第33話 パーティ名
33話になります。
あの後、何が起きているのか分からない不安感に煽られながらも、馬車は一日弱の時間をかけて王都に到着した。
幸いにも街の外観は変わりなく、ここの平和が脅かされるような事態には陥っていないようだ。
しかし、あの光の柱のことで動揺が広がっているのだろう。
王都は何やら慌ただしく、普段より人通りも多いうえに妙な緊張感に包まれていた。
リューたち一行はひとまず宿をとって自分たちの荷物を置き、それからギルドへ行って情報収集をすることにした。
そして、30分ほどで事の概要はほぼ掴むことができた。
まず、光の柱の出所。これはなんと王宮であったらしい。
多くの人が一様に、突如として王宮から光が立ち昇った、と話している。
まあ、人によっては空から光が降りてきた、と言う証言もあったが。
数時間後には王宮からの知らせがギルドに届き、あの光は『開発中の魔道具によるもの』という説明が成され、住民への危険性があるものではないとされた。
未だに街では混乱を拭えない者も多いが、それはやはり本能的な恐怖心からくるものなのだろう。
また、光の柱の出現の直後には情報が交錯していたのだと思われるが、空から女の子が降ってきただとか、雲の中から宙に浮く城が現れたとか、王都の方角に飛んでいく巨大な赤い鳥を見た、などという妙な証言が飛び交ったということだった。
情報を手に入れたことでひとまず安堵の表情を浮かべる4人であった。
しかし明けて翌日。王都は再び驚きに包まれることとなる。
もっとも、今度は不安や恐怖ではなく、期待と喜びによるものだったが。
その原因は、王宮からギルドへ通達され、その後ギルド内の掲示板に張り出された文面。
''第52回アルテイル王国闘技大会開催の通知''
主催:アルテイル王国王都ギルド(アルテイル王国王宮後援)
開催日時:白の月9日、10日、11日 9時~17時(三日間)
開催場所:王宮闘技場
闘技種目:4~6人でのパーティ戦、2チーム1試合のトーナメント方式
エントリー方法:ギルドにてパーティ名、参加者名、参加人数を記入
募集期間:金の月11日~17日(本日より一週間)
参加資格:ギルド員 ランク不問
参加費:1チーム50000ニル
賞金・賞品:優勝・シルヴィ武具店製武器、および200万ニル 準優勝・200万ニル 3位(2チーム)・100万ニル 5~8位・50万ニル
備考:闘技中の毒物及び薬物の使用禁止
シルヴィ武具店とは。
王都、いやアルテイル王国最高といわれる武器を打つシルヴィ・アルリアの店である。
作品の中でも最高峰のものは容易くゴーレムを貫き、ドラゴンを切り裂く。
武器の価格は平均として一振り5、600万もするが、その武器の所有者は王属の近衛騎士団にも多く居るという。
ちなみに、シルヴィはダークエルフの女性であるらしい。鍛冶屋=ドワーフというイメージが台無しである。
掲示板に目を通していたリーナが「シルヴィ武具店……?」と呟いたところ、隣で同様に掲示板を見ていた30歳程のの冒険者がそれを聞いていたのか、上の内容を熱く語ったのだった。
リーナは彼の異常な熱さに若干引いていた。
そんなことがあって、4人は大会出場を即決し、とりあえず話し合いをすることとなった。
議題は………
………『パーティ名』。
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
「これより、第一回作戦会議を開始したいと思います」
わーーわーー。
「まず、何か質問がある人は?」
「はい議長!」
「何かねリーナ君?」
「今まで私達がパーティ名を決めていなかったのは何故なんでしょうか!」
「まず、4人で組んだ時にそういう話にならなかったから。そしてギルドにも何も言われなかったから。つまり統合すると、作者の責任だと思う」
!!!?
「………質問いい…?」
「どうぞティファ君?」
「………何そのヒゲ?」
「ちょ、ちょっと……指摘されると恥ずかしいなあ……雰囲気出したかったんだけど」
そう言いながら、リューは付け髭を捨てた。
「俺としてはそんなもん何で持ってたのかが気になるところだが……ま、それはさておき。さっさと話し進めようぜ」
4人はギルドから一旦宿に戻り、食堂で膝を突き合わせていた。
「参考までに聞きたいんだけど、他のパーティってどんな名前なのかな?」
「んー………有名どころだと『銀翼の鳥』、『烈火の剣』、『鋼鉄騎兵団』、『シルフの風』とかか?そんなに多くは俺も知らねえけど」
「私が知ってるのは『月夜』とか『雷神の盾』とか……あ、『白百合』!!メンバー全員が女の人なんだけど、Sランクパーティですっごい強いんだよー」
「Sランクっていうと………『狂乱の嵐』は古豪。………王都ギルドのギルド長も昔所属してた…はず。」
「へー、あの炊き出しの………あ、話ちょっとずれるけどさ、SSランクのパーティってあるの?」
「確か………今は4つあるな。まあ、この国からは輩出されてないけどな」
「あ、みんな他国のパーティなの?」
「ああ。しかも内3つはあのジークアルト帝国出身の奴らだ」
「ジークアルト、か……。」
軍事国家ジークアルト帝国。力こそすべて、を地で行くこの国は、一般人がこちらの国の兵士に引けを取らないほど強いという噂で、その軍事力は大陸随一とされる。
それはともかく。
「話を戻すけど、こうして並べてみるとパーティ名ってなんか『〇〇の〇』っていうのが多いのかな。私たちもそういう感じのパーティ名にする?」
「いやいや、そういう訳でもねえぞ。『ヴェルダンディ』とか『カオスグリム』みたいなのもあるし………」
「…………『猫猫猫猫猫』も………」
ティファがぼそりと呟いた。
「っ………あー、それもあったな………」
エルはティファの言葉を聞いて苦笑した。
「……?『猫猫猫猫猫』って……??」
「………さっき言ったSSランクのパーティの一つなんだよ……それ……。パーティが全員猫の獣人だからって理由でいい加減につけた名前だ」
「いい加減………」
リーナが絶句する。
「……しかもそいつら何故か、語尾に『にゃ』をつけて話すらしい」
3人の視線が自然とティファへと集まった。
「…………私達、そんな喋り方しない……にゃ。」
「なんで『にゃ』をつけたの!?」
「なんとなく。………それで……パーティ名はどうするの…?候補を挙げていって、多数決で決める?」
「あ、ああ………まあ、それでいいんじゃないかな?……って、私も考えなきゃいけないんだ。難しいなあ………」
「なら、思いついたら挙手して名前を言っていくってことでいいな?」
数十秒してから、リューが手を挙げる。
「お、早いな。言ってみてくれ」
「『黒炎の騎士団』とかどうかn「却下だ」早いよ!?」
「いや、どう考えてもアウトだろ。ルビをふらなくてもダサいし、後々黒歴史になること間違いなしだ」
「すごい酷評………!そんなに駄目かなあ……?」
ティファとリーナの方をちらりと見るリュー。
「ごめんね…………」「………(無言で首を横に振る)」
「………………。」
がくりと肩を落とすリュー。
「あ、はい!整いました!」
リーナ、謎かけじゃないんだから。
「『ハルマトア・リクレスト』ってどうかな?」
「んー……なんかちょっと……長くない?僕覚えられる自信がないんだけど……」
「確かになげえな………ま、保留にしとくか。ちなみに何か意味とかあるのか?それは」
「確か、古いエルフ語で繋がり、とか絆、っていう意味だったかな?なんかの物語でちょろっと出てきたんだよねー」
古い言葉、というのに反応して、リューが「リテ……ラトバリタ……」などと呟いていたことはどうでも良い事実だろう。
「………じゃ、私。……『氷雪龍』っていうのを思いついた」
「お、いいねそれ!特に龍が!ドラゴンが!」
「うん、いいんじゃないかな。綺麗な響きの名前だし」
「あ…………ちょっと待て」
「エル、どうしたの?」
「『氷雪龍』ってパーティがあったはずだぞ……」
「「「………………」」」
「……………ナシ、だな……。」
「順番に回ってきて俺か。………めんどくせえなあ……………『昼寝したい』とかどうだ?」
「………冬眠すればいいと思うの」
エルの首回りが薄氷に覆われていった。
「じゃ、一周してリューだね」
「あ、順番になってたんだ?えーっと………………あー………………………い、『犬猫人人』」
「いやふざけんなよ」
「エルには言われたくないんだけど!!」
「まあ、とりあえずちゃんとギルドに登録できそうなもんを考えてくれよ」
「えっと………………………うーん………………………パーティ名………パーティ………………ギルド………ギルド?」
何かを思いついたのか、悩ましげだったリューの表情が弛緩する。
「『マスターピース』ってどう?」
「ん…………マスターピース……まあ、異論はないけど……」
「悪くはない……かな?」
「文句つけるところは特にないと思うが………強いて言うなら少しインパクトに欠けるな……」
「そ、そう?駄目かなあ……ちょっと自信あったんだけど……」
「あ、とりあえず『マスターピース(仮)』にしとく?」
「仮…………それもいいと思う。………後でどうとでもできるから」
「じゃあ『マスターピース(仮)』で登録するか」
「あ、それでいいんだ?リーナの出したのは保留だったと思うんだけど」
「大丈夫、いいのよリュー。あれ正直5回に1回くらい、言うと噛むから」
「えっ!?」
「ほら、3回早口で言ってみてよ」
「え……えっと………ハルマトアでぃっ………っ………!!」
「「「早っ」」」
「う、うるさいなあ…………早口言葉苦手なんだよ……。」
「ま、つーことでパーティ名は『マスターピース(仮)』で決定だな」
「あ、うん。早速エントリーしに行こうか?」
こうして4人はパーティ名を定め、大会への出場を決めたのだった。
おそらく後日(夏ごろ)修正を加えることになると思います。ご了承ください。
8/17 一部修正。現在の日にち及び大会日程等を変更しました。
あ、あと誤字も修正しました。てへぺろ。
9/9 国名を修正。




