第30話 リベル森林
8000文字なんて初めて書きました……
「おう、リューか。おはよう」
「あ、はい、おはようございます」
「………なんで敬語なんだ?」
「あ、いえ。今日も早起きしてるエルさんマジカッケー、みたいなノリで、ね?」
「ね?じゃねえよ……このやりとり、なんか疲れるんだよ……」
「ティファとリーナであと二回あるのに?」
「なんであの2人が同じノリで来ること前提!?」
「そりゃあ、昨日綿密な打ち合わせを……」
「もういい、もう止めてくれ………」
「……冗談だから、そんなにうなだれないで。それより、今日早いのはどうして?前日準備とは言ってもそんなに時間はかからないと思うんだけど…」
「……ああ、今日はただ単にたまたま目が覚めただけ…………………いや、なんでデコに手を当てる……?」
「んー……熱は無いんだね。体がだるかったり頭痛がしたりしない?」
「………別の意味で頭が痛いっつうの……!!」
「おや、それは大変だ」
「うっせえよ……!」
「……えっ……?今日も……?」
「あ、ティファ、おはよー。」
「う、うん…………リュー、エルに回復魔術かけた方がいい……!?」
「ハァ…………」
エルが深い溜め息をつく。
そして次に起きてきたリーナの反応にもうなだれるエルだった。
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「んで、ギルドで情報収集ってわけか」
朝食後、身支度を済ませた僕達はギルドに来ていた。
「うん。まずはクエストを受けて、ついでに森の状況、出る魔物、注意事項なんかを聞こうかな。その後はその辺にいる同業者にボアの対策を聞き込み。と考えてるんだけど。他には何かある?」
「その辺って……。……私は特にはないかな?」
「そっか。ティファは?」
「ない」
「りょーかい。んじゃ……二手に分かれてやろっか?」
「なら、俺とティファは別々だな!社交能力的に!」
「笑いながら言うことじゃない気が……?」
「本当は………エルはちゃんと公私の切り替えはできる」
え、ティファ?それってジョーク?
「いやいや、疲れるから絶対やらねーよ!あっはっはっは!!」
「そんな怠惰な理由なんだ……?」
リーナが盛大に眉をひそめる。
「えっとー……じゃあ、僕とティファ、リーナとエルってとこで」
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さて、僕達がムサいおじさん達に聞き込みしてる光景は誰得なんだ?ということで。
「少し遅めのお昼を取りつつ、情報整理した結果をお伝えします」
「まずひとつ目。この時期はやや魔物が少ないものの、元々数が多いから遭遇率は高め。注意すべき魔物はAランクで鹿の姿をした『シカオスガ』。Bランク、熊の『デティヘア』。鳥の『ハチジュウカラ』。」
「あとはSランクの『クロナガスクジラ』って化け物もいるって受付情報だけど、『かなり奥に居るし、気性は割と穏やかで、敵意を見せなきゃ大丈夫だ。なあに、普通は遭遇しねえよ!!』ってBランクの人は言ってた。でもフラグかもしれないから安心はしないこと。」
「ふたつ目。モノホーンボアについて。………こら、エル、寝るな。……ああ、ティファありがとう。えー、攻撃は突進が主で、大抵は地面を数回蹴るという予備動作がある。あと、あっちの数が極端に少ないと、逃げて仲間を呼ばれる事が多い。」
「最後。処理について聞いてみたらマジな顔で『倒したら即座に燃やせ』って言われた。理由聞いても顔色悪くして去っていった。……あ。あと角は今も需要あるみたいだね。………こんなところかな。読みにくかったら改稿するから、気軽に言ってほしいな?」
「それで、戦い方についてだけど。ティファと僕が土魔術で壁を作り、分断。エルとリーナが壁の上から襲撃。あ、正面から当たらないようにね。角で突き上げてくることもあるみたいだし。」
「とまあ……そんな感じの事しか思いつかないんだけど………意見があれば宜しく。」
ていうかなんか僕しか喋ってない気がする。
「まあ、うん。妥当なんじゃないかな?罠使うって人も居たけど、私たちにそんな技術ないし。」
「…………」
「エル、目開けたまま寝ないの」
「「え……」」
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リベル・アルタニアは、綺麗な街並みが続く小さな町である。
立ち並ぶ店や家は白を基調とし、一週間毎に地域で清掃を行うため、日の光に照らされた外壁は眩しさを放っている。
「というわけで、リーナは白のワンピースを着るべきだと思うんだよ。切実に。」
昼からはやることが特にないので、各自でやりたいことを、という話になり、エルはやはり睡眠。ここでティファが意外にも『疲れた、寝る』と宣言。
リーナと僕は手持ち無沙汰になり、ちょっとその辺をぶらつくことにした。
「何がというわけで、なの………?…………もうワンピースのことは忘れてると思ってたのにぃ………。」
リーナがはぁ、と短く溜め息をつく。
「ふふふ。僕の記憶力を舐めてもらっちゃ困るよ!さあ、リーナ。約束だったよね……!」
結構時間は経ってるけど、リンコマでの話合いは忘れない。
「うぅ……。………分かった……着ればいいんでしょ、着れば……!」
まだ着てないのに顔真っ赤ですよ。
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待つこと10分弱。消え入るようなか細い声が聞こえた。
「………リュー…………これ恥ずかしいよ……」
!!戻ってきた……!
声の方向を向くとそこには――――
「っ!!?」
――――天使が居ました。
動揺を必死で隠しつつ、声をかける。
「………リ、リーナ………リーナ。僕と結こ………………」
「………?」
「……………………け、結構似合ってるよ……!!いや、最高に似合ってるよ!!やっぱり間違って無かった!!僕は間違って無かった!」
「あ、ありがと……?」
あ、あぶねー!!あぶねー!!!今僕なんて言おうとした!?動揺隠れてなかったよ!思いっきりプロポーズしようとしてたよ!!
あ、まずい。うっかり目を逸らしてた……!悟られないようにちゃんと直視しなきゃ……。
改めて。
かわいい。ヤバい。これはヤバい。
透き通るような白さの細腕。膝下から伸びる脚線美。ワンピースの肩部分のフリル。艶のある金糸のような綺麗な髪に、小さなリボンが載っている。
ああ。
うっかり求婚しそうになったのも頷ける。というか僕、よく踏みとどまったな……。
なんだか見てるだけでドキドキしてきた。
「リュー……?」
「あ、は、はいっ?」
声裏返った。
「………なんか、無理して褒めてない……?」
不安げに小首をかしげるリーナ。
ファッ!!!??
あ、侮っていた!!!!この子の可愛さの爆発力を!!!
な、なんだ………?……この胸の高鳴りは………?
……!!!!!
……まさか………?
これが……………!?
「ドルオタの………気持ち………!?」
「え?何って?」
「あ、ごめん何でもない…」
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いやはや、お見苦しい所をお見せして申し訳ない。
その後僕達は屋台を廻ったりアクセサリーを見たり買い食いしたりと………これなんてデート?
リーナはしきりに『デ、デートじゃないからね!』と言ってたけど…………
デートですよ!!
夕刻まで町を歩いた僕達は宿に戻り、みんなで夕食をとった。
リーナのワンピース姿を見たティファは『かわいい……』と呟いてリーナの頭を撫でたりしていた。リーナよりティファのほうが背小さいんだけど。なんか和んだ。
エルは『あー、うん。似合ってる似合ってる』と適当に言っていた。まあ、予想通りの反応だった。
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次の日。
例の如く早朝に起きた僕が食堂に行くと、そこにはまた早起きしたエルの姿が……無かった。
いや、今日こそ早起きするべきだと思うんだけど。
……じゃあ、いつ起こすか?
………うん、もう少ししたら起こしにいこうかな。
『今でしょ!』かと思った?残念!
というか…………葛藤した末にやめたんだよ。察してください。
そうこうしているうちに、厨房に人が増えてきた。
「おはようございます。えっと、持ち運びできる昼食をお願いしたいんですが……」
うちひとりの………恰幅のいい、いかにも女将さんって感じの人に声を掛けた。
「おはようさん。昼食……?……ああ、あんた冒険者かい。そんなら作っとくよ。出発前に女将さんから受け取って、代金渡しとくれ。1人分が700ニルだけど、何人分要るんだい?」
「4人分お願いします。って、あなたが女将さんじゃないんですね……。」
「はい、4人分と…。あたしゃだだのパートだよ。よく間違われるけどねえ!!!」
豪快に笑うパートさん。
「そ、そうなんですか……。………ちなみに女将さんは……?」
「ほら、あの細身の若く見える美人がそうさね。あれであたしと同い年だよ!!」
再び大爆笑。
指差された方をみると、20代後半くらいに見える美女が居た。
えっ、全然女将さんに見えない。けど、一番機敏に動いてるし、他の人にだいぶ指示出してるし、本当に女将さんなんだろう。
女将さんはパートさんと同い年……。
歳は聞かないでおこう。
ただ、50は越えてるだろう、とは言っておく。
『ソフィー!!長話してないで、下ごしらえの作業に戻ってー!!話し好きなのは重々承知してるからー!!』
女将さんから檄が飛び、パートさんはじゃあね、と言って笑いながら返事をして作業に戻っていった。
………あれが美魔女ってやつか………
少し経ってから、僕はエルを起こしに行った。
その時丁度、部屋から出てきたリーナと挨拶を交わす。
「わ、私、ティファ起こひてくるねっ?」
リーナは少し噛みながらティファの部屋に行った。朝から良いもの見た。
そして僕は一向に起きないエルの部屋にスキルを使って解錠、侵入し、寝続けるエルに雷魔術を使ったのだった。
「さて、武器は持った?」
「持ったぞー」
「昼ご飯は持った?」
「持ったよー」
「角入れる袋は持った?」
「持った」
「小便すませたか?」
「あ、ああ………?」
「神様にお祈りは?」
「えっ………?」
「部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする心の準備は………ごめんなんでもない。突っ込まれなさ過ぎて恥ずかしい、死にたい…………。」
「リュー…、とりあえず元気出して。きっと反応してくれる人がそのうち現れるから」
ツッコミがない事に胸がモヤモヤする今日この頃。
昨日やったように、ティファが僕の頭を撫でる。気に入ったの?これ?
すぐ後に私もやる、といってリーナも参加した。
なんだこの構図。なんてことを思いつつ、宿を出発した。
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町を出て歩くこと約2時間。リベル森林は目前に迫っていた。
もうそろそろ正午になるので、森に入る前に腹ごしらえを済ませる事にする。
出発前に受け取ったバスケットを開けると、鼻腔を擽る香ばしい香りが漂う。
「おお……!旨そうだな、これ!」
エルが声を漏らす。
どうやらチキンサンドのようだ。数は8つなので1人ふたつということだろう。
それぞれが手に取りつつ、いただきます、と呟きサンドを口にする。
あ、美味い。
鶏肉と塗られた甘辛いソースがよく合っている。
手軽に食べられてこのクオリティは凄い。
ふと横を見ると、ティファが1つ目を食べ終えてもうひとつに手を伸ばしている。
こら、まだ口モグモグさせてるじゃないか。行儀悪いぞ。
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「さってと……!!腹ごしらえは済んだし、行くか!!」
エルが声を掛け、僕達は森に入っていく。
10分もしないうちに近づいてくる魔物を感知。
ゴブリンが5体で、2、3分のうちに片が付いた。
僕とリーナが武器に浄化魔術をかけつつ、さらに奥へ進む。
次に索敵に引っかかった魔物は3体だが、全く動いていなかった。
警戒しながら慎重に進んでいく。
索敵は魔物が居ることを示しているが、目の前にあるのは樹木だけ。
疑問を浮かべていたとき、ティファが呟く。
「多分、トレント……っ」
それと同時に火球を放つティファ。
1本の木が勢いよく燃え上がる。
………よく見れば炎で苦しそうにもがいている。
樹木型の魔物、トレントか。話には聞いていたけど、本当に木にしか見えない。
Eランクの魔物だが、敵を探知できない冒険者はこいつらに結構苦しむらしい。
トレントがのたうち回るので、周りの樹木にも飛び火し始めた。
………あ、あっちの2体も動いてる。
3体のトレントが沈黙するのを待ってから周囲の消火活動を行い、先に進む。
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その後も僕達は時折遭遇する魔物を倒しつつ進んでいった。
モノホーンボアを見つけたのは森林に入って約1時間が経過したころだった。
6体の魔物を感知し、少しずつ近付いて行くと、約20メートルほど先の木の陰に若干隠れた一角猪が確認できた。
こちらが風下になっているようで、まだあちらには気づかれてはいないらしい。
「よし、バレないように、ゆっくり接近するか」
エルが小声でそう言う。
「うん、じゃあいくね。スキル、隠密、オン。対象、パーティ全員」
僕が囁いた瞬間奇妙な感覚が体に走る。自分の存在が希薄になり、周囲と混ざり合うような感覚―――。
………正直言って、僕としては少し気持ちが悪いように感じる。
「リュー、これって……!?」
疑問の声を上げるリーナ。
「みんなの存在感を薄くした。ある程度の距離までなら敵に近付いても大丈夫かな。」
「……こんな便利そうな力、どうして今まで使わなかったの……?」
「だってティファ……。なんかこれ気持ち悪くない?自分の存在があやふやになるっていうか……」
「?そうか?」
「……別に、なにか膜みたいなものに包まれてるようにしか感じない」
「私も平気、かな?リュー、大丈夫?」
あれっ………
「一応大丈夫だけど……使用者だからかな……?」
なんか釈然としないけど、今は置いておこう。
「ま、いいや。………接近しようか」
了解、と皆が呟き、そろそろと一角猪までの距離を詰めていく。
残り10メートルを切ったあたりで、一角猪の一頭が周囲をキョロキョロと見回し始めた。
………これ以上は難しいな。
無言でティファに合図を送ると、頷いて詠唱を始めた。
僕も魔術を使う準備をする。
……よし、今でしょ!!
ティファの詠唱が完了すると共に、僕も土魔術を発動。
一角猪の周囲から地面が削られ、土壁が盛り上がっていく。
あるものは一角猪同士を分断し、あるものは腹部を、顎を、脚を、突き上げる。
突然の出来事に動揺する一角猪。
それを見てエルが声を上げる。
「っしゃあ、行くぜ!!!」
そしてエルとリーナが武器を抜きながら走り出す。
あっ……エルが余裕でリーナに抜かれたー。
やや遅れて、土壁をあらかた作り終わった僕も走り出す。細かい調節はティファに任せよう。
真っ先に土壁の前に躍り出たリーナは、登り易いように僕が作っておいた階段をスルーし、身長よりある土壁に一っ飛びで乗った。
あ……れ………?
その次に続いたエルは階段を登って土壁の上に。
お、おう………。
エルが追いつく直前に、リーナは一角猪が大体1体ずつに分けられた土壁の内側に飛び降りていく。
同時に一角猪の悲鳴が聞こえる。
僕が土壁の上に着いて下を見ると、首筋に数カ所傷を負った一角猪とリーナが対峙しているのが見えた。
急所を斬りつけたのに終わっていないということは、そこそこ皮が堅いからか。
次はエルが飛び降りていった。
大剣を上段から、全体重を乗せて切りかかる。
一角猪が察知したからか少し身体を捻る。
一撃で仕留めるとはいかなかったものの、振り下ろした大剣は前脚の肩を捉え、着地後すぐに出した刺突はわき腹に刺さる。
一角猪は角を振って反撃しようとするが、エルは大剣の腹でそれを受け流した。
さて、僕も取り掛からないとな。
土壁を壊そうと、突進を仕掛けた一角猪の動きが止まったのに合わせ、真上から飛びかかる。
刺突で急所を突き、出来る限り一撃で済ませたい。
双剣を首筋に突き立てる―――つもりだったが、危険を感じたのか一角猪は右側に飛び退いた。
しかし只では逃がさない。右手の剣の軌道を変え、前脚後部から背中側にかけて斜めに斬り上げる。
………やはり皮が堅い。
でもまあ、体重が乗ればいけるだろう。
体勢を立て直し、一角猪を見る。
斬られたことをほぼ気にしていないかのように、こちらに体の正面を向けて後ろ脚で地面を蹴って………
……突進!!
一角猪の体が一瞬沈み込み、すぐに脚を蹴りだした。
思ったより速い―――が、避けられないほどではない。
左前に身体を投げ出すと、僕がいた場所をトップスピードで一角猪が通り過ぎ、土壁に衝突した。
速やかに反撃に出る。
一角猪との距離を詰め、右の脇腹に双剣を叩き込む。
双剣は脇腹に深く突き刺さり、一角猪は悲鳴を上げながらがむしゃらに体を揺する。
「っく……!」
双剣を引き抜くのが間に合わず、引っ張られるがままに僕は土壁に激突した。
ぶつかった右肩から鈍い痛みがくるが、骨には響いていないようだ。
……まずい、今ので武器を手放してしまった。
なら、魔術で………。
そう思ったのとほぼ同時だろうか。
―――身体の右側を凄まじい衝撃が襲った。
「がぁっ!?」
何故??一角猪は目の前にいるのに………!?
易々と身体が宙を舞う。まるで乗用車に跳ねられたかのようだ。
ギリギリ、……なんとか受け身だけでも取る。
視線を上げると、そこには疑問を晴らすように2体の一角猪が居た。
「隣から入って………いっっ…つう…!!」
身体を起こした瞬間、右腕に激痛がはしる。
―――上腕骨が折れてる―――??
それだけではなく、身体のあちこちから打撲の痛みが襲ってくる。
ヤバい。完全にピンチ。
…………と、思いきや、一角猪の動きは一様に止まっている。
まるで上から何かに押さえつけられているかのように―――。
「………ナイスタイミングだよ、ティファ」
十中八九、重力魔術だろう。もう実戦で実践(駄洒落のつもりじゃない)するとは流石だ。
痛む身体に鞭打ち、ポケットから銅貨を取り出す。
それをコイントスの要領で真上に弾き、雷魔術を発動させる。
そして、
「………レー〇ガン……」そう呟きながら、落ちてきた銅貨を(恨みを込めながら)射出。
砲弾と変わった銅貨は一条の光と化し、1体の一角猪を貫く。
腹に大穴を開けた一角猪は血を噴出させながら、その体を地に沈めていく。
残る1体は最初に戦っていた個体。
脇腹に剣が1本刺さり、重力魔術を受けているために膝をつく姿はもはや満身創痍である。
風魔術で風の刃を形成し、放つ。
刃は狙い通り首筋の頸動脈を捉え、一角猪は血を吹き上げながら崩れ落ちた。
「………あっぶなー。ティファのサポート無かったら死んでたよ、ホント……」
安堵感からそんな言葉が出る。
(あ………証拠隠滅…もとい、治療しとかないと何言われるか…。)
かなり痛いし即治したい。と思い、スキルを発動させた。
少しして痛みで気付いたけど、肋骨も1本逝ってました。
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
治療を済ませ、土壁を元の平らな地面に戻し始めると、やや遅れてティファもその作業を開始した。
他も終わったか。
土壁が低くなっていき、横たわる一角猪の骸と皆の姿が見えてくる。
「みんな、お疲れー。」
リーナが声をかけてくる。
「おつかれさま。ティファ、支援ありがとう」
「うん、役に立てて良かった」
「あー、悪いけど誰か回復魔術かけてくれ。結構打ち身が……」
「あ、私がかけるね。………リュー、自分の怪我ちゃんと治療した?」
えっ。
なんで怪我したって気付いたの……?
「なんでってそりゃ、服は破れてるし歩き方もいつもとちょっと違うから、気付くわよ?」
「心読まれた……!?」
「ううん、顔に出てる」
ああ………そう……。
「骨折の治療は済んだけど、他の打撲した所が治療しにく「骨折!?」い所が………うん、それはもう大丈夫だよ……?」
「でも、打撲はしてるんでしょ?」
「うん……エルが終わったら治療お願い。それまでは一角猪の角を切り取る作業をしとくから」
そう言うと、手伝う、と呟いたティファがついてきた。
角の回収が終わり、リーナに打撲(特に背中)の治療をしてもらう。
「あんまり……無理しないでね…?」
治療しながらリーナが話しかけてくる。
「んー……今回は無理した訳じゃなくて、ちょっとした予想外の出来事が起きたっていうか……」
「それでも……私はリューが傷つくのは見たくないよ……!」
こんなに心配してくれるなんて……
「リーナ………」
「リュー……。」
「あー、イチャついてるところ悪いんだが………」
「「イチャついてないよ!!!」」
あ、ハモった。
「………なんか地鳴りが聞こえねえか……?」
地鳴り………?
耳を澄ませてみると……確かに聞こえる。何か巨大なものが走るような音……が……?
「おい、これ近付いてきてるよな……!?」
「私にも……そう聞こえる……。」
「………っ!?索敵に……何これ!?デカッ!?」
索敵を発動させると、範囲内に丁度地鳴りの原因が入ったところだった。
「………なんかやべえ、逃げるぞ!!」
エルの一声で僕達はすぐに走り出した。
走りながら、スキル鷹目を使う。片目だけ瞑って視点を変更すると………
―――そこには黒い巨体。四つ足の魔物が木々を薙ぎ倒しながら走ってくる。
全体の姿を簡単に言うと、まるでクジラに脚をつけたような――――
「………まさか……………クロナガスクジラ………!!?」
恐怖が後ろから迫っていた―――。
次の更新は忘れ去った頃にやってくるかもしれません……。




