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第41話 あるメイドの日記 2

メイド日記その2になります。

皆さんこんにちは。リリアです。


またしてもわたしの日記をお見せする機会がやってきました。


今回はもう……見せるのが恥ずかしいなんて言ってられません。少しでも多くの人にこの日記を見てもらって、わたし達の大変さを共有してほしいです。



金の月20日

文字が読めるようになって以来、勇者様は書架の本を手当たり次第に読み漁っていました。どんなジャンルの本でも手当たり次第に順次持ってくるようにと言い、戦闘訓練と魔術訓練の時間以外はひたすら本を読み漁っていました。でも今日になって、そのペースが急に緩やかになりました。


何冊かの本を広げながら深く何かを考え込み、時折何かをメモ……というか作図?をし始めたのです。何を書いているのかと質問してみましたが、よく分かりませんでした。設計図を描いているというのは大体理解できましたが。


なにを作ろうとしているのかは知りませんが、その作業をしているときの勇者様の表情は真剣であると同時に、とても生き生きとしているように見えました。勇者様はこういう、物作りのようなものが好きなんでしょうか。あ、そういえば勇者様の■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■なんにせよ、勇者様が楽しんでくれているなら喜ばしいことです。果たして、どんなものが出来上がるのでしょうか。すごくわくわくします。



(追記)一部、書いちゃいけない事を書いてしまっていたので塗りつぶすことになりました。あぶないあぶない。




金の月21日

たまたまいつもより早く起きることができたので、今日こそ勇者様を起こしたいと思ってお部屋に突撃しました。ですが残念なことに勇者様は既に起きていて、昨日と同じように本を読みながら作図をしてらっしゃいました。……30分近くは早く起きたんですけど。勇者様はいったい何時に起きているんでしょうか?


そんな勇者様でしたが、今日は昨日とまた違い、財務長官のバッカス様を呼んで何やら話をしていました。わたしはお話をされている間退室していましたが、後で聞いたところ勇者様はバッカス様に持ってきてほしい物の要望を出し、その対価として儲け話を持ち掛けたそうです。本格的に何か作り始めるのでしょうか。期待大ですね。




金の月22日

今朝も勇者様を起こすことはできませんでした。流石のわたしもこれには違和感を覚えています。もしかして勇者様は夜に寝ていないのではないでしょうか?そう思い率直に聞いてみましたが、そんなことはないという返事をされました。……ぜったいウソです。リーズさん達に聞いたところ、やっぱり徹夜をしているそうです。それも連日。というか、召喚された次の日からなのだとか。口止めされていたみたいですが、人の口に戸は立てられないと言うように、この話は城内で少しずつ広まり始めているようです。

どうして寝られないのでしょうか……。わたしも枕が変わるとしばらくは寝つきが悪くなるタイプなのですが、もしかして勇者様もそういう感じなんでしょうか。

そう思って聞いてみたのですが、そういうわけでは無いそうです。どうにか、ちゃんと睡眠は摂って欲しいものです。




金の月24日

今日も勇者様は寝ていなかったようです。起きていた時間何をしていたのかというと、何かを黙々と作っていたようです。先日勇者様が求めた素材というか……材料?が昨日のうちに居室に届いたため、色々な形に成形したり、組み立てたりといった作業をずっと続けていたとのことでした。寝る間を惜しんで物作りというのに、職人魂のようなものを感じます。…ところで、何を作っているんでしょうか。わたし、なんだか気になります。


あ、そうそう。今これを書いているのは夜なんですが、これから勇者様のお部屋で物作りの見学といいますか、作業風景を見させてもらうことになりました。まあ、それは建前で、本当は眠れない理由を探るためなんですけどね。勇者様が寝られるようにするのは、メイドとしてのわたしの使命だとすら考えています。途中で寝てしまわないように頑張りたいと思います。




金の月25日

朝起きると、知らない天井が目に映りました。…いえ、勇者様のお部屋の天井をまじまじと見つめたことは無いとはいえ、一応は知っている天井です。ただなんとなく言っておかないといけない気がしただけなんです。昨夜は勇者様の作業を見ながら、椅子に座ったまま寝てしまったようです。起きたときにベッドに寝ていたのは勇者様が運んでくださったのだとか。なんだか色々と申し訳なく思います…。

そういえば結局、勇者様が寝られないはっきりとした理由は知れませんでした。自分の意志で寝ないようにしているということは分かったのですが。こんな風に寝ない日が続くと、遠くないうちに体調を崩すことは間違いありません。一応今のところは大丈夫というか、訓練などでもキレが悪くなることはないとメイド長もおっしゃってました。それどころか目に見えて成長しているのだとか。


あ、そういえば。


騎士の方々がここ数日、何やら勇者様についてのことを聞いてこられるということが多くなっています。わたしは理由がよく分かっていなかったのですが、他のメイドの方に聞いた話によると……近日中に勇者様を相手にした大捕り物が行われるそうなのです。なんでも、寝ていない勇者様を寝させるためなのだとか。……たしかに心配ではありますが……無理やりに寝させるというのは、こう…なんだか違うんじゃないかと思ってしまいます。

だからわたしは告げ口だと言われていいと思い、勇者様にその事を打ち明けました。ですが、勇者様は既に知っていました。その上で受けて立つとまで言い切ったのです。正々堂々全力で逃げ切る、と。…………あれ?そこは闘うんじゃないんですか…?




金の月27日

今朝、わたしが勇者様のお部屋に行くとそこはもぬけの殻でした。なにやら城内が騒がしいとは思っていましたが、例の件の実行日は今日だったようです。

勇者様の居場所を見つけるのは難しくはありませんでした。騎士団や魔導隊の方々が「そっち行ったぞ」とか「逃がすな」といったように叫んでいましたから。わたしがその現場に行くと、勇者様が飛ぶように逃げ回っていました。わたしはこの時知ったのですが、人って壁や天井を走れるんですね…。

勇者様はわたしが居るのを見つけたようですが、「リリアちゃん!また後でな!」と言って走り去りました。…ちょ、ちょっと待ってください。これじゃ日記も何もつけれませんよ?『今日は勇者様が逃げ回っていました。おわり。』としか書けなくなってしまいます。これは追わなければ…!!わたしは使命感に駆られ、走り出しました。



結果、その夜は足の筋肉が悲鳴を上げ、わたしはうめき声を上げていました。ちなみに勇者様はそれを見て笑っていました。むう……




金の月30日

今日も今日とて、大捕り物です。わたしの足はもう限界かもしれません。外でドタバタと音がしている中、わたしは勇者様のお部屋で力尽きていました……。


しかしふと、扉が開きました。

勇者様が戻ってきたのかと思ってわたしがそちらに目をやると。

そこに立っていたのはメイド長でした。


メイド長はいつも以上に真剣な表情でわたしに問いかけました。それでいいのか、と。こんな程度で追いかけるのを辞めていいのか、と。わたしは悔しさで声も出ませんでした。そしてメイド長は続けました。「諦めてしまったら、そこでメイド失格ですよ?」

―――そうです。わたしはメイド。メイドに諦めの二文字は存在しません。最後まで闘い続けなければ……!!!

わたしはゆっくりと立ち上がります。足の筋肉が痛みに震えていますが、関係ありません。立て、立つんだわたし………!!

「……それでこそ、私の教えたメイドです」メイド長はそう言うと短く詠唱をしました。途端に、足から痛みがスッと消えていきます。どうやらメイド長が回復魔術をかけてくれたようです。これなら、走れる……!!

さあ行きなさい、というメイド長の声に導かれ、わたしは弾けるように走り出しました。




金の月31日

勇者様は連日一切捕まることなく、今日も逃げ回っています。わたしはというと、メイド長に脚力を高める魔術を小まめに掛けてもらいながら勇者様の動向を追っていました。今日はなんとギルド長が勇者様の捕獲に乗り出していて、勇者様はそれを撒くために煙玉や色々なものを駆使していました。そのせいでわたしは姿を見失っていましたが、メイド長に逃げた方向を教えてもらって勇者様の行った場所を突き止めたのです。

屋根の上の物陰に身を潜めている勇者様に小声で話しかけると、勇者様は少し驚いたような表情を浮かべました。それからすぐにちょいちょいと手招きをして、わたしに隣に座るように指差さしました。

それから勇者様と二人、20分ほどお話をしていましたが…そこで分かったことがありました。勇者様が寝ないのは、一つには何かを作っているのが楽しいから。元の世界ではキカイ?とかいうからくりを弄るのが好きだったとのことでした。

そしてもう一つ。それは……寝ると悪夢を見てしまいそうだから、ということでした。あることでそうなってしまったということですが、そこまでは語ってはくれませんでした。……ただ、その時の勇者様の瞳が、奈落の底を覗き込んでいるような仄暗さを帯びていて…とても、印象的でした。わずかな恐怖すら感じていました。

そして、同時にわたしは決意したのです。わたしが絶対に、勇者様が安心して眠れるようにするのだと……!そうと決まれば、即行動です。いざ行ってきます!!




金の月32日

おはようございます。今日はこの日記を朝に書いています。結果から言いますと、勇者様を寝かすことに成功しました。やりました……!!

昨日聞いた話から、わたしはあることをするということを決めました。そのあることとは何か。そう、言わずもがな添い寝です!

小さい頃、わたしが悪い夢を見て泣いていると、お母さんは決まってわたしと添い寝をしてくれました。誰かがそばに居るというだけで、悪い夢のことなんて気にせずに眠ることができたんです。

だから、わたしが添い寝をすればきっと勇者様は寝られるはずだ!と思ってそのことを熱弁したところ、ちょっと抵抗はされました。が、押せ押せで行ったところ、最後には頷いてくれました。

こうして、わたしは自分の使命を果たすことができたのです!


あ、そういえば。この前も思いましたが、やっぱり勇者様のベッドはふっかふかで寝心地が最高でした。ふかふかじゃありません。ふっかふかです。


さてと、今日も一日頑張ります!!






とまあ、こんな感じの激動の日々を送りました。何はともあれ、勇者様が眠ってくれて本当によかったです。……さてと、わたしの日記公開はこの辺りで終わらさせていただきます。また機会があればお会いしましょう。それではさよなら!



読んでいただいてありがとうございます。

感想、誤字報告等お待ちしております。

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