッと深く寝たから」
なんかその起きられるって言う言葉が凄く意味深に聞こえる‥
「あのねっ、冷蔵庫に卵と食パンが入ってたから、卵トーストしてみたの。美味しいかどうか分からないけど」
「それと、お風呂も沸いてるからねっ」
「えっ?マジで。」
「うん、マジだよぉ。」
あー、朝起きていきなりこの声だからやっぱりまだ、慣れない。新鮮だ。
俺はベットから立ち、顔を洗い、歯磨きを済ませた後、早速その卵トーストを食べてみた。そしてその旨さに感動した。
「旨い!!」
「えっ、本当っ?」
「うん、旨い、最高ー、グッ!」
「よかったー」
本当めっちゃ美味しい。こんなの、毎日食べられたら、最高だろうなー
めぐみは俺が美味しそうに食べてるのを見届けると、こたつの上に置いてあるパソコンの前に座り、いきなりキーを打ち始めた。
しかも目にも止まらぬ速さで‥俺より速いんじゃないのかこれ。
交代でやれば、この仕事、取り戻せるかも知れない。
俺は無意識の内にめぐみの後ろに座り両手をめぐみのお腹廻りに回し顎をめぐみの肩に乗せた。そして体を密着させた。
すると心臓が1回ドクンとした。
「めぐみぃ?今ドクンとしたか?」
「うん、した。きっと2人がまた急接近したからなんだよ。多分喜んでるよっ」
「そうかもな」
と素でしゃべってはいるけれど、俺の気持ちは‥
て言うか体がだけど、またベットの中に指を指している。
そこは、グッと堪えて、今晩に備える事に。
そう思いながらパソコンの画面を見て驚いた。えっ?そんなに?
仕事の進みようが凄く進んでる。多分、めぐみは早起きをし、既にキーを朝早くから打ち続けてたんだろう。
「めぐみぃ?」
「何ぃ、隆介。」
「自分の遅れを取り戻そうと思ってるんだろ?」
「うん、それもあるけど、早く取り戻して、もっと追い込んで隆介とのデートの時間を作りたいんだぁ。」
あー、やばい。たまんねぇ。
俺はめぐみのお腹をグィッとして更に密着させた。
「ねー隆介ぇ?」
「何ぃ、めぐみ?」
めぐみは1つ、1つ言うのに必ず俺の名前を呼ぶ
早く慣れたい感が凄く伝わってくるし、だから俺もめぐみと言う言葉を足して返してる。もし傍で誰かが聞いていたら多分堪らなくなって逃げだすだろう。
「私思うんだけどねっ、もし藤本さんがいてくれなかったら私達会えてなかったか、会えてもずっと先だったかも知れないね」
「そうだよな、藤もっちゃん様々だ」
「俺が休みの時は、めぐみがテレワークだろ、めぐみが休みの時は俺がテレワークだもんな」
「うん」
「ねぇ、ねぇ隆介ぇ、それと私ねー」
「何ぃ?」
「めぐみねーぇ、隆介に会いに田舎から出て来たんだよぉ」
「えっ?俺に会いに?」
「そうだよ。麗奈が言ってたの」
「私が、会社へ入った日にそう言ったんだって。でも私、その時ははっきりとは覚えてはいなかったの」
「えっ、じゃ今は分かるんだ」
「でもなんとなくしか分からない。」
「それなんか聞かせてほしいな」
「それに紗希と僚馬のことも調べてみたい気もあるんだけど」
「私も」
「紗希と僚馬は自分達が会いたい。俺達を会わせたい。その為には俺達に謎の空間を見せる必要があったんだと思う」
「謎の空間って?」
「いや、会社の中にこの間の地震に遭遇した奴がいたんだけど、そいつが言うには横に対向列車なんか無かったって言うんだよ。」
「えっ?」
「不思議だろ」
「でも、地震は麗奈もなかったって言ってた」
俺は紗希と僚馬の執念みたいなものを感じてならない。あれを俺達に遭遇させたんだから。
でも果たしてそれだけなんだろうか?
「隆介ぇ?このプロジェクトが終わったら、私達連休とって調べてみない?紗希と僚馬のこと」
「うん、そうしよう!!」
張り切って言ったのは調べるだけじゃなく夜を共に過ごせるからだ。
俺達は風呂に入り‥‥ 別々だけど‥
それから2人代わる代わる昼までキーを打ち続けた。
そして出かけることにした。
俺達のデートの時間だ。
何処かでめぐみの携帯電話を買わなければいけない。
最初は車で行くことを決めていたけど‥
「ねっ、隆介ぇ、やっぱり出かけるの電車にしない?」
「電車っ?」
「うん」
「隆介が乗ってた方から外の景色が見たいんだぁ」
「うん分かった、そうしよう」
俺達は部屋の鍵をかけ、外に出た。
めぐみには、建物の外でまたせ、俺は自転車置き場から自転車を引っ張ってきた。
俺が先に乗り、めぐみは俺の肩に手を置きすっと乗って、後ろに立った。
「じゃ、いくぞめぐみ」
「うん、いいよっ」
いつもなら、スピードなんか気にせず一気に下りていくけど、今日は少しでも長くめぐみと乗っていたいからユックリ下りている俺。
それでも下り。風が当たり、天気も良く凄く気持ちがいい。めぐみが乗っているのもあるけれど。
めぐみも気持ちいいんだろう‥
「隆介ー、凄く気持ちいいーっ」
めぐみはそう言って俺にグッと張りつきタイタニックのように両手を広げた。
「めぐみー、俺もめっちゃ気持ちいいー」
でももう少し走ると下の舗装が悪くなる。
「めぐみー、もう少しすると下の舗装が悪くから座るんだぞー!!」
「うん、わかったっ!」
「確り掴まってるんだぞっ!」
「はーい!!」
かわゆい‥なんてかわゆいんだ‥
めぐみは可愛くそう言いながら座り俺の脇腹の廻りに腕を巻きつけるとグッと密着してきた。そしてめぐみは自転車の音と風の音をかき消す位の声を出し俺の耳元で‥
「隆介っ?めっちゃ気持ちよかったねっー!」
「うん、気持ちよかった!」
「でも俺、今のほうが気持ちいいー!」
「えっ?!」
「今なの?!」
「うん、今!だってめぐみの、無さそで、有りそで、無さそな胸が俺に当たるだろっ。」
‥ムニュ‥
めぐみは、んも言わさずほっぺをつねってきた。
「痛い、痛い、痛い、痛い」
「痛いーっ!!」
「めぐみ、ごめん、ごめん!」
「本当っ、ごめん!」
「隆介っ、その有りそで、無さそでって言うの、言い回し逆にしてよっ。最後が無さそはやだ。」
そっちかよっ‥
「今度またそれ言ったら、ぷよるから」
やっぱり、ぷよなんだ。
「めぐみはそう言って更にギュッと俺にくっついた」
なんか、いちゃいちゃしながら駅についてしまった。
「隆介っ?なんかもっと乗っていたかったなー」
「俺もっ」
「逆は駄目だからねっ。」
「わかった」
『俺達ももっと乗っていたかった』
『私達ももっと乗っていたかった』
それにしても、昨日、今日のやり取りじゃない。
何ヵ月も付き合ってるような。
あの二人がそうさせてるのか?




