第34話 修練所再び
説明回になった気がします。
翌日。4人は闘技大会へ向けて、訓練をするために修練所へと向かっていた。
「ん…………なんか今日、馬車が多いような気がするんだけど……私の気のせいかな?」
リーナがふと、商人のものであろう道行く馬車を見て呟く。
「いやー、気のせいじゃねえだろ。闘技大会開催の知らせを受けて、近くの街とか村に居た商人のうちかなりの数が集まってきてるだろうしな。明日、明後日とかになったら如実に現れるだろうなあ……なんつっても、この1か月間は稼ぎ時だからな」
「稼ぎ時………か………」
エルの返事に、リーナはそう呟きながら馬車の方を見て若干目を細めた。
そんなことを話しているうちに一行は修練所へと近づき、それと共に周囲には武装した人々が次第に多くなっていた。
そして、更に近づいて見えてきた物に、目を奪われた。
「なん…だ……こりゃあ……」
前方にはそびえ立つ、塔。高さは4,50メートルほどはあるだろうか。この辺りにそんなものは無かったはずだが、今は確かに存在している。
遅れて気が付くが、その塔の位置はどう考えても修練所の方角。
というか、修練場そのものだった。
「どうしたらこうなるんだろうね……?」
リューの呟きに、ティファが反応する。
「…修練所は、三代勇者が作らせたもの、だから」
「え、そうだったのか?」
驚いた様子のエル。
「三代目の勇者っていうと……政治とか外交に関わって戦争を治めたり、新しい技術で公衆衛生?とかを整えたりしたっていう人だよね?」
リーナがさりげない説明を入れてくる。リューはやはり知らなかったようで、へえ、と小さく声を漏らした。
「そう。内政、技術開発、奴隷解放……色々な面で活躍して、多くの国を変えた勇者。ほとんど知られていないけど、修練所の建設を計画・設計したのは三代勇者、ユウ・アサノ」
いつもでは無いほどに饒舌なティファ。
「今日はよく喋るなお前…。なんでそんなこと知ってんだ?」
エルの疑問の声に、ティファは短く返答をした。
「………………教わった」
「……そうか」
エルも同様に、簡素な言葉を発する。今の若干の間に、二人にしか分からない何かがあったようにも見えた。
「……?…それで……あれはああいう仕掛け、ってことなのかな?」
「…うん、そういうこと。…有事…の際は、修練所の地下の階層がせり上がってこういう……塔みたいになる…らしい。多分、建設以来初のことだと思う」
勇者(多分日本人)が作ってる上にそんな仕掛けがあるなら、あの昇降機があってもおかしくないな、とリューは内心考えつつ、無言で数度頷いた。
「まあ、それは些細なこと。………早く入りたい」
ティファのその呟きで、一同は再び修練所へ歩を進めた。
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「ようこそ修練所へ。本日より闘技大会終了までの期間、こちらでは従来の業務に加えパーティ戦の斡旋を行っております。どちらの用途でのご利用でしょうか?」
修練所は前回来たときと違い、バルドさん以外の職員が常在しているようだ。まあ、人の多さを考えれば当然か。僕たちが赴いた受け付けには、人当たりの良さそうな青年が職員として座っていた。
「あ、パーティ戦の方です。えっと、斡旋……というのは?」
「パーティ戦ですね、畏まりました。パーティ名を登録して頂きまして、こちらの方で無作為…と言っても多少は手を加えることはありますが…組み合わせをし、対戦相手が決まり次第お知らせします。ここまでで何かご質問はございますか?」
ここでエルが疑問を口にする。
「あ、パーティ戦ってことだけど、自前の武器は使っても良いのか?それともやっぱり訓練用の木製か?」
「それは任意ですね。対戦の両パーティに回復魔術等を使用できる方が居るかどうか、そしてその熟練度などを考慮した上で、話し合いによって決定してください。ただ、結局は訓練ですし、此方としては怪我の無きようにしていただければと思います。押しつけはしませんが」
「なるほど。大体分かったわ。忠告もありがとな」
「いえ。務めですので。それではパーティの登録をしていだきたいと思います。こちらの用紙にご記入下さい。一回の戦闘での利用料は1000ニル、双方の同意があれば最大で五回までは同じ相手と対戦できます。その場合、一回につき各パーティ500ニルの追加料金が発生します。あ、料金は後払いで頂いておりますので」
取り出そうとしたきんちゃく袋を仕舞い、言われたとおりに用紙へ必要事項を記入していく。そうして出来上がった登録用紙を職員へと返却した。
「えー……『マスターピース(仮)』さんですね。ランクはDですか。……はい、登録完了です。こちら、番号札は167番になります。出番になり次第呼び出しをいたしますので、それまでの間少々お待ちください」
「あ、はい。ありがとうございます」
そう返事をすると、僕たちは受付から離れた。
「にしても……めちゃくちゃ人が多いなー……」
エルが軽く呆れたかのように呟く。
「そうね。この前来た時はほとんど人居なかったのにね」
「でもあれだね。なんか色んな人が見られるよね」
剣と盾を持つ少女、背に斧を背負う獣人、ローブのフードを目深に被った魔術師風の者など、多種多様な格好、種族の人々が入り乱れている様を四人は見回す。
「あ……。あれ、多分……『シルフの風』。」
「お、そーだな。あっちはSランクの『ウェルビス』だな。なんか久しぶりに見た気がするなー…」
僕たちは他のパーティを窺いながら、自分たちが呼ばれるのを待った。




