第32話 四畳半神話
※お探しの小説はこちらで合っています。
彼が目を覚ますと、そこは真っ白い空間・・・・・・・・・ではなく。夕陽に赤く染まった、物に溢れる四畳半だった。壁際には本棚があり、ギッシリと本が詰まっている。
畳から半身を起こした少年は混乱し、つい疑問を口にする。
「どこやここ。俺……ちゃんと落ちたはずなんけどな」
辺りをキョロキョロと見回し、目に入った窓に近寄って外の風景を確認する少年。そこで目に写る光景に若干驚きを露にするが、すぐに納得したような表情になり畳へ座り直した。
声が聞こえたのは丁度、少年が畳の上にあぐらをかいた時だった。
「お、ようやく起きたな。元気か?」
声の方に少年が顔を向けると、そこにはカップ麺を食う中年男性がいつの間にか佇んでいた。
「……誰やあんた……?」
「俺か?……まあ、一応神……だな」
訳の分からない返答に少年は不快感を表すでもなく、こう言った。
「なんだ、お前だったのか」
まさかの返しに自称神は困惑する。
「……え……?……ま、また騙されたな……?」
「全く気付かなかったぞ」
「暇をもてあました?」
「神々の」
『遊「って何言わすんだコラァ!!?」』
自称神が我慢できなかったのか、少年に鋭くツッコミを入れる。
「おー、一応神さん、ええ突っ込みやなあ。ほら、ご褒美にアメちゃんあげるわ」
「わあ、ありが……いやいい加減にしろよ!?てかなんだ一応神って?俺の呼び名か!?」
「え?名前とちゃうん?十二神、太陽神、一応神。ほら自然やん?」
「おいやめろよ!同列に並べられるほど俺偉くねえんだからな!?最近係長になったばっかなんだからな!!?」
「え、何?神界って会社的な社員階級あるん?」
「ああ、もうここんとこ毎日毎日大変で………いや、俺のことはどうでもいいんだよ。さっさと話を進めるぞ?」
そう言うと、男性はカップ麺の汁を一気に飲み干した。
「………まあまず、この場所についてだが。外の雲海広がる異常な光景を見れば納得するだろうが………ここは空間を歪ませて作った…俺んちだ」
「ああ、そうなん?」
「俺は神の仕事の中でも時空間に関わる部門にいてな。崖の上から跳び降りたお前を落下前にここに連れてきた」
「……目的は何なんや?」
「ま、簡潔に言えば……お前が別の世界に渡る斡旋、だな。ちなみに魔法有り魔物有りの典型的なファンタジーぽい世界に渡ることになる」
「斡旋?……つか、間違えて殺した~みたいなテンプレ転生やないんやな」
「そうだな。……まあ斡旋って言うのには理由があってな?……お前、2時間後にさっき言った世界へ召喚される予定だったんだよ、勇者としてな」
「勇者て…………。急に胡散臭なってきおったなあ…。それに2時間後て…。………ん、いや……予定が崩れたゆう事なんかな?」
「ああ、理解が早くて助かるな。予定ではお前が自殺するのは4時間後だったんだが………どういうわけかそれが狂ってな。急遽俺が出張って、こっちに転送したわけだ。……くっそ面倒臭かったぞ……」
「そらお疲れさん………」
「召喚者の選定でさえ面倒だったのにな。あっちの世界の奴ら、どうも召喚条件が曖昧過ぎてな……。6度目らしいぞこれ。どうなってんだ。」
「オレに言われてもなあ。そんで、勇者召喚の理由ってのは何やの?テンプレ的に国の内乱?国家間の戦争?それか魔王?もしくは別の理由?」
「魔王、だな。あっちの連中は魔王発生の予兆が、とか言ってるのじゃがな、すでに発生してる可能性は多分にあるんじゃよ?って、あっちの世界を担当してるババアは言ってたなー」
「あ、人づて……いや、神づてなんや?ついでに、召喚先の国ってどんな所か聞いとったりせえへんの?」
「ま、俺は基本干渉できねえからな。ああ、国か?アルテイルっつう小~中規模の国でな、汚職なんかは少なくて民の幸福度も割りと高い中々いい国だってよ。……ただ、なあ……」
「問題アリなん?」
「問題っつーか………国の方針で、勇者は絶対的存在、何があっても逆らってはならない……ってなってるらしいぞ?」
「なにそれこわい。勇者が一番魔王やん」
「二代目勇者が体現したらしいが……まあ詳しいことはあっち行ってから聞け。」
「ああ、まあそうするわ。………あ、ちなみになんか能力とか貰えたりすんの?最初からチートとか正直やめてほしいんやけど」
「んー……あっちの世界に入る際になにかしら付与されると思うが……俺にはどうにもならんな。諦めてチート無双でもしてろ、どうせ勇者なんだからな」
「はあ………ま、質問はこれくらいでええか。もうそろそろ時間ちゃう?」
「ん、ああ。確かにあともうそろそろだな。…………そうだ、俺から一つだけお前に質問をしたいんだが………」
「お?一応神さんが俺に質問?何何何?スリーサイズ以外なら何でも答えるで?キャッ!」
「うっぜ………………それで……お前が崖から飛び降りる直前に、『オレらしく逝くか……』とか言ってやった新体操的な技は………」
「ん?あれか?シ〇イやけど?」
「……………マジか………。シラ〇できるとか何者だお前は……!?」
「え?ちょい練習してみたらできたんやけど……なんか変?」
「…………ああ、なんでもねえわ…………。………お前もうそろそろ行けよ」
彼がそう言うと、四畳半に到るドアが薄白く発光し始め、ドアの隙間からは眩い光が漏れ出す。
「さあ少年、勇者としての!異世界での新たな人生を!!精一杯楽しんでこい!!」
高らかに叫び、ドアをビシリと指差す。
「………いきなりどしたん?そのテンション」
「うっせえ!!さっさと行けっつの!!」
「はーい。んじゃ元気でなー」
少年はゆっくりとドアに向かって歩き出し、ドアノブを掴んで開ける。
「………行ってきますのチューは?」
「お前崖に戻すぞ!?」
罵倒を受けつつ、少年は手をヒラヒラ振りながら光の中へ消えていった。
「がんばれよー……」
そう呟いた彼の言葉は、誰にも聞かれずに消えた。
9/9 国名を修正。




