第5話 特殊性
魔術☆レッスン、その2です。
母さまに促され、家の裏の空き地、少し岩石質の、開けた場所にいる。
ここで実践練習を始めるようだ。
「さて、まずするべき事は、自分の魔力を感じることね。自分の身体の内側に意識を巡らせ、流れる魔力を感じ取る。そして魔力の流れを操り集め、身体の外に放出する。」
一連の流れを行ったらしく、母さまの掌にボッ、と炎が点る。
おお!!すごい、初めて見た。
「イメージだけだとこれを敵に投げたり、防御に使ったりするのは難しいわ。というか、あんまり威力はないし投げられないしで、使い勝手が悪いのよ。」
掌を突き出すが、炎が飛んでいくことはなかった。
「これが詠唱だとこう。
火球よ、彼のモノを貫き打ち崩せ。『ファイアボール』!!」
火球が発射され、約10メートル先にある岩に当たる。
ドン!!!と音がし、岩の表面の半径50センチ程の範囲が抉れる。
「――とまあ、こんな感じね。今日はここまでしなくていいから、まずは魔力を操作することを目標にしましょう。」
しなくていいじゃなくてできませんって。
……魔力を感じ取る…か……。どういう感覚かよく分からないけどとりあえずやってみよう。
僕はその場で目を閉じる。
身体の内側に意識を集中させる。
―――これ、かな……?
ある一点に何か強くて暖かい、エネルギーのようなモノが集まっているのを感じる。そしてそれは微量ずつ、身体を巡っている―――。
そのエネルギーを汲み上げ、右の掌に集めようと意識をする。すると、右手が暖かい感覚に包まれる。
―――あとはイメージ。
エネルギーを揺らめく炎に換え、放出するイメージ。
掌を開き、上に向ける。
―――行け……!!
ボウッと音がする。目を開けると、掌の上で炎がゆらゆらと揺れていた。
「………で、出来たあっ!!!!」
ヤバい、嬉しい。魔術が使えるなんて、ホント異世界来て良かった!!!
「よくできたわねリュー!!一回でできるなんて、あなた魔術の才能があるかもしれないわね!!」
母さまが褒め称えてくる。
照れくさくなって、炎に目を移した。
―――あれ、なんか―――
―――『飛ばせる気がする』―――
そう思った僕は右手を突き出し、岩に向ける。
「―――リュー!?」
―――放て!!!!―――
ボヒュッ、と音がして火球が、……いや、正確には『火弾』と呼んだ方が良いかもしれないそれが、銃弾の如く回転しながら鋭く放たれる。
火弾が岩に衝突する。
―――ひとつの岩を貫通し、その向こうの岩を砕き、炎が消えた。
………あれ……?…詠唱無しで飛ばせた……。
なんでだろう、と考えていると、母さまが僕に飛びついて来た。
「すごいわよリュゥゥーー!!!あなた天才よ!!!大魔術師よ!!!むしろ神よおおおーーー!!!!!」
母さまがすごく喜んでいる………が…
「かあ……さま……締まって……る……苦……し…い」
後ろから抱きついてきて、首をしっかりとホールドしている。息が苦しい。
「あっ、ごめんねリュー。母さん興奮しちゃって……。」
母さまがパッと離れる。
「えっと……それで、どう…かな?…威力とかは」
「あ、ええ…そうね……速度も貫通力も詠唱無しとは思えないほどにあるわね。申し分ない威力だわ。あ、試しに詠唱してやってみてくれる?そっちの威力も知っておきましょう。」
言われた通り詠唱を試………
「………何て言うんだっけ……?」
忘れた。何だったっけ…。
「炎よ、彼のモノを貫き打ち崩せ。『ファイアボール』で発動するわ。…ちゃんと覚えること。」
ごめんなさい。
再び炎を掌の上に出し、構える。
「炎よ、彼のモノを貫き打ち崩せ。『ファイアボール』!!!」
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・
あれ????
うんともすんとも言わない。
もう一度詠唱をする。
「炎よ、彼のモノを貫き打ち崩せ。『ファイアボール』!!」
うん、ダメみたい。
「え、無詠唱でできて、詠唱じゃできないってどういうこと……??」母さまがそういって首を捻る。
……かなり特殊みたい…。
「ま、まあ、出来ないものは仕方ないわ。とりあえず今日は魔力が尽きるまで撃っておきなさい?」
え……
魔力が尽きるまで???
「え、え、魔力が尽きるまで撃つの!?」
「ええ、そうよ?魔力量を増やすにはそれが手っ取り早い方法だから。」
うわーー……きっつー……。
……その後僕がぶっ倒れたのは言うまでもないかもしれない。
次回は剣術のレッスンが主体になりそうです。多分。