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第9話 初クエスト

翌日、夕方に寝たせいか、日の出前に目が覚めた。…いや、本当は関係ないけど。


うわ……暗い……などと思いながら、まだ荷解きをしていないことに気が付く。


登山家のようなリュックから、野営に必要なテントなどを下ろしていく。


「あ、そういえばあれ読んでなかったっけ」


大体整理を終えたところで気付く。昨日渡された冊子にまだ一切目を通していなかったということに。


ざっと読んでみた限りでは、内容はこのようなものだった。


・ギルドカードの色はSSが黒、SとAが金、BとCが銀でD~Gが銅。

・紛失時の再発行にかかる金額は50000ニル。

・クエストを受けられるのは自分のランクの上下1ランクのものまで。

・昇格は一定数もしくは一定難度のクエストを複数個達成することでなされる。

・降格は4つ連続でクエストを失敗した場合、もしくは問題行動を起こした場合になされる。


まあ他にも細々とした注意はあったが、重要なものはこれくらいだろう。


あ、説明し忘れていたけど、『ニル』とはここの通貨のこと。円に換算するとほぼ同じか少し安いくらいだ。



そうこうしている間に、空が明るくなり、日が昇ってきたようだ。


少し動こう、と思い、剣を腰からはずして軽装で部屋を出た。


フロント(と言えるのかわからない)に行くと、朝早いというのに中年の女性がいたので、鍵を預けて外に出た。


宿屋の横には小ぢんまりとした空き地があった。適当な長さの木の枝を2本拾って振る。相手がいると想定したイメージトレーニング。相手は母さま。枝を振るって攻撃を仕掛けたり、攻撃を避けたり。


10分程度動きまわり、さすがに疲れてきたので休憩を入れる。


「あ、ここにいたんだ」


座っていると声を掛けられる。振り返ると、リーナが立っていた。


「リーナおはよー。」


「お、おはよう。鍵置いてどこかに行ったって、女将さんが言ってたからビックリしたよ。何してたの?」


「ああ、ごめん。ちょっと鍛錬、かな」


リーナが少し驚いたような顔をする。


「へえ、1人でって事は素振りとか?」


「いや、イメージトレーニング」


何それ?と首を傾げるリーナ。……え?普通やらないの?


朝ごはんに行こう、と言われたのでついていく。




朝食を食べながら今日の予定について話した。


「今日はとりあえず低めなランクの依頼をこなしましょうか。やっぱり最初のうちは採集か雑用が堅実よ?」


「あ、うん。…いや、でも、討伐でも大丈夫だよ?冒険者の醍醐味なわけだから」


「そんな事言って、怪我したら元も子もないと思うけど?」


「それはほら、いざとなったら先輩であるリーナにどうにかしてもらえば大丈夫だし。そうなったら次からは安全策で行くからさ」


「そ、そう?なら…討伐でも……」


「よし、じゃあ決定で!!」


おだてて押し切ってみたらすんなりと成功して、正直少し驚いている。





∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵





朝食後、クエストを請けるべくギルドに来ていた。

受付に行くと、昨日の登録時にいた受付と同じ人だった。


「ようこそ……って昨日の…リューくんでしたっけ。あのあと大丈夫でしたか?」


「あ、はい。逃げ切りました。……ていうかあの人たち……声掛ける相手が僕っておかしいんですけど……って、見てたなら止めてくださいよ、えっと……」


「私はセレス・クリストです。以後宜しくお願いします。あの人たちは普段から素行が悪くて問題になってるんですが……まあ、リューくんが男の子だと分かれば大丈夫かなあと思いまして」


「いや、そういう問題じゃないと思います。………じゃなくて、クエスト請けたいんですけど」


「ええと……初クエストだし、採集か雑用がいいですよね?」


あ、やっぱり最初は普通討伐じゃないのかなあ……。


「いえ、できれば討伐をやりたいです」


「え……討伐ですか…??それだと、Gランクでは討伐は無いのでFランクになるんですが…大丈夫ですか?」


「はい。それでいいです。いざとなったらリーナを頼りますから」


笑いながら指差す。


「ああ、それならきっと大丈夫ですね。えっと……手近なものだとゴブリンの討伐がありますね。」


「じゃあ、それでお願いします。」


「分かりました。では、ギルドカードを」


ギルドカードを渡すと、魔道具に差し込んで何か手続きをして返される。


「手続き完了です。場所は街の西部の森、討伐数は15、期間は3日です。質問等はありますか?」


「いえ、じゃあいってきます。」


「はい、がんばってください。」


踵を返し、ギルドを出た。





∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵





「ねえ、なんでさっきから黙ってるの?」


クエストを請けて街の西側、昨日僕が入ってきた門に向かいながらリーナに聞いてみる。


「えっ……と……なんかリューが私を過大評価してるような気がして……。」


「え……?何って?……あ、そういえばリーナの戦型って?」


「わ、私の戦型は短刀での近接戦闘。投擲することもあるけど」


「へえ、ナイフかぁ。あ、僕は二刀流、と魔術を少し」


「え、攻撃魔術が使えるの?……って、もう門に着いたわね。ギルドカード出さないと」


リーナはそう言ってカードを門番に渡していた。やり方がよく分からなかったので見習ってカードを渡す。身分の確認をしてカードを返される。


「さっきの話の続きだけど、私は魔術の才能はあんまり無いみたいでちょっとした治癒魔術しか使えないから、支援とかは期待しないでね?」


「そっか、じゃあリーナは近接戦闘に専念だね。」


「うん、それと、戦闘時はなるべく挟撃ね?でないと2人でやる意味がほとんどなくなるから」


「了解。っと、もう森か」


「そうね。ここからは警戒しておかないと」


小声で索敵を発動しておく。


「そういえば、リューってどこから来たの?あ、私は南の山の麓にある小さな村から来たんだけど」


「僕はこの森の向こう……ここから100キロくらい行った所、エルフの森の近くに住んでたね」


リーナが驚愕の表情を浮かべる。


「エ、エルフの森!?あの辺り一帯って多種族は許可なく入れないようになってるんじゃないの!?」


「え……そうなの?僕は母がエルフだからかな、そういう事はなかったよ」


「……もしかしてリューってハーフエルフ……?」


え?


「いや違うよ、純粋な人間。捨て子だったみたいで、拾って貰ったんだ」


まあ、実際は幼児化して異世界から来たんだけど。


「そう……だったの。あ、もしかしてリューはお母さんに魔術を習ったの?」


「うん、魔術だけじゃなくて戦いに必要な事は母に………っと、リーナ。左前方から魔物が接近中だよ。数は9、距離40…35……30…」


「え、え?分かるの??って9ってナニソレ!?」


ん?数的にヤバいのかな?多分ゴブリンだから大丈夫だと思うけど……。


「え?ヤバいの?」


「9もいたらかなり連携の取れた動きをするだろうし、正直2人で相手するのは……!」


「あっ、来た」


ギィィィイイ!!ギェェェエエ!!ゴアアァァァァアア!!


色んな鳴き声が鳴り響き、ゴブリンが飛び出してくる。


「うっわ……わ、私がなんとかしないと……」


不安げながらもナイフを抜くリーナ。


「あ、ちょっと下がってて。僕がやるから」


「え?」


若干面倒なので一気に終わらせよう。リーナを下がらせて指をパチンと鳴らす。某大佐的な、ね。パッチンパッチン指パッチンとな。


空気中のチリを導火線代わりに火種を飛ばす。それがゴブリン達に届くと焔が爆ぜる。


ゴウッ!!!!!


爆炎とともにゴブリンが炎に包まれ、焼け死んでいく。


「ふぅ……あ、燃え移ってる」


木に火がついてしまったので水魔術で消火。


「さて、次行こうか」


リーナに声を掛けるも、呆然とした様子だ。


「………リューって………何者……!?」



え?



ただの異世界人だよ。

8/25 SSランクのカードの色を白金から黒へ変更。銀とあんまり見分けがつかなそうだったので。

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