第1話 本
3部分目が1話って…
ぼくの名前はリュー・ベテルギル。としは4さい。
山のなかのちいさないえに、かあさまとふたりで住んでいます。
きょうは家のちかくで、たくさんあそびました。たくさんあそんだので、とてもつかれました。だからいまから、かあさまの所に行って、えほんを読んでもらおうと思っています。
「かあさまー。はいってもいい?」
かあさまのお部屋について、ぼくはかあさまに声をかけました。
「リュー。いいわよ、入って。」
かあさまにはいっていいと言われたので、おいてある踏み台にのって、精いっぱいせのびをしてお部屋のどあをあけました。
かあさまはお薬をつくるおしごと中は、ぼくをお部屋にいれないようにしているので、ぼくはいつも、はいっていいかを聞きます。
お部屋にはいると、かあさまはソファに座ってあみものをしていました。
「かあさま。えほん読んで?」
ぼくはかあさまのちかくに行って、かあさまを見上げながらいいました。
「…え、ええ。分かったわ。じゃあ、一緒に本を選びましょうか?」
かあさまはあみものをおいて、ぼくをだっこしました。そのまま、ほんだなの方へ歩いていきます。
「どれにしましょうか?いつも読んでいるけど、これ?」
「うーん、今日はあたらしいのがいいな」
「新しい…新しい…これはこの前読んだわね?これも……あ、これはどうかしら?」
「うん、それにする!……ねえかあさま、そっちのほんはなに?」
かあさまが取ったえほんのとなりに、5センチくらいの厚さのほんがありました。ぼくはそんな分厚いほんを読んだことはなかったけど、なんとなくそのほんの事がきになりました。
「え?…ああ、この本が気になるの?」
「うん。それはなんのほんなの?」
「これは…私にもよくわからないわ。何も書いていない本なの。見てみる?」
なにも書いていない?ぼくはますます、そのほんが気になりました。
「うん。見てみたい」
ぼくがそう言うと、かあさまはえほんとそのほんを持ってソファに行きました。ぼくはかあさまについていって、かあさまのおヒザの上にすわりました。
「ほら、リュー。この本、何も書いてないでしょう?」
かあさまはそう言うと、分厚いほんをなんページかめくりました。
なにも書いてない。かあさまはそう言いました。でも、ぼくにはなにかが見えました。
書いてあったのは、文字のようなものでした。でも、見たこともない文字です。ぼくはそのほんの文字にさわってみることにしました。
∵トリシア・ベテルギルside∵
私が自分の部屋でマフラーを編んでいると、リューが部屋の前にやってきて、入っていいかと私に声を掛けた。
私が入ってもいいと言うと、リューは自分でドアを開け、私の元にやってきて上目遣いで言った。「かあさま。えほん読んで?」と。
……こんな可愛くお願いされたら、断れるわけないじゃない…!
息子のかわいさに悶絶しそうになりながらも、なんとか踏みとどまり、一緒に本を選びましょう、と返事をする。
「……あ、これはどうかしら?」
リューを抱き上げたまま絵本を選ぶ。確かこれはまだ読んだことがなかったハズだ。
「うん、それにする!……ねえかあさま、そっちのほんはなに?」
それにする、と言ったが、リューは今取った隣の本も気になるようだ。
…これは、リューのおくるみに入ってたあの…何も書いてない本…?……まあ、何も書いていない上に魔力の気配もないし、魔導書って事もないわよね……。
絵本と一緒にその本を持っていく。ソファに座って、リューをヒザの上に座らせた。
「ほら、リュー。この本、何も書いてないでしょ?」
私はそう言ってリューの顔を覗く。
……!?リューが真剣な顔で本を見ている。何も書いてない…ハズなのに……!?
リューが手を伸ばし、本に触った。
――――そしてリューが倒れた。