表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/52

第0話 西の森

-1話ときて0話です。主人公視点になることはない話です。



ふと疑問に思ったのですが、地下1階と地上1階があって0階が無いのはどうしてなんでしょうか。






……どうでもいいですね。



昨日降った雪がまだ解けきっておらず、森閑とした辺り一帯は気温以上に肌寒く感じる。


今日私は、久しぶりに西の森の奥深くに薬草を採りに来ていた。


この薬草は一年中、もちろん冬でも問題なく生い茂り、いつでも使えるということから汎用性が高いものだ。


薬に使う分の薬草を採り終わり、そろそろ帰ろうかと算段をつけていた時の事だった。


「…?」


…聞き違いだろうか…??今、何かの声が聞こえた気がする。


(いや、聞き違いじゃない)


そう思った私は、声がしたと思われる、森の最深部の方へ向かった。






∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵






しばらく歩いていると、声は大きくなってきた。ギャア、ギャア、と、鳴き声のように聞こえる。


(…もし魔物だったら危ないな)


ふとそう思い、腰に差していた採集用のナイフを引き抜く。これでもかつては毎日のように魔物と闘っていたし、いざという時は魔術を使えばいい。命の危険は免れるだろう。思考を巡らせ辺りを警戒しながら更に進む。


(………っ!?…これ…魔物の鳴き声なんかじゃない…?もしかして…赤子…!?)


目標が近くなってくると、声が鮮明に聞こえてくるようになり、私はそれが何であるかをようやく認識し始めた。


―――これは赤子の泣き声だ―――。そのことを完全に理解した私は、気が付くと走り出していた。






∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵






1分もせずに声の元に辿り着く。大きな切り株の上にそっと置かれた赤子を見て、私は驚愕した。


「これは……人間の赤子……!?」


この森は他種族に荒らされぬよう、エルフが結界を掛けているはずだ。例えば赤子でも、人間が入れる筈がない。こんな事ありえない―――


と、私に理解できない事象について考えても無駄だろう。とりあえずはこの子を泣き止ませたい。

おくるみに包まれている赤子を抱き上げると、すぐに泣き止んだ。


「あら、泣き止んだ…。利口な子ね。……久しぶりに抱いたけれど、やっぱり赤ちゃんは可愛いわね…。」


自然と笑みがこぼれる。


「ふふ……可愛い子…。…ん……?これは何かしら…?」


おくるみの中に何か硬い物が入っている。取り出してみるとそれは本だった。


試しに何ページかめくってみるが、何も書いていないようだ。


「白紙…普通の本じゃない…?……まあ、気にしてる暇はないか。」


いつからこの赤子はここに居たのだろうか。こんなに寒い中ではすぐに凍えてしまうだろう。それに、薬草は新鮮なうちに加工しないと、薬としての効果が弱くなる。できるだけ急いで帰らなければ。


「……それに……この子はこの森にいると厄介なことになりそうだしね」



―――よし、この子は私が育てよう。謎は多いが、捨て子なら私の子にしてしまっても問題は無いだろう。


―――それになにより、この子は天使のように可愛い。



いつの間にか眠ってしまった赤子を起こさないように、しかしなるべく急いで私は森の出口に向かった。

次の話がいよいよ1話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ