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第18話 怪しい依頼?


なんかこの話は流れがパッと決まって、スルスル書けました。




「フリーランクに……金貨10枚……。この依頼、怪しすぎません……!?」


フリーランクというのは文字通り、請ける人のランクは問わない、というものであり、並大抵の事ではギルドもそれを許可しない。


「それが、リンコマの領主の依頼なんですよ、それ。」


リンコマの………領主……??


「………どういうことですか……?」


「詳細が聞きたいならクエストを請けてくださいね?じゃないと話せないんです。フリーランクの規則なので……」


「……まあ、僕も治癒魔術とか使えますから………リーナとティファと、3人で請けます。」


僕がそう言うと、2人ともサッとギルドカードを出し、僕もそれに続く。


「あ………エルは今回出番無いけど……どうする?お留守番しとく?」


「俺は子供かなんかか!!………まあ、一応お前らについて行くよ。仲間だからな」


「……そっか、ちゃんと金魚……じゃない、魚のフンみたいについてきてね?」


「俺の扱い酷くねえ!?」


「……それでセレスさん、詳細を聞かせてください。」


そう言うと、セレスさんは沈痛な表情で語り始めた。


「………事の発端は、一週間前。領主であるクラーク・ウォーカー……様は、娘であるミラ様と共に東の森、……正確には南東だったそうですが、そこに入ったそうです。


魔物除けの魔道具を持った二人はしばらく散歩を続けていたそうですが、その時ミラ様は泉を見つけ、その水を飲んだらしいのです。………そして……ミラ様は倒れました。」


「それで………治癒魔術、ですか………?」


ここまで聞くと、わざわざギルドに依頼するまでもないように思える。


「………いえ、それだけでは無かったのです。ミラ様は次の日目覚めましたが、彼女の身体にはある異変が起きていました。……なんと、足先が結晶化していたんですよ……!」


足先が結晶化……!?


「当然クラーク様は医師を呼び、高位の治癒魔術師を呼び、呪術師も呼びましたが……どれも結果は失敗。そして4日前、クラーク様はギルドにこの依頼を出しました。」


「…………」


「今までに50程の人達がこのクエストを請けましたが、全て効果無し。その間にも症状は深刻化し、クラーク様もギルド側も焦りを隠せない状態です」


……泉……結晶化……治癒魔術は効果無し……症状は急性……


「…………領主さんの家はどこですか……?」


「!!………治す自信があるんですか……?」


僕は首を横に振る。


「自信なんてありません。ただ、無理だと見限って見捨てるなんて事は……絶対にしたくないんですよ」


「………そう、ですか……。……では、こちらが地図と、受託書です」


セレスさんからそれらを受け取る。


「………それと……例え治せなくても、気には病まないようにしてくださいね……。」


小さく頷き、僕達はギルドを出た。





∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵





領主の邸宅は街の北側にあった。


邸宅前には番兵がおり、受託書を見せると邸宅に招き入れられた。……ちなみにその際、武器の類は預かられ、使用人に案内されるがままに廊下を進んでゆく。


(………しっかし広いなーー………こんな家初めて見た………)


リーナの方を一瞥すると、僕と同様に視線が泳いでいる。それに対してエル達は至って平然としていた。


「こちらがミラ様のお部屋になります」


使用人が部屋の扉の前で立ち止まる。


使用人がノックすると、内側からドアが開いた。


どうぞ、と促されて中に入る。部屋のあちこちにはぬいぐるみやらおもちゃやら、色々な物が置いてあり、中央部にはキングサイズのベッドが鎮座していて、そこで1人の少女が眠っていた。


ベッドの横に座っていた人物がよろよろと立ち上がる。


「ああ………クエストを………請けてここに来たんですね……?」


顔からして30代半ばといった風のその男性(彼がクラークさんだろう)は、相当にやつれていた。顔は青白く、頬はこけ、目の下には大きなクマがある。一見してみるとまるで死人のようだ。


悲壮感の浮かぶ男性に話しかける。


「はい。僕と彼女たち、3人がこのクエストを請けました。」


「そうですか………今までに63人の冒険者………7名の医師と9名の治癒魔術師……3名の呪術師がここを訪れましたが………」


表情をさらに悲痛なものに変えるクラークさん。


「………じゃあ、早速始めましょうか。リーナ、ティファ、僕、の順でやっていこうか」


重い空気になりそうな感じだったので、早めに進めようと思い、2人に促した。


リーナがベッドに近づくと、使用人がやってきて掛け布団を捲った。


「…………!」


ミラの足を形作っていたのは、薄緑色の結晶だった。血の気はなく、まるで彫像。


………話には聞いていたけど……実際見るとなんかこう………胸がざわざわする感じ。


意を決した、リーナがミラに手をかざし、詠唱を始める。


『光の力において、彼の者の肉体を癒やしたまえ。ヒール!』


手元が薄く発光する…………が、ミラの足は結晶のまま。


リーナ………とクラークさんが無言でうなだれる。


「次、私」


ティファがそういって歩み出す。


「……私も無理かもね」


ぼそりと、クラークさんに聞こえないくらいの声量で、ティファが呟いた………。


『……光は我が力となり、彼の者を癒やし苦痛を和らげよ。ハイ・ヒール』


ハイ・ヒール………。ヒールに比べて効果はグンと高く、魔力量が多くないと使えない治癒魔術だ。


ティファの手元が強い光を放つ。



………が。またしてもミラの足には変化が見られなかった。


「ああ………また……また……!!またダメだったのか……!!なぜ………なぜ娘が……!!」


クラークさんがそれを見て騒ぎ始める。使用人たちは落ち着くように言っているが軽く錯乱したような状態だ。


…………今の内にやっちゃうか。


ヒールが効かない、ということは病気のようなものじゃない。……しかし…状態異常だったとしても、ヒールで多少は緩和されるはずなんだけど。


ミラに近づき、スキル『鑑定』を発動。



ミラ・ウォーカー ♀ 8歳

人間族


推定魔力量:???/132


状態《結晶化》

自己生成以外の魔力が多量に取り込まれ、拒絶反応を起こしている状態。




自己生成以外の魔力………あ、泉の水に多量の魔力が含まれていたってこと……??………魔術じゃ無理そうだし、スキルに頼ろう………。



「スキル:完全治療、オン。対象、ミラ」


ミラの足に触れながらそう言う。すると、じわりと足に肌の色が戻ってくる。…………しっかし……これだいぶ魔力持って行かれるなあ………。


このスキルの消費魔力は、対象者の症状の深刻さによって増減する。現時点で10分の1以上持って行かれている。………少ないと思う……?800は消費してるんだよ?リーナなら気絶するレベルだよ?


……ていうか、こんなに消費が多いのは、僕の魔力でミラの足にある余剰分の魔力を剥がし落としてるから、みたい。さっきから空中に光の粒子が散っている。……これ、魔力なんだろうなあ………あー、勿体無い。


2、3分後、ミラの治療が終わった。


「あ、治ったみたいですよ」


ふぅ、と息をつき、後ろにいるクラークさん達にそう言う。


………あれ、なんかみんな固まってない……?………まあ、ミラの周りは光の粒子が飛び交ってるから、だいぶ不思議な空間な訳だけど。


放心気味だったクラークさんが近づき。


「ミラ………?……ミラ………!!ミラあああぁぁぁぁ!!!」


ミラを抱き締めた。


「良かった……!!良かったぁ………!!!ミラあ………!!」



「おとう……さま………??………ねえ、苦しいよぉ……。」


抱擁の激しさに、ミラが起きたようだ。


「ミラ…!!ああ………起きてくれたんだね……!!本当に治ったんだね………!!」


………ん?……あ、意識不明だったのか……?


「おとうさま………ミラ、起きたけど……まだちょっと眠たいの……。」


「あ、ああ……。そうか、………今はゆっくりお休み、ミラ……」


「うん…おやすみなさい……」


ミラは再び寝入った。


………うん、良かった。あ、一応……ちゃんと治ってるか確認しとこう。鑑定発動。



ミラ・ウォーカー ♀ 8歳

人間族


推定魔力量:1259/1259






…………………………ん………………??


あ、あれ??え!?



………はあああああ!?



……………なんか………逆に良い負荷になっちゃった感じ………!?


こんな爆発的に魔力量が増えるなんて………この歳でこれはチート級なんじゃ……!?




数年後、彼女が「リンコマの大魔術師」としてその名を轟かせることになるという事を、リューはまだ知らない。





∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵





「本当に………ありがとうございました……!!」


帰りを見送りに来たクラークさんが僕に深く頭を下げる。


「いえいえ……頭を上げて下さい。僕自身、正直言って治せるかどうか分からなかったんですから。………あ、あの結晶化は自己生成したもの以外の魔力、ここでは泉の水に溶け込んでいたみたいですが、それを多量に取り込んだせいで起きたみたいです。彼女から出てきた光の粒子は多分魔力でしょうね。」


「………なるほど……。確かにあの光の粒子は泉の煌めきと酷似していましたね……。………本当にお礼をしても足りないくらいの成果を上げていただいて……なんと言ったらよいのか……。……そうだ、もっと礼をさせて下さい………!!」


「いやいや。ホントにいいんですって。ほら、金貨10枚も貰えたんですから。」


「いえ!!金貨10枚程度では足りないのです!!何か………何か私に要求して下さい!!何でも構いませんから!!」


私に要求して下さいって………なにそのMっぽい発言。


「…………じゃあ、ミラをお嫁に……いたっ!!リーナ何で蹴るの!?」


「ミラを、ですか。分かりました、喜んでお受け」


「あああああっ!!冗談ですって!!!流して下さい!!僕ロリコンの気は無いですから……!」


「……ろり……こん?」


リーナが不思議そうな顔をしている。…………説明はしないからね。


「………じゃあ改めて、要求を3つほどします」


「はい。どうぞ何なりと……!!」


………なんか、僕が無理難題でもふっかけるとか思ってるのかな?


「まず、一つ目。ちゃんとお触れを出して、他にも同じ症状を発症した人がいないかどうか調べること。


二つ目。もし発症者が居たら、僕に連絡をすること。あ、僕達は3日後の朝には王都に出発するので、それ以降の連絡は王都のギルドにでもお願いします。


そして三つ目。クラークさん、僕達が帰ったらちゃんとご飯を食べて、すぐ寝て下さい。………娘さんに嫌われちゃいますよ?」


クラークさんが口を空け、目にはうっすら涙を浮かべている。…………止めて欲しいなあ、その顔。


「………なんと……慈悲深いお言葉……!!分かりました、全て抜かりなく行います!!………おっと、大恩人の名を聞き忘れる所でしたね、今更ですがお名前は……?」


「名乗るほどの者では………とか言いたいですけど、リュー・ベテルギルといいます。」


「リュー殿、ですか。………このご恩は一生忘れません……今後何かあれば申しつけて下さい!!」


「はは、忘れて下さいよ。それじゃあ、僕達はもう行きますね。」


「リュー殿、お元気で…!!」


「じゃあ、失礼します。」軽く一礼し、その場を後にした。





∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵





「………で、リュー。説明はしてくれるんだろうな?」


え?


「結局私は役に立たなかった……」


「最初からリューがやればよかったんじゃない……」



あれ??……なんかみんな不機嫌??リーナなんてウォーカー親子のやり取り見て眼を潤ませてたのに……?



…………これはもう、スキルについて打ち明けるしかないか。一部。




次話かその次を、まだ詳細を紹介していないスキルの解説にしようと思います。




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