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五つの秘宝  作者: 逸見真希
炎の巻
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十話 噂話

十話 噂話



 アルは、廊下を歩いていた。

 女性に聞いた初級クラスの部屋……共同部屋の方へ行ってみると、確かに話し声が聞こえる。

 ひときわ声が大きい方を見てみれば、女子のグループが半分廊下にはみ出しつつお喋りをしていた。

「ねぇねぇ、今度の長様って誰になると思う?」

 たまたま聞こえてきた話題。なんとなく興味がわいて、さりげなく耳を傾けてみる。

「えー。やっぱり、レイクル様じゃない?上級クラスだし」

「やっぱそう思う?今の長様の御子息だもんねぇ」

「何言ってんの。長様の子供だなんて関係ないわよ」

「そうよ。長様は世襲制じゃなくて実力主義だもの」

「ね。だから私は、ミランダもありだと思うんだ」

「えー、彼女中級でしょ?」

「でも、実力は本物じゃない?悔しいけど」

「……そうね。性格は最悪だけど」

「いえてる」

「あたしは、ディオネさんだと思うな。上級クラスだし、上級クラスの中でも年長でしょ?」

「そうよねー! わたしも、断然ディオネ様。……あぁ、いつ見てもお美しい……。」

「あーあ。この子、写身(しゃしん)持ち歩いてるよ」

「完全にファンだね」

 女子特有のキンキンと頭に響く声が混ざりつつ聞こえてきた話。

(へぇ……三人、かな? 候補は。……あれ?でも……)「上級クラスって、三人いたよね?」

 今上がった三人は、上級クラス二人に中級クラス二人だったはずだ。

「あれ。あんた誰?」

「知らなーい」

「ふほーしんにゅう?」

「えー、やばくない?」

「でも、なんかかっこよくね?」

「あ。それ私も思ったー」

「あ、あの?」

 村には同世代の女子はあまりいなかったため、アルはちょっと腰が引けていた。

「あ。今日のお客さんじゃね?」

 今日の客、とはもちろん新しい長を決める式典のことだろう。たしかそういうことになっていたはずなので、アルは頷く。

「そっかー。いらっしゃーい」

「ども」

「で、なにー?どうしたの?」

「あ、いや……。さっき、次の長さま?について、話してたよね?」

「あーうん」

「てーか、さっきじゃなくて、今?」

「で、それが?」

「ここへ来る前に少し聞いたんだけど、上級クラスの人って三人いたはずだよね?」

「あー。そういえば、いたよね」

「え。いたっけ?」

「ほら、一番奥の部屋の」

「あぁ、何年か前から修行とかってちょくちょく学校の外出てる人でしょ?」

「そうそう。……あの人、普段学校いないからねぇ。」

「でも、すごいらしいじゃん?」

「あ。わたしあの人の授業受けたことあるー……」

「マジ?どうだった?」

「なんか、難しいこと考えてるんだなぁ、って」

「何それー」

「でも、いい人だよー」

「ふーん」

「そうなんだ……いろいろ教えてくれて、ありがとう」

 アルは、笑顔で礼を述べた。それを見た少女たちは、一瞬言葉を失い、すぐにこそこそと話だす。

「……わぁ」

「ヤバくね?」

「ヤバイ」

「笑顔やばいよねぇ」

「…………かっこいい……」

「ちょっと、この子見とれてるしー」

「おーい、戻っておいでー」

「あの、どうしたんですか?」

 思ってもみなかった反応を返されたアルはうろたえながらも相手を気遣う。なぜかはよく分からないが、自分が原因のようなのだから。

「大丈夫、大丈夫」

「そうそ。よくあることだから」

「そ、そうなんですか……」

「気にしないでいいよー」

「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ……」

「ん。じゃ、ねぇー」

「バイバーイ」

「ホント、ありがと。失礼します」

 アルは、少し急いでその場を後にした。

(ホント、さっきの子どうしたんだろ?)

 村にはそういう対象がいなかったため自覚は無いが、彼はある程度は整った顔立ちをしている。本人が気付いていなかっただけで、村ではおば様方のいい目の保養になっていたとかいないとか。

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