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五つの秘宝  作者: 逸見真希
水の巻
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十八話 魔物の祠

十八話 魔物の祠



 小さな島に、堂々とそびえたつ……祠と呼ぶには大きすぎるのではと感じてしまうほどの大きな建物があった。

「ここが……?」

「うん。出入り口に、魔物が出入りできないように、結界? みたいのが張ってあるんだって。ユリシアさんがさっき言ってた、洞穴ってのは……この祠の中に在るんだ。その穴から、魔物たちが出てきてるんだって」

「その穴は、どこに続いてんだかな」

「知らねぇ。オレも、入ったことねぇし」

「魔界……」

「「え?」」

「だったりしてね」

 にこりと笑うユリの笑みはとてもきれいなものであったが、今の状況にそぐわないため、余計に恐ろしく見えてしまう。

「さ、入りましょう。フォール君、洞穴まで、案内できる?」

「もちろん! そうだ、穴から出てきてんのは、そんなに強くねェんだって。おじさんが言ってた。でも……穴の中入ったら、すごく強いのが出てくるから、入るなって……」

「それも、結界の効果なのか?」

「かもしれないわね。……でも、今回は入らないとね」

「うん……」

 国の大人からは入ることを禁じられていた場所へ入ることになったフォールは、何か考えるところがあるようだ。

「迷いがあるなら、穴へ降りる前に帰ってもいいのよ?」

 ユリの言葉は厳しいものだが、優しさでもあった。

「……行く! オレも、セイカを助けに行くんだ。でなきゃ……今まで、鍛えてきた意味がねぇ!」

「よく言った。俺も、協力するぞ」

「あら、この旅のメインはあなたでしょ? アル」

「……今回は、フォールが主役ってことで」

「まぁ、そうね。気をつけていきましょう」

 意を決し、祠の中へと足を踏み入れた。

 中へ入ると、そこは別世界のようだった。今までは基本的に海でしか見かけなかった魔物が、ここでは至る所にいた。

 天井から滑空してくる蝙蝠のような魔物、地面から飛び出してくる巨大な蛇のような魔物、人と同じように二足歩行で歩いてきて、木の棒を振り回す豚のような魔物。形は驚くほどバラエティに富んでおり、アルは襲いかかられていることも忘れて、まるで動物園に来た子どものように興奮した。

「無駄な労力は使いたくないわ。フォール君、最短距離で案内して。私とアルは、魔物倒しながら付いて行くから」

「は、はい!」

 幸か不幸か、この国へ来る前に、魔物の住処の上を通って戦闘経験を積んできたため、子どもの修行にも使える程度のこの階層に出てくる魔物は、アルにはやすやすと倒すことできた。

「アル、ユリさん、あそこ!」

 次々と魔物をはねのけていく二人にあっけにとられながらも、フォールは目的の場所までたどり着いた。

「……確かに、この下からはここよりも強烈な力を感じるわね」

「うん……よくわかんないけど、やな感じがすごくする」

「……とりあえず真っ暗ってことぐらいしか、オレにはわかんねぇけど……」

「灯りが欲しいわね。アル、ランタン出して」

「うん」

 ここから先は、祠の小さな窓から入る光さえも入ってこない、地面の下。ユリに言われて雑貨屋で買ってあったランタンを取り出し、アルは火を付けた。

「……よし、行くか」

 アル、フォール、ユリの順で、先の見えない穴の中へと降りて行った。

 穴の先は、以外にも階段のようになっていて、暗さで足を踏み外したりしなければ意外と楽に降りていくことができた。上の階では四方八方から襲いかかってきた魔物たちも、ここでは気配はするもののすぐには寄ってこない。

「ここまで静かだと、逆に不気味だよな」

「うん……なんか、ホラーな感じ?」

「でも、ここの階にいる魔物の方が、確実に頭がいいわ。考えなしに飛び込んできたりはしないもの」

「あー、そっか」

 アルの持つ明かりを頼りに、少しずつ、確実に下へと降りていく。

「……・二人とも、少し広い空間に出るみたいだ」

 それまでは、三人が縦に並んで降りて行くしかないような広さであったが、壁に当たっていた光が途切れた。それは、そこが手を伸ばせばすぐに壁・・・という狭さではなくなったことを示している。

「戦いやすくなるけど、その分襲われる危険も高くなるな」

「うん」

「気を引き締めていきましょう」

 戦闘を歩くアルは、呼吸を整え、足を踏み出した。

「なっ……!」

「アル、どうしたの?」

 一段を降りたとたんに声を上げたアルに、ユリが問いかける。

「…………とりあえず、下を見ないようにしよう、な」

「どういうことだよ」

 アルの堅い声に戸惑いながら、フォールも段を降りる。

「………………ユリシアさん、空って飛べる?」

「私ごときの力じゃあ、無理があるわね」

「ごときって……ユリ、魔法使いだろ?」

「魔法でも、準備もなしにできるわけないじゃない」

「……準備があればできるのか?」

「不可能ではないわ」

「へー……できれば、その準備が欲しかったな」

 堅い声のままで軽口を交わしながら、アルは降りて行き、最後尾のユリもそれを目にする。

「……なるほどね」

 広い空間は、ただの広い場所ではなかった。

「地下ウン百メートルってとこ?」

「落ちたら死ぬわね」

 階段の周りの壁は遠くなり、とてつもなく大きな穴に、階段のような道だけが浮くように存在している。

「なんで二人はそんなに冷静なんだよー!」

 静かに下を見下ろす二人に、一人半泣きになりながらフォールが抗議した。

「うん……なんか、もう……恐がってる余裕もないというか」

「あるいは、落ちて行った方が早く下には着けるかもしれないわね」

「絶対いやです!」

「冗談よ」

 ユリは、表情を変えずにそう言ってのけた。

「まぁ、落ちないように気をつけるしかねぇな」

 アルは、覚悟を決めてまた歩き出す。

「え!っちょ、待って……」

 フォールは足がすくんだまま、先を進むアルにすがる

「大丈夫よ。多少バランス崩しても、アルがフォローしてくれるわよ」

「え、俺?」

 もちろん、仲間が落ちそうになれば、助けようとはするだろうが。

「だって、風魔法使えばある程度までなら大丈夫なんじゃない?」

「……なるほど、その手があったか。」

 立ち止まったアルは、ユリの言っていることを理解し、表情を明るくした。

「わかってて歩き出したわけじゃなかったの。……すごい勇気ね」

「あの、それは褒められてるの?」

「そのつもりよ」

 釈然としない気持ちのまま、アルはまた歩き出した。先程のアドバイスがあったからか、幾分足取りは軽い。

「フォール君。立ち止まっていれば魔物に襲われる危険性は上がるし、セイカちゃんを助けに行くのも遅くなってしまうのよ?」

「……い、行く!」

 フォールも覚悟を決めたようで、若干びくつきながらも、歩み始めた。

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