第4話 スキルと魔術
あれから約半年が過ぎ、僕は5歳になった。
そういえば、この半年間でまたいくつかスキルを創ったので紹介していこうと思う。
《スキル:身体能力強化》
効果:『魔力を身に纏い、身体能力を強化する』
制限時間:20分
再使用可能時間:3時間
必要MP:150
《スキル:武術・序》
効果:『武術中級者程度の戦闘能力を一時的に得ることが可能となる。脳と身体への影響が大きく、使いどころを考えなければ危険』
制限時間:5分
再使用可能時間:48時間
必要MP:200
《スキル:気配察知》
効果:『半径5メートル以内の生物の気配を察知する事が可能となる』
制限時間:1時間
再使用可能時間:1時間
必要MP:30
《スキル:狙撃》
効果:『狙撃が巧くなるかもしれない。人と握手をすることや、他人に後ろに立たれることに嫌悪感を抱くようになる』
制限時間:13分
再使用可能時間:56.5分
必要MP:13
とまあ、こんな感じ。
上ふたつは当面使うことは無いだろうと思うけど。
気配察知はなかなか燃費がいい。範囲はあまり広くは無いけどなかなか使える。
………狙撃は…なんか遊ばれてる感が。魔導書さん、意志あるよね?
そういえば、翻訳のスキルは創った日からほぼ毎日、動物相手に使っている。………こっちの言葉は通じないけど。
今日もこれから河辺に行って翻訳を使う予定。
家の東側にある川に着く。丁度、鴨っぽい鳥が水に浮かんで鳴いているので、スキルを使用。
「スキル:翻訳、オン」
鳥の声が人の言葉に聞こえるようになってくる。
今日は風が冷たい…とか、この冬最大の寒波がくる…とか言っている。しばらくすると、一緒にいた鳥達と共に飛び去って行った。急ごう、風が止む前に…とか喋っていた気がする。
1時間ほど居たので気温も少し下がってきていたし、ちょうど制限時間も切れたのでそろそろ帰ろう、そう思った矢先だった。
ポーン!!!
脳内で電子音が響く。スキルを創った時よりもだいぶ大きい音だった。
何事かと思い、魔導書を開く。
文字が現れ、点滅していた。
《スキル:翻訳をグレートアップします。よろしいですか? YES/NO》
……これは………来たんじゃないか…!?
YESに触れるとまた電子音。
そして。
《スキル:翻訳が相互翻訳にグレートアップしました。》
おおおおおおっっっ!!
やった!待ち望んだ相互翻訳だ!!!!
興奮覚めやらぬ中、一覧で確認する。
《スキル:相互翻訳》
効果:『使用者の半径50メートル以内に存在する生物の言語を相互で翻訳する事が可能になる』
制限時間:30分
再使用可能時間:5分
必要MP:10
なにこれかなり良い。
半径50メートル以内とか太っ腹すぎる!!
嬉しい限りだね。これで目標に一歩前進できた!!
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
上機嫌で家に帰ると、母さまに部屋に来るように言われた。
「リュー、半年前の話だけど、覚えてる?」
あ、やっぱりそのことなんだ。
「うん、覚えてるよ。戦いを教えて欲しいって僕が頼んだ話だよね」
「そうよ。あれから、意志は変わらない??」
そんなの愚問だよ。
「当然、変わらないよ。」
「そう………意志は固いのね…。…分かったわ。私が師となって、あなたに戦いを、魔術や剣術を教えてあげる。」
「ありがとうかあさま。これからよろしくね。」
「そうね。……ただし、ひとつ条件を付けるわ。」
条件か……。何だろう。
「私が十分に満足する強さに達するまで、絶対に冒険者になろうとしないこと。それに達しない限り、たとえ30歳になったとしても冒険者にはならせないわ。」
まあ、冒険者なんて命のやり取りをする危険な職業だ。こんな条件を付けるのも当然だろう。
「うん、それでいいよ。じゃあ早速、魔術について教えて?」
僕がそう言うと、母さまは本棚から本を探してパラパラと開くと、最初のほうのページで手を止め、開いたまま渡してくる。本にはなにやら絵が描いてある。
「それじゃあさっそく。まずは魔術の基本から。魔術にはそれぞれ属性があるわ。大きく分けて6つ、火、水、風、地の四元素に加えて光、闇の属性が存在している。属性は互いに干渉し合い、弱めあったり強めあったりする。互いの関係はその絵にある通り。あと、複数の属性の魔術を組み合わせた合成魔術なんかもある。ここまではいい?」
ちょっと、ちょっとちょっと。それ明らかに5歳児に教えるスピードじゃないよ……?僕が本当に5歳だったら絶対覚えられない気がする。
「うん、火と水、風と地、光と闇が相反する属性って事だよね?」
「そう。これらの魔術は詠唱や魔道具を使う魔術師もいれば、陣を敷く者もいる。まあ、人によって大分発動条件は違うわね。ちなみに私は詠唱を主体に使う」
ほうほう。魔道具とかあれば素早く発動できていいなあ。
「最初のうちはイメージが肝心ね。さて、一度に理論を詰め込むのも難しいし、外に出て実際にやってみましょうか?」