不幸中の幸いから運命への扉
「もしもし、どうした隆介?」
先輩の名前は有田さん。関西人で年は2歳年上の28歳。
「有田さんすいませんどうやらまた、
やってしまったみたいです。」
「やってしまったって?何を?」
「寝坊です」
「えっ?おいちよっとまて隆介!!本気か!!」
えっ!!なにか凄く驚いてる。いつもよりトーンも高い
「ちよっとまてよ、ビックリするじゃねえか隆介。」
「よく見ろ時計を‥」
「えっ?なんです?…あっ!」
「すいません時計止まってました。すいません。」
自分の携帯をみて分かった。
電話の向こうからずっこけたような音と
溜め息が聞こえてきた‥
出勤の早い有田さんからすれば、自分が寝坊の電話をした時点で
大寝坊なのである。
「すいません、ビックリさせて。
じゃ少しゆっくりしてから出ます」
「ゆっくりもいいけど、ビックリさせたんだから
今から、出てこいよ」
「青空喫茶でコーヒーでも飲もうや」
‥‥青空喫茶‥‥
なにか上品にも聞こえるが、会社の敷地内である。
自動販売機の前に椅子もあり、見上げれば確かに
青空もある‥‥
「わかりました。じゃ、ゴミ出しと家の事をして出ます」
「わかった。じゃ待ってるからな」
「はい、じゃ後程」
有田さんより出勤が遅いのは、
社員が少なくなる時間帯に集中できるようにと
作られたパソコン専門チームに属してるからだ。
IT企業関連の会社で今、グループを上げて取り組んでいるプロジェクトが有る。
その為残業が多く、遅刻の原因にもなっている。
因みにパソコンを打つ早さと気転は誰にも負けない
と思っている。
そもそもオタクである。
ゴミを出しに外に出てみると、
隣の住人とかち合った。
「おっ、隆介お早う!!」
「お早う、藤もっちゃん‥」
そんな関係だ。
お互いの部屋を行き来し、仲良くしている1人だ。
同い年の26才て運送関係に勤めている。
「おっ、隆介今日は早いじゃん」
「あー、たまには早くいってゆっくりコーヒー
でもと」
長々とは話せないので、理由は言わなかった‥‥
向こうも髪の毛が爆発してるせいか、ゴミを出すと、そのまま足早に部屋に戻っていった。
自分もゴミを出し部屋へ戻って出勤の準備をする。
さて、じゃ行くか。
部屋に鍵をかけ、外に出てみると
やはり晴天だ。
気持ちもいい。
遅刻から一転したからだろう‥‥
自転車置き場に行き自転車に跨いだ。
そして颯爽と飛びだした。
山裾に住んでる為、行きは下りが多く快適だ。
ちよっとローカルっぽいところだから、人の行ききも少ない‥
約10分程自転車を走らせたところで駅に着き、自転車置き場に入った。
自転車に鍵をかけ、改札口を抜けそのままホームへ上がると時刻表の掲示板を見た。次の通勤快速まで、約10分程ある。
この駅はローカルっぽいわりには通勤快速が止まってくれる便利な駅。
俺は椅子にでも腰を掛けて待とうと思い、椅子に座った。
その瞬間、突然思いつかないようなことを考え始めた。
何故電車通勤を始めたんだろうと‥‥
思えば何故そんな気になったのか全くわからない。
あれだけ車が好きだったのに‥
別に乗らない訳ではないし必要最小限の時には乗っている。
ただ不思議なのは全く飛ばさなくなった。
と言うか怖くなって飛ばせないでいる、
といったほうがいい。
たまにしか乗らない為だろうか‥‥
そんな事を考えていると、ホームのアナウンスが流れ出した‥
先に入ってくる各駅列車のアナウンスだ。
列車がホームへと入ってきた。そしてその列車の中を見て驚いた‥‥
えっ!!がら空きだ。
1時間で何故こうも変わるのか。各駅列車だからそんなものなのか?
いつもはつり革に掴まる毎日を送っている自分にとっては羨ましくも見え、
何か無性に乗りたくなってきた。
列車が止まりドアが開き、少ないながらも降りる人がいる。
さらに列車の中の乗客も減る。
それを見た俺は我慢しきれなくなり、咄嗟に列車に飛び込んだ‥
時間も早く、列車の中はガラ空きな為か気分もいい。このまま最後まで乗っていこうか。
それでも余裕がある。それも言いかも‥‥
先輩にはゴミだしに時間が掛かってと
言っておこう。叱られるだろうか。
そうこう考えてると、列車は走り出した。
座りながら、揺られていると、なにかうとうと
してきた‥
そして暫く列車に揺られるとドアが開く音に目が覚める。
そして辺りをよく見ると、なんと通勤快速がとまる乗り換え駅から更に2つ目の駅に停車していた。
えっ?いつ乗り換え駅を通過したんだろう?
と思った次の瞬間愕然とした。口を開けて
固まってしまった‥
何と、少ないながらも少しはいた乗客が一斉に
降りだした‥
前後の車両からも人が出ていくのが確り伺える‥‥
えっ?
俺1人?
ビックリして、自分も降りようとするが、なんと突然体の自由が奪われたみたいに、身動きが取れない。
えっ何なんだ、これ!!
ちょっと待ってくれよ?
一体どうなってんだ!!
体が動かない!!
これ、夢か?
おかしい!!
ヤバイ!!
そしてドアがしまり、列車はまた走り出した‥
‥俺しかいねぇじゃねーか!!‥‥
体の自由もまだきかない。
そして、更に目も霞んできた。
いや見えない、音もしない‥‥
ただ体では列車が走ってるのだけは、はっきりと体で感じる‥
そして、走り出したかと思うと列車は直ぐにスピードを落とし始めた‥‥
更にスローペースになり…
そして止まった。
すると直後に回りの音が聞こえ始めた。
次にアナウンスが‥
『只今、信号待ちの為、スローペースにて走行してます』
体感的にはほとんど止まって感じるけれど‥‥
次の瞬間、すっと体が戻った‥
目も見えだしてきた。
まてよ夢かっこれっ?……
そう思ったけどどうも現実みたいだ。
えっ。!!
知らぬ間に何と自分の後ろ側にも列車が止まってる‥
でも、完全には後ろを振り向けない。何故なら視界の左右どちらにも人は乗っていない車両と思っていたのに、何故か女性の姿が、映ったかのように見えたからだ。
よくもわるくも怖くなってきて、
震えが止まらない。
しかし見間違えかも知れない、恐る恐る後ろを振り向いた‥‥
するとその瞬間目に飛びこんで来たのは、何とこっちを
見つめている‥‥
めっちゃ可愛い女性だった。こちらを
見て微笑んでいる。
可愛いくなけりゃ、ビックリして失神してたかも知れない‥
こちらからもニコッと見せた。
するとまたニコッと返してくる。
何なんだ今日のこのサプライズは?
そっちの車両に乗りたい気分に刈られてしまう。
いい意味で胸が締め付けられるような気分に
なってきた。
と次の瞬間、何か変な匂いがしてきた‥‥
何かおかしい‥
んっ、ガス臭い!!
苦しい!!
あっ、女の子は?
ヤバイ!!
向こうも同じだ!!
苦しがってる。
咄嗟に俺は叫んだ……
オーイ開けてくれー
ドアを思いきり、叩き、
足で蹴りまくった。
すると何かゆらゆらしてきた。
地震か!!
更に揺れが酷くなる。
やばいぞ!!これ!!
上から蛍光灯も落ちてきた。
そして更に、黒い物も?
それを寸前のところでキャッチした。
何だこれ?
【手にしたのはなんと目覚まし時計だ】
えっ?
回りを見た。
自分の部屋じゃねーか!!
えっー!! これ夢かっ!!?
マジか?
現実に近すぎるだろー。
そしてその目覚まし時計の時間を見て更に驚いた‥
…………その、何と言うかこれが夢として。
ちょっと前に起きた時間と同じ時刻だっ!
そのままだ!!…………
しかも目覚まし時計は確り動いている。携帯と同じ時刻だ。
まさか?これ正夢か?
そう思った瞬間、藤もっちゃんのことを思い出した。
正夢なら部屋から出て来るのかも知れない‥‥
秒刻みのことだったら、有田さんと話した時間分またなければ。そう思った俺は少し時間をずらしゴミをかき集め直ぐに外へ出た。
ガチャ……