35話
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めぐみの自宅に行くもやはりまだ帰ってなかった。
私は直ぐにめぐみが救急車に乗ったとされる場所まで車を走らせた。
きっとまだあの辺で彼をまだ探してるんだ。
でも、ちょっと待って、仮にめぐみ自身が彼を探してるんじゃなくて、めぐみの中の紗希さんが彼を探してるとしたらどうなの?
早く止めなきゃ、めぐみにはきついよ。
めぐみ、ご飯も食べずにずっと探してるに違いない。
紗希さんは私のめぐみを何だと思ってるのよ。
声を大にして言ってやる。めぐみの目の前で‥紗希さんに。
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俺はコンビニに着き車のドアを開けた。
寒い!!今日冷え込むぞこれ。そう思うと、ふと公園の彼女のことを思い出した。彼女大丈夫何だろうかあんな格好で。なんかカーディガンみたいな物だけしか着ていないようにも見えた。
俺はなんか分からないけど、唐揚げ弁当の他に、熱いお茶やおにぎりを何個か買っていた。
コンビニを出て車に乗りまた坂を上がった‥‥
そして公園付近に来てスピードを緩めると公園の方を見た。
やはりまだ彼女はいた。ブランコに座っている。
俺は車を止めた。俺は何故か体が動いた。下心が有るわけじゃない。ちよっとしか。
ベンチに座る振りをして公園の中へ入って行った。
彼女のいるブランコとベンチのある場所では方向が微妙に違う。
違うが彼女には確実に近づいてる。
そして彼女を横目でチラ見した。何か鳴き疲れた後を感じた。
鳴き疲れた‥黒かみのストレート‥えっ?
あの彼女じゃ?
それは大雨の中、電車の中で知り合っただけの男性をここまで探しに来たというあの彼女。
そうだ、名前は鮎原めぐみ‥
当然気にならない訳にはいかない。
俺は声を掛けてみることに‥多分彼女だ。
‥‥‥‥「あの‥すいません?」
「はい、何ですか?」
「もしかして、鮎原めぐみさんですか?」
「えっ?あっ、はい、そうですが。」
「自分は、藤本と言います。」
「あっ、この間の」
「はい」
「一昨日はすいませんでした‥‥大変ご迷惑をおかけして‥」
「それに、昨日の電話では本当にすいませんでした。私事のことをずっと聞いて頂いて。」
「いや、いや、いいんですよ‥」
それにしてもやっぱり声似てるなー‥‥て言うかそっくりだ‥‥
「あの、ひょっとして朝もこの公園にいませんでした?‥」
「はい‥」
「今日もその彼を探しにここまで?」
「はい。」
はいって‥何か余りにも健気過ぎるだろう。
「あの、この辺りはよく冷え込むので、その格好じゃここでは無理ですよ。」
「あっ、私なら平気です」
「もう、少ししたら帰りますので‥」
「そうですか?」
「はい、気になさらないで下さい。本当に」
「わかりました」
‥‥‥‥
お腹減ったなーっ
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‥‥‥‥‥俺達は谷底の中腹まで落ちていった‥‥
「紗希、大 丈夫か?」
「うん、大丈 夫だよっ。僚はっ?」
「俺は、大丈夫だっ」
「でもさ、紗希の 体にいっぱい、いっぱい何か載って るのっ‥」
「わっ、わかった。俺が今から、全部除け てやるからなっ。だっ、だから大丈 夫だからなっ‥」
「うんっ」
「紗希っ?」
「紗希っ?寝たら駄目だぞっ」
「うん。」
「、あの人 達は?」
「ずっと下まで、落ちて行くのが、見えた。」
「こっ、これ で、もう、わっ私達の、」
「こと、もう邪、魔されな、いね?」
「あー、そうだな」
「元気になったら、、結婚式して、紗希、お前はバージン、ロードをあっ、歩くんだぞ、親父さんとっ」
「うん、わかっ、た」
「隆っ、隆も頭、から血が、血がい、っぱい‥」
「こんなの、全然、平気だって」
「紗希、結婚式、の前に、住む何処考え、なきゃな」
「そう、だねっ」
「何処、に住む?」
「私、やっぱり山裾がいい、なっ」
「うん、そうだな、山裾にしよう」
「子供、一杯、作って」
「そう、だなっ」
「何人位にする?紗希っ」
「おい!!紗希、頼むよー紗希、確りしてくれよ」
「僚?」
「何?」
「生ま、れ、代わっ、ても、一、緒に、なろ、うねっ」
「おい、おい、嘘だろー、紗希ー」
「おい、確りしてくれ紗希っー」
「紗希っ、紗希っ」
「おい、頼むよー」
「頼むから、目を開けてくれよ」
「紗希っ」
「頼むー」
「紗希ーーっ」
俺は腕を紗希の頭の下に入れ、追いかけるように眠りに入った




