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01 呼び間違いから始まる不審火事件の真相


 放送の呼び出しから五分後、理科準備室へ一人の生徒が入る。

「しつれいします」

 しとやかな女の子の声が響く。

 その声を聞いた小林は片方のまゆを曲げる。

「櫛川です。櫛川悠里です」

 櫛川くしかわ 悠里ゆうり

 クラスであまり目立たない黒い長髪が特徴的な少女だ。


 櫛川が来たことで、小林は頭を抱えた。

「ボクが呼んだのは伏原なんだけど」

「伏原君は休みだから、わたしだと思って」


 ――クシカワユウキ

 ――フシハラユウリ


 語感がよく似ており、二人を呼ぶ時は注意が必要となる。

 小林はそのことを見落とし、大きなため息を吐いた。

「どうしましたか?」

 櫛川はやさしく話しかける。

「いや、なんでもない」

 小林は首を左右に振り、微笑みながら返事した。

「それで、ホントに伏原君ですか? それともわたしですか?」

「櫛川さんだよ」

 愛想笑いをしながら、小林は櫛川にパイプ椅子へ座るように手を動かす。

「さあ、座って座って」

 これ以上、問題を起こしたくないと思った小林は櫛川と適当に話して帰らせるつもりだった。


 ※※※


 小林と櫛川は向かい合わせになるようにパイプ椅子に座った。

 しばらく沈黙する二人、会話が続かない。

 小林は伏原に対する質問はできていたのだが、予想外の人物が来たことで頭がまとまらなかった。

「先生、何もないのなら、私、部活の方に行きたいのですが」

「いやいや、あるよ。あるある」

 小林は前のめりし、焦りを隠す。

「花とか出していますから、何か作業でもしていたのかと」

「いや、この花は亡くなった生徒に飾るものなんだよ。鮎川先生に頼まれて、彼らの好きな花を置いて欲しいって」

「そうですか」

 櫛川は寂しそうな声を出した。

「作業も終わって時間ができたから、みんなから昨晩の不審火事件を話そうと思って」

「それについては、鮎川先生から質問用紙で答えたはずですが」

「それは匿名を条件に出したものだろう? ボクは一人一人の生徒から聞くつもりなんだ」

「副担任なのに? そんな権限が」

「実は鮎川先生、担任やめるって」

「え?」

 櫛川はバッと目を見開く。

「ボクは鮎川先生の後を引き継いで、この事件について知らないといけない。警備のヒトや警察のヒトから何も聞かされていないからね。鮎川先生はみんなに旧校舎の鍵を渡したことからこの事件は始まったんだ。おそらくみんなのことを信じて、鍵を渡したと思うからね。だけど、こんなことになってしまって、鮎川先生もとても無念なんだと思っている」

「たしかにそうですね」

「だから櫛川、知っていることでいいから昨晩の事件について知っていることを話してくれないかな」

 小林は櫛川に頭を下げると、彼女は軽くうなずいた。

「わかりました。わたしが知っていることでよければ」

「いいのか?」

「ただし、この話はわたしが話したことを誰にも伝えないことを条件です。それと、この話はクラスのみんなが話していたことを聞いた話なので、真相についてわかりません」

「それでいい。知っていることを教えてくれ」

 小林はそういうと、櫛川は深く首を縦に振る。

 何も知らない小林は櫛川の話だけが頼みの綱であった。



 次回更新は7月1日になります。


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