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五つの秘宝  作者: 逸見真希
水の巻
24/37

二十話 アイダ 後編

本日2話更新。後編です。

前編を読んでいない方は先にそちらを読んで下さい。


「後は、あんただけだな」

 魔物の残骸に背を向け告げたアルは、変わらずユリとの静戦を続けるアイダに眉根を寄せた。

「アル、後ろ!」

 ユリの声と同時に振り下ろされた何かを、アルは間一髪でかわす。

「なんで……!」

 そこには、先程倒したはずの魔物が、元のままの姿で存在していた。

「やっぱり再生型の魔物か。アル、まずは……」

「アンタはこっちでしょ?」

「くっ……!」

「ユリ!?」

 ユリは何かを教えようとしたが、アイダの攻撃によりそれは叶わなかった。拳やナイフなどによる攻撃を魔法によるバリアでとめたりギリギリで避けたりして応戦しているが、魔法使いの多くは後方支援型であり、接近戦には向いていない。

 ユリはそれに当てはまるだろうし、ましてや気絶したフォール庇いながらの応戦、長くは耐えられないだろう。

 アルは未知の能力を持つ相手に眉をしかめた。攻撃を当てることはできても、その度に魔物は再生する。先の見えない戦いに心を乱されたアルは、生じた隙を突かれ傷を負う。

(くそ!再生とか反則だろ。でも、ユリは何か伝えようとしていた……何かあるはずなんだ、何か……倒す方法が)

 魔物の破壊と再生の繰り返しを見ていたアルは、もう何度目かわからない再生中の魔物の体内に、何か光るものを見た。

(あれは……もしかして……?わからないけど、でも、一か八かだ!)

 同じような攻撃を続けても、埒が明かない。そう判断したアルは、確信も持てぬまま、先程までのように魔物の体を砕いた後、間髪いれずその光に向けて風の刃を放った。飛び散る光に目がくらむ。それでもなんとか魔物の様子を見ていると、やがてその光は消えてしまった。

(成功……か?)

「―っアル!」

 残ったままの岩のかけらがまた動き出さないかと不安だったが、ユリの切羽詰まった声に踵を返した。

「大丈夫か?」

「ありがと」

 今にも押しつぶされそうになっていたユリの上からアイダを突き飛ばし、ユリを助け起こす。

「なんとかね」

 二人はフォールをかばうように並び立ち、痛みに顔を歪めながら立ち上がるアイダを見据える。

「ったく、これだけは使いたく無かったってのに……仕方ない」

 アイダはブツブツと何かを呟きながら、左手に巻かれていた布を解いて行く

「何を……?」

「消え失せろ」

 目を鋭くしたアイダが幾分低い声でそう言うと、布の下から現れた紋様が輝いた。

「アル、下がって!!」

 それが何であるのかをいち早く気付いたユリが、前に出る。

「血の盟約に基づき我を助けよ、彼の魔術より我らを守護したまえ!」

 濃い闇が迫る中、無数の光がユリを中心にはじけた。


 音もなく、真っ白な視界に何が何だか分からなくなるが、それも数秒で終わり、だんだんと音と色が戻って来る。アルはまだ立ち尽くしているアイダに気づき、剣を握りしめ駆けた。

「……なんで? あれが効かないなんて、あるわけが……」

「動くな」

 アルはアイダの背後をとらえ、その剣は首筋に触れていた。

「いくつか質問をする」

「……そう。アンタ、剣士だったね」

「……セイカちゃんはどうした?」

「セイカ? ……人質なら殺しちゃいないよ。まぁ、穴の中に放ってあるから、バカな魔物に食われてるかもしれないけど」

「なんだと?」

「どうせ、殺すんだ。いつでも構わないじゃない」

「……もう一つ聞く。アンタは……」

 言葉をつづけようとしたアルの耳に、思いがけない音が届く。

「ユリ!?」

 視界が戻ってからは何も言わず立っていたユリが急に倒れたのだ。アルはそちらに気が奪われてしまった。

「ぐぁ……!」

 その隙をアイダが逃すはずもなく、アルは彼女の掌拳をまともに腹へ受けた。

「く……そ!」

 なんとか受け身は取ったものの、立ち上がる頃にはアイダははるか遠くへ行ってしまっていた。追うことも不可能ではないだろうが、倒れたままの二人をおいて行くこともできず、アルは追求を諦めた。

(あいつ……女だろ? なんて力してんだよ……)

 気になることは多々あるが、それよりも今は優先すべきことがある。

「ユリ、どうした? 大丈夫か?」

 呼吸があることに安堵し、大きな怪我が見られないことを確認するが、倒れた理由が分からない。

「……フォール、起きろ。フォール!」

「ん……」

 先に気絶していた彼の方が、起きる気配があった。

「フォール。セイカちゃんを助けるんだろ?」

「……アル……?」

「あぁ。大丈夫か?」

「……あいつ……アイダは? 魔物は?」

「魔物は倒した。アイダは……逃げたよ」

「逃げた!?」

「あぁ」

 脅威が去ったことに安堵しつつも、自分の寝ている間に全てが終わってしまったフォールは、複雑な顔をしていた。

「あれ? ユリさんどうしたの?」

「わからない。……とりあえず、お前は起きてくれて助かったよ」

「えっと……これから、どうすりゃいいんだ?」

 倒れた原因のわからないユリのことは気にかかるが、原因が分からない以上どうしようもない。

「……まぁ、とりあえず。セイカちゃんを捜そう」

「うん」

 まずは、ここに来た最初の目的を果たすために行動を起こすことにした。


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