第44話 闘技大会:Ⅱ(一日目)
作者も話を忘れそうになる頃に投稿。
完結まで何年かかるんだろう、これ。
『さて、魔導具の説明も終わりましたところで、早速試合の方に移っていきたいと思います。初日である今日は参加組数の関係から、第一回戦のみが行われますのでご了承ください。それでは、今から約10分後にここ第一闘技場にて第一試合の開始となります。組み合わせはDランクパーティ「日輪」、Bランクパーティ「リバイバルズ」です。またそれと同時に、第二闘技場にてAランクパーティ「白夜」とCランクパーティ「牙王」の試合が行われます。このように初日は2試合が同時並行で進みますが、2日目以降はシード枠である3つのSランクパーティの試合に関しては、他の試合と時間を空けて単独で行われることとなります。』
その後もアナウンスが続き、参加パーティは自分たちの一つ前の試合が始まる3分前には、小冊子に記された所定の控室に来ておくように、といった内容のことが流れた。そしてそれからは、最初の試合の選手への呼び出しが繰り返される。
自分たちの試合までまだしばらく時間に余裕のある4人は、この後の行動をどうするかなどについて話し合っていた。
「わたし、「白百合」に賭けてくるねっ!!」
笑顔で口にしたリーナに、エルが釘を刺す。
「今日試合無いのに…か。てか、倍率ほとんど1倍になるんじゃねえのか?儲からないけどいいのか?」
「いいの!べ、別に儲けたいわけじゃないんだから!」
どうして若干のツンデレ調なんだろうと思いつつ、リューは苦笑した。
「……じゃ、私も賭けてくる。私達の優勝に」
強気の発言をティファがする。
「おいおい本気か。下剋上もいいとこだろ。うちが優勝できるとは思えねえんだがなあ……」
「私だって自信があるわけじゃない。正直言って上位に食い込むのはほぼ無理だと思ってる。けど、もし相手の調子が悪かったりすれば付け入る隙はある。…それに」
「それに?」
「リューはまだ私達にもちゃんと見せてない、隠し玉を持ってる」
「え、僕?」
たしかに秘匿しているものはいくつかあるが、と思いつつリューは返事をする。
「あるでしょ?」
確信を持っているような眼差しを向けられ、思わず頷いた。
「ほら、だから勝てる要素が無いわけじゃない。当然、運に頼るところもあるけど」
一瞬の沈黙ののち、ティファが再び口を開く。
「まあ、8割はモチベーションを上げるために言ってるんだけど」
「8割かよ」
「なるほどねえ。そこまであんまり考えてなかったなあ」
「モチベーションのためもあったのね。それじゃあ、賞金獲れたら何に使うかとかも相談したいわ」
「ああ、そういうのも良いと思う」
「賞金か。俺はそうだな……高級枕を買いたい」
「何、高級枕って…」
「いや、有るんだよ高級枕。他所の国からの輸入品らしいんだが、こう、首の寝違えも無くなるらしいし安眠効果も高いって評判でな?どんなもんか試してみたい」
「寝る事ばっかり。…でも、欲望に忠実で良い」
「欲望かあ…。わたしはとりあえず、美味しい物いっぱい食べたいなあ。奮発して甘い物とかも…えへへ…」
「色気より食い気…か…」
「眠気優先の人に言われたくないんだけど!?」
そうやっていつもの如く他愛のない話をしつつ、彼らの時間が過ぎていく。
しばらくその話を続けたのち、それぞれがやりたいことを果たしに行くということになった。
エルは席でひと眠り。他3人は賭けの券を買いに。その後は出店されている屋台にリーナが食べ物を買いに行くというのでリューが同伴した。その間ティファは、第二闘技場に行って試合を観戦してくるということだった。
リューとリーナがいくらかの食べ物を買い込んでから席に戻ると、第5試合ほどまで試合が進行し、ティファも戻ってきていた。
試合をゆったりと見ながら食べ物を消費していた3人だったが、エルが中々起きないので口の中にチュロスのような菓子を突っ込むことにした。ちなみに提案者はリューだった。
大剣を支えにしつつ器用に寝ているエルの口元にチュロスを近づける。すると、目にも止まらぬ動きでエルの右手がチュロスを掴む。そして、寝言のようにこう呟いた。「やめておけ。俺の眠りを妨げる罪は重いぞ」と。といっても後半は言葉になっていなかったが。
残酷にもチュロスは口に放り込まれた。
対戦表に目を通しながら、しばらく二つの闘技場を行き来して試合を観戦していると、やがて時間は昼間に差し掛かった。屋台で昼食になりそうなものをそれぞれが購入し、昼飯時になってきたからか先程よりは空きの出てきた、第二闘技場の客席に座る。
買ったケバブサンドらしきものをもしゃもしゃと食みながら、ぽつりとリューが呟いた。
「待つ時間、結構長いねぇ…。待ってるだけで疲れるよー」
呟きを最初に拾ったのはエルだった。口の中の食べ物を飲み下してから、言葉を発する。
「しゃあねえだろ。棄権もありはするが、参加組数は200超えてるんだしな。今日の試合数は…えーと、それぞれ大体40試合ずつってなってるからな」
「そっかー、40試合かー。そりゃあ時間かかるね」
「ん、でも、もう半分は終わってる。…この試合は4つ目のブロックの最初のもの」
ティファの発言で視線が本部付近に移る。そこには第23試合と大きく表記があり、冊子と照らし合わせると確かに試合数の半分を超えていた。
「ホントだ。ていうことは予定よりも早く試合が進んでるってことかな」
現在の時刻は正午を2、30分ほど回ったところ。想定されていた終了時刻は17時だったが、9時から12時半の3時間半で半分の試合が終わっていることになる。
「それもあるかもだが、まあ予定の時間は明日のための設定なんだろうな。明日は2回戦と3回戦で32+16試合、合計で各闘技場48試合ずつだからな。今日よりも時間がかかる」
「そうね。ヘタしたら予定の時間超えてもおかしくないわねー。今日は…えっと、22試合を3時間半でだから、ひと試合あたり10分未満で回ってて…私達が37試合目だから、あと15試合。単純計算であと2時間半の待ち時間…あー…」
「うわ、考えなきゃよかったかも…」
「うん…」
待つことにうんざりしてきた彼らに、ティファはそっとあるものを差し出す。
「トランプでも」
その提案に反対する者はおらず、四人はしばらくの間遊んで待つこととなった。
闘技場で繰り広げられる熱い戦いをよそに、買ったお菓子を賭けて熱い頭脳戦を行っていた彼らであったが、自分たちの試合まで残り6試合ほどになっていることに、ふと闘技場を見たリューが気付いたためその手を止めることとなった。
そろそろ出ようか、というリューの号令で、各々が荷物をまとめて闘技場の外に出ていく。
闘技場周辺に生い茂る芝生の上までやってきて荷物を置くと、それぞれ身体をほぐすべくストレッチを始めた。
「うあー。すっごい体が伸びてる感じあるうぅぅ……」
腕を身体の前で十字に組み、肩周りの筋肉を伸ばしているリーナが思わず絞り出すような声を出したが、他の面々も同様の感想を抱いていたからか、心底分かる、といった表情で深く首肯した。
その後数分ほど個人でのストレッチを終え、次は2人一組になって柔軟体操をし始める。
背中合わせで腕を組み、他方の身体を担ぎ上げる体操をエルと行ったリューは「身長が足りない…」という呟きをしていたが、この場にそれを聞き取れた者はいなかった。
柔軟があらかた終わると、ティファ以外の面々は軽く走ったり腕を振ったりと、筋肉をすぐに動かしやすいように、また可動域を広げるためのアップを始めた。
そうして身体を温めたり可動域を広げる動作をすること数十分、場外にも設置された機材から聞こえるアナウンスからは、彼らの2つ前の試合を開始する旨が伝えられていた。
それを聞くや否や、誰ともなく運動を止めて自分の荷物を拾い上げ、そして闘技場に向かって歩き出す。目指すは地下の選手控室だ。
控室に到着すると、室内で集中を高めていた他選手から鋭い視線が向けられるが、すぐにそれは外れていく。控室内の緊張感を肌で感じ取った4人であったものの、しかしながら彼らも気を引き締め直し、士気を高めていく。
荷物を鍵付きのロッカーに入れると、折角温めた身体を冷やさないようにと軽く運動をしながらも試合についての話し合いを始める。
「なあ、最初はどういう作戦で行くか考えてるか?」
「うん、まあ。やっぱりティファと練習重ねてきたし、あれが良いかなって」
「…私も最初のインパクトは大事だと思ってる。それが大きいほど、次も相手は警戒してくるから利用しやすい」
「だな」
「あ、それなら外套も出しとかないといけないのね。私、普通にロッカーに仕舞ってたよー」
ロッカーを開けながらあはは、と小さく笑い声を立てるリーナ。その声は若干上擦っており緊張をはらんだものであったが、過度に気持ちが張り詰めたものではないようで、リーナ以外の3人も安心感を
覚える。
そして時間は流れ、一つ前の試合が終わりを迎える。
数分の間もなく、彼らの試合が開始する運びとなる。
一回戦の相手はCランクで人数は5人。Dランクの彼らからすると最初から格上の相手であり、しかも人数で劣る。開幕から決して気が抜けない一戦だ。
係員から声が掛かり、それからやや遅れて場内アナウンスから入場の合図が知らされ。
4人は互いに目を見合わせると、頷きながら拳を軽くぶつけ合う。
そして、選手紹介の声と共に、場内へと入って行った。
二人組……
体操……?
うっ、頭がっ
^^ <はい、二人組作ってー
おいやめろ




