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五つの秘宝  作者: 逸見真希
炎の巻
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七話 ルビファン魔法技術学校

 七話 ルビファン魔法技術学校



 女性からの情報がなくとも、【闇の秘宝】は自分の村同様国の代表者が持っているのだろうとアタリをつけていた。しかし、「長様」に受け継がれているという「秘宝」。それが、【闇の秘宝】である可能性は高い。ただの推測が事実である可能性が高まった。そのためアルは、女性のもう一つの情報のもと……「長様」の住むという「魔法学校」へと向かった。


「でっけぇ……」

 アルはその「魔法学校」と思われる建物の前にいるのだが、それはとても大きかった。田舎モノのアルが村や町で見たこともないような、大きな建物だった。

 学校なのだから、ある程度大きいのは当然のことかもしれないが、学び舎というより、「館」という表現がしっくりとくる建物だった。

(なんなんだ? ここは。山に入るのにも登山口に番人みたいなじいさんがいるし。山や森に入ったら入ったでモンスターが襲い掛かってくるし……。国の中にモンスター野放しにしてていいのか? 国長!!)

 アルは知らないが、実は山中にいたモンスターは魔法学校で使役・・・まぁ、飼っている使い魔で、侵入者の撃退に当たらせているのだ。

「・・・入るか」

 アルは、覚悟を決めて館の扉に手をかけた。

重厚な音が響き、館の扉が開く。


「いらっしゃい」

 扉の向こうでアルを出迎えたのは、紫色のローブを着た老婆だった。

「ど、どうも・・・」

 アルが中へと入っていくと、そこは受付のようだった。正面のデスクには先ほどの声の主である老婆がいる。脇のイスには、三・四人の男女が座っているのが見える。

「入館希望者はこっちへ。…………入校希望者かい?もしそうなら、今日は無理だよ」

 老婆が話しかけてきた。

「あ……いえ。あの……こちらに長様がいらっしゃると聞きまして……。面会させていただきに来ました」

「ほぉ? それで単身……。名前は?」

「風の島から来ました。アルフォート=アスタ=ウィドリークと申します」

 アルは礼儀正しく挨拶をする。とりあえず、長と会って話をしたい。悪い印象を持たれるわけには行かなかった。

「ウィドリークか。……少し、上に話してみようかね。そこのイスにでも座って待っていなさい」

「わかりました」

 アルは、言われた通り、脇に置いてあったイスに座る。横に座っている魔法使いらしき面々に緊張しつつも、なんとか落ち着きを取り繕って待つ。

 老婆は、受付においてあった鳥かごから一羽の鴉を取り出し、屋敷の奥へと飛ばす。

 アルが静かな空気に耐えながら座っていると、

「ねぇ、君は何でここに来たの?」

 隣に座っていた魔女らしき女性が話しかけてきた。

「私はね、入校希望。今回新しい長様を決める関係で、一人だけ生徒の枠に空きができるって情報を聞きつけてね。今までは独学でやってきたんだけど……。やっぱり、魔法学校ってのも入ってみたいじゃない? なんたって、最先端の魔法技術を学べるんだから」

 聞いてもいないのに、女性は生き生きと語ってくれた。

「……そうなんですか。」

「そうなのよぅ! ……なのに、ねぇ。せっかく入館の手続きは済んだってのに、奥に進む道が通れないの!」

「……鍵でもかかってるんですか?」

「違うわ。だって、ドアも何もないもの。ただ……一つ、魔方陣があるのよね」

「魔方陣?」

「ある条件で魔法が発動する……模様みたいな? ……とにかく、それがあるの。つまり、通ろうとすると、魔法が発動して通れなくなっちゃうわけ。絶対あんなとこ通れるわけないわよ。私が思うに、きっと別の入り口が……」

「どんな魔法が発動するんですか?」

「あぁ……それがね!」

 女性の言葉は、再び扉が開いた重厚な音にさえぎられた。

「こんにちは」

 入ってきたのは、フード付のマントを羽織った……声や背格好からしてからして女性。

「入館希望者は……」

 老婆は、飽く迄も事務的に、アルに言ったのと同じ文句を口にする。

「忘れたの? 私よ」

 女性は、被ったままだったフードをとる。すると……そこから現れたのは、美しく長い群青色の髪を湛えた、整った顔立ちの……まだ少女とも見れる人物だった。

「ユ……ユリシア様……!?」

「えぇ」

 彼女は柔らかな笑みを浮かべる。

「お、お戻りになられたのですか。どうぞ奥へ……!」

 老婆はいきなり敬語になってユリシアと呼んだ彼女を出迎える。ユリシアはそのまま、問題の魔方陣の上へと歩いていく。とりあえず、別の場所に入り口があるのだという、魔女の女性の考えは違ったようだ。

 ユリシアが魔方陣の上に乗った瞬間、魔方陣が勢いよく火を噴いた。

「見た―――?! あれよ、あれ!! あれのせいで奥行けないの!」

 アルの隣にいた女性が叫ぶ。しかし、

「凍りつけ」

 ユリシアの小さな呟きが聞こえたかと思うと、一瞬辺りの空気が冷え、次の瞬間には彼女は魔方陣の向こう側にいた。

「おかえりなさいませ、ユリシア様。」

 老婆が頬を緩めて見送る中、少女は悠然と歩きながら館の奥へと消えていった。

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