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第四話:家に帰ったら鍵が開いていた!これは間違いなく三つ指ついて自称嫁の美少女がやって来る!

第四話

 アパートの一部屋、それが僕の城である。以前僕が住んでいた住居よりぼろい、だがしかし…家族に遠慮せずエロ本を見る事が出来るのだ。たとえ自分の部屋で見ていようとしても勝手に親は入ってくるもんだ。

 その点、この部屋は僕だけしか住んでいない。鍵だって僕が持っているから親が来てドアノブを捻っても…そう、こんな感じでガチャガチャ音を……って、あれ?

「…馬鹿な、開いているだと…」

 鍵はかけたはずだ。まさか泥棒?部屋の中には段ボールに詰まったエロ本ぐらいしかない。

「エロ本専門の泥棒がいるっていうのか?」

 各種様々なエロ本を囲ってはいる。ちょっとした児童図書館並みの内容だよ。

 部屋の中に入ったら強盗が一生懸命棒をこすって電気を起こしてた…なんて場面には死んでも遭遇したくない。どれほど気まずくなるだろうか、中学生が両親の営み中に部屋に突入したぐらいは…まず、間違いなくあるだろう。

 しかし、気まずいとは思いながらも強盗を捕縛する自信は…ある。それだけ、僕のコレクションは他の男のそれとは違う。データ媒体もかさばらず、いい物だ。ただ、僕は紙をあえて押したい。かさばる、めくるのが手間と言う人もいる。本棚に収まっている状態からの背表紙でのドキドキ、手間と思われる『捲る』という行為自体にも興奮要素は…あるのだ。

「巨乳系から貧乳系はもちろん手ごろなサイズも取りそろえている悠図書館。ぜひとも一度訪れてください」

 誰もいないのに騒いでしまうのは本能か、それともむっつりは一人でなければ成立しないと言う事か…まぁ、それはいい。

「とりあえず警察に連絡するのはやめておこう。僕も男だ、下着姿で入れば相手も動揺するはず(※動揺の余り思考能力が低下しています)」

 辺りを見渡して部屋に入る。靴跡も無ければ靴も置いていなかった。それどころか人がいるような気配がない。

「これでピンヒールが落ちていたら通りすがりの女性をひっぱたくんだけど…」

 全ての部屋を見て回るも、特に異変は感じられなかった。気のせいかしら。

 一人暮らしにビビってはいない、いないものの…ちょっと寂しくなったので電話してみることにした。

『もしもし?どうしたの悠君』

「…家に帰ってきたら部屋のかぎが開いていたんだ」

『面白そうじゃないか…悠君の家に行くよ』

 こちらは行の無駄遣いせずにすぐさま応じてくれた。話の展開をよくわかっていらっしゃる。

「よし、次はリリィさんだな」

 リリィさんについてはちょっと小細工が必要だろう。普通に頼んだだけではきてくれそうにない…何よりさっき『ちょ、ちょっとだけゲームセンターでワニを叩いてくるわ』といって別れたのだ。彼女は傷心中だ。

『何よ?さっき別れたばっかりじゃない…もしかして食べたチョコレートに問題あった?』

「あ、ちょ、ちょ…や、やめてけだもの!近づかな……ぎゃああああっ」

『え?ちょっと祐城?大丈夫なのっ祐城?』

「僕の安全を確かめたかったらうちに来てね。ちなみに住所は…」

『…あんたねぇ』

 完全に疲れた感じの声が返ってくる。

「信じてもらえないかもしれない。けど、リリィさんにだけは嘘はつきたくないんだっ」

『何を言っているのかわからないけれど…ついさっき嘘ついたじゃない』

「あれはジョークさ」

『…斬るわよ?』

「電話じゃなくて僕を!?いや、どうでもいい事はスル―してだね…」

『包丁を持っていくわ』

「スル―してごめんなさい。あのさ、家に帰ってきたら玄関が開いていて…僕、一人暮しなんだ。だから不安でね…いい知恵を借りようと思ったのさ」

 リリィさんにそう告げるとため息を出しながら来てくれると言ってくれた。

「ありがとう、パンツ一丁で待ってるから!」

『行くまでに着ておきなさいよっ』

「もう脱いでる。後一枚」

『だから、着とけってーのっ』

 電話を切って五分後、葉奈がやってきた。

「きたぜ」

「いらっしゃい。とりあえず中に入ってよ」

 しかし、葉奈は上がって来なかった。

「まだ来たばっかりでちらかっていないから安心してよ。どうせ男の部屋は汚い…って思ってるんでしょ?僕は比較的掃除好きだから」

 家に帰ってきたら掃除をしている。エロ本読んでて親が来たら大変だからね。来たと思ったらすぐさまベッドの下に滑り込ませているのさっ。モノがあったらそれも不可能になる。

「…親からパンツだけしか付けていない男の部屋には上がるなって言われてるから無理だぜ」

「じゃあ脱げばいいのかな?」

「…そうかも」

「さすがに脱ぐ勇気はないけどね!」

 さっさと服を着て飲み物を準備する。

「日本茶?紅茶?コーヒー?」

「すみませんロイヤルストレートフラッシュを一つ」

「申し訳ございません、お客様。当店では置いておりません」

「じゃあ珈琲で」

 コーヒーぐらいは置いてあるのでさっさと準備して前に出す。

 コーヒーを出すとリリィさんが玄関に立っていた。今気付けば開けっぱなしじゃないか。泥棒でも入ってきたらどうするんだ。

「来たわよー…ああ、やっぱりそうなのね…上の階にあんたがいたなんて…」

「え、マジで?じゃあ何ですぐに来てくれなかったの」

「だってパンツ一丁だって言ってたじゃないっ」

 顔を真っ赤にしながらそんな事を言う。

「嘘、僕だったらリリィさんがパンツ一丁しか付けてなかったら諸手をあげて飛んでいくけど?」

「変態っ、帰るわよ?」

「嘘嘘、冗談です」

「はは、悠君は嘘つきだな。本当に諸手をあげて飛んでいくんだろ?」

「まぁ、そうだけどさ」

「あんたねぇ…」

「あ、窓の外にパンツ一丁のリリィちゃんがっ」

「マジで?」

 窓を開けてベランダへと向かおうとする…が、残念ながらリリィさんに頭を掴まれた。

「あんたの目の前に居るでしょうがっ」

「あだだだだだっ」

 その後はお茶を飲んで一息ついた。日本茶はいい…心を癒して落ち着かせてくれる。

「で、何で俺らを呼んだんだい」

 そういえば詳しい事情を葉奈には喋っていない事を思い出す。

「嫌ね、この部屋に強盗か何かいるんじゃないか不安になって電話したの」

「でももう解決したんでしょ?」

 何をいまさら…そんな顔でこっちを見てきた。

「え?解決なんてしてないよ?」

「じゃあ何でお茶飲んで老人みたいにぽけーっとしてるのよっ」

「リリィさん、君の家ではそうじゃないのかもしれないけれど…僕の家ではお客さんをあげたらとりあえず飲み物を出すようにしているんだ」

「そういうのは事が終わってからにしなさいよっ」

 言われてみれば…そうかなと言うとチョップされた。

「で、押し入れとかは調べたの?」

 そう言った途端、がたっ、と隣の和室から音がしてきたのだった。

「…音が、したわね」

 青ざめた顔でリリィさんが僕達を見てくる。

「音なんてしたか?」

「してないしてない。あ、コーヒーに合うようなお菓子あるけど食べる?」

「うん、食べる」

「やっぱりお菓子つまみながら飲み物飲むと和むよねー」

「和むなっ」

 まるで、自分の存在を確認させるように和室から音がまたしたのだった。

「したじゃないっ。また音がしてるじゃないのよっ」

「HAHAHA、気、気のせいだよ…いや木の精?」

「へっ、最強を欲しいままにした俺がこの程度で震えるなんてよぉ…沈まれぇ、俺の右拳ぃ…」

 三人でがくぶるしている僕達、仲良し三人組…じゃなくて、だ。

「こうなったらじゃんけんして勝った人が確認しよう」

「え、そもそもここは祐城の部屋でしょ?」

 何言っているのと言うリリィさんに僕は言ってのける。

「でも何かあったら警察呼ぶでしょ?」

「そ、それはそうでしょ」

「だから、僕はリリィさん達を呼んだんだ」

「あんたのその理屈…おかしくない?」

「おかしくないだろ」

 葉奈が堂々と言ってのけた。

「そ、そうかしら…?」

「そうだよ。さ、じゃんけんをしよう…俺はチョキを出す」

「僕もチョキだ」

「え?何で二人ともばらしてるの?」

 くくく、翻弄されているなリリィさん。チョキを出すと見せかけて別のものをだす…とおもわせ実はチョキを出すのさ!

「最初はグー!」

「じゃんけんっ」

「ぽんっ」

 僕、チョキ。葉奈チョキ。リリィさんグーだった。

「ば、馬鹿な…」

「やった!」

「あ、あり得ない…」

「ねぇ、何で二人とも自分がだすものを言ったのよ?そんなんじゃ負けるでしょ?」

 高度な読みあいになるとばかり思っていたものの…まさか、彼女がここまで単純だったとは…。

 ゆっくりと紅茶を啜る勝者の前で僕と葉奈は対峙した。

「まさか、こんな形で悠君と対立するとは…思わなかったよ」

 シリアス全快の顔で僕にそう語りかけてくる葉奈。

「僕も、そう思ってる。葉奈とはもっと違う感じで出会いたかった」

「手加減は一切不要だよ?小細工は一切しないでくれたまえよ」

「わかってる、親友だから手は抜かない…」

 荒野のガンマン、竹林の侍、獲物を狙うヒョウのごとき視線…。己のすべてを賭けて、昨日の友は、今日の敵となった。

「最初はっ」

 グー!…ここまでは順調のはずだと思った。

「残念、俺はパーでした」

「はぁ?」

 いいか?一、二の、三でお互いホルスターから拳銃を抜いて…ばきゅーん!…ぐふぅ。

 いざ尋常に…がほっ…き、貴様ぁ仲間を呼んでいたのかっ。後ろからとは…卑怯なりっ。

 ヒョウが驚いた!うっひょう!

「そんな気分…」

「どんな気分よっ。とりあえず、負けたんだから行きなさいよ」

「実は三回勝…ここは三階の角部屋さ。オーケーわかった、僕の部屋だ。僕が行こう」

 今僕は、パンドラの箱を開けようとしています。お母さん、僕に何があっても段ボールは開けずに処分してください。


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