第16話 僕は1人分のはず。
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まだまだですがこれからもよろしくお願いします。
「それじゃあ、クエスト達成と俺達の出会いに………乾杯!!!」
「うん、乾杯!!」
「乾杯」
「あはは、水だから格好つかないけど、カンパーイ!」
音を鳴らし、コップをぶつけ合う。
オークの討伐を終えてギルドで報告がてらオークの牙等を売り、宿を移していると時刻は夕方になっていた。………え?時間掛かり過ぎだって?………2人部屋に泊まっていることを2人に問い詰められて……お察し下さい。
今居るのはティファとエルが泊まっている宿の食堂で、エルが乾杯の音頭を取っていたところだった。
「そういえば2人共、荷物運ぶの手伝ってくれてありがとう」
「あ、私の分もありがと」
そう言って、リーナと共に軽く頭を下げる。
「いや、そんな礼言われる程の事じゃねえって。俺達みたいな冒険者は必然的に宿を渡り歩いたりしなきゃなんねえからな、困った時はお互い様だっての。」
「………そういえばエルの目標のひとつって、王都に家を建てる事だったわね」
ティファがぼそりと呟く。
「へえ、王都に家ね。それじゃあ、結構大きいクエストをこなしていかないとお金貯まらないわね?」
リーナがそう言うが、どのくらいお金が居るのかなんて僕にはよく分からない。そんな住宅情報なんて知る機会もないし。とりあえず聞いてみることにした。
「リーナ、王都に家を建てるのって普通いくらぐらい掛かるの?」
「そうね………空き家を買うなら2、3000万だろうけど、………一から建てるなら億越えるんじゃないかな。」
億か………。まあ、そりゃそうか。中枢都市に家を建てるんだし。
「うわ、億かー………ドラゴンの討伐何回分だよ、それ。」
……討伐………。
「………エル、出来ればドラゴンは相手にしたくないんだけど………。」
「へ?………ああ、まあ………そりゃあ俺もドラゴンは少しばかり恐いけど―――」
「違うの、リューが言いたいのはそう言う事じゃないと思う。」
エルが言おうとした事をリーナが遮る。
「……??」
「リューの目標はさ、『ドラゴンと話すこと』らしいの。だから殺したくはない。でしょ?」
リーナがこちらに目を向けるので、無言ながらも頷く。
「ドラゴンと話す??」
「……変な目標…」
エルは驚いたように、ティファは呆れたように声を洩らす。
「変とか言わないでよ………ドラゴンってロマンじゃん!?」
「まあそうだが……」
「わけ分かんない…」
「リューってだいぶ変な子よね…。」
エルは一応判ってくれるけど女子2人酷い………
「でもさ、現実的に考えて……ドラゴンって話すのか……?」
それは………
「わからないけど………とりあえず相互の翻訳はできるから」
「お?リュー、お前魔道具でも持ってんのか?」
「え?いや、持ってないけど………翻訳自体は問題ないよ」
「は?どういう意味だ?」
……そりゃあ不思議だよね。魔道具も持ってないのに翻訳はできるって……普通におかしいし。
「まあ、これも秘密だね。あんまり言及はしないで」
スキル関連の事は大体秘密にしとこう……。……魔導書はちょっと隠しきれそうにないけど……
「またそれか……。………まあ、会って数時間だから俺達が信用出来ないのは分かるけど………」
「いやいや、これも親にも秘密にしてあるんだって。信用してるとかしてないとか関係ないからね?」
「そう……か………。まあ、いつか話してくれよ?」
「そうだね。きっといつか……話せるときが来たら、その時に話すよ。」
そう、きっといつか―――全てを話そう。
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その翌日から一週間、僕達4人は毎日2、3個のクエストをこなしていき、ようやく連携も取れるようになってきた。……そういえば、僕が魔術を使ったら驚かれた。それも隠してたのか、と言われたけど、単に言う機会がなかったの忘れていただけ、と言ったら苦笑いされた……。
それから、僕のギルドランクもEになり、他3人はDランクのクエストをあとひとつ達成すればランクアップ、という状況になっている。
「なあ、これやってみねえか?」
ギルドの受付でエルが指差したクエストは、商人の馬車の護衛だった。
「護衛?………4人で大丈夫?」
ティファが不安を口に出す。
「まあ、普通護衛は5人以上が当たり前だが………1、2、3、4、5人。ほら、大丈夫だろ」
…………ちょっと待て。今僕の所で2回カウントしたよね……??
「エル??何で僕2人分!?」
「ん?剣術も魔術も使えて……その上まだ隠し玉があるんだろ?2人分でも足りないくらいだろ。なあ?」
「そうね、そのくらい余裕でこなしてくれるでしょ?」
リーナ……??
「………ちゃんと働いてね、3人分」
ティファ!増えてる!?
「って事で、これお願いします」
エルやめて!!受付嬢にお願いしないで!?
「………大丈夫でしょうか?」
不安げな受付嬢。
「すいませんやっぱり無しでお願いし「大丈夫です。」
「エル………ホントにやめようよ?2人分とか無理だって……。」
リーナがポンと僕の肩に手を置いて言う。
「大丈夫、リューならやれる。……私達もちゃんとサポートするからさ。………だから、頑張って?4人分」
「増えてるーーーー!!?」
………大変なクエストになりそうだ。
次話から数話ほど移動編の予定です。
GW中の投稿は……多分できません