二夜
繋がっているのは
扉?
それとも…
「おはよう。」
「オッス、アキ。」
「先輩、おはようございます。」
「おっはよ〜。」
朝。
様々な声が飛び交う校門。何時も通りの光景。
昨夜の違和感なんて嘘みたいに訪れた''その日''は雨が降っているわけではなく、しかし晴れ渡っているわけでもない。空を覆うのは薄い曇。
何ら変化のない穏やかな日常。しかし唯一何時もと違ったのは、
「なぁ、北条聞いたか?」
下駄箱のところで声をかけてきた同じクラスの早水圭吾だった。
「何?お前から話しかけてくるなんて珍しいな?」
「まぁな。俺もお前に話しかけることがくるなんて、思いもしなかったよ。」
大して仲の良いわけではない本当にただのクラスメイトという存在の早水とは、片手で十分足りる程度しか話したことがない。
元々黒いはずの髪の毛の色を抜いて金髪にし、耳には何個も穴が開いてるし、身長も180cmはあるから(ちなみに俺は172cm)はっきり言って柄が悪い。
俺、結構根は真面目っ子だから、あんまり接点が無いんだよなぁ。
「で、何の用なんだよ?」
「あ、あぁ、それなんだけど…。」
そこでいきなり声のトーンを下げる早水。
自然と俺は早水に顔を近づけて内緒話の形になる。
「柊が死んだらしい。」
「っえ?」
一瞬時が止まる。
意味が解らない。否、解りたく、なかった。
俺が何も言えないでいると、早水は、
「ほら、お前がよくつるんでた原口だよ。」
と、続けてきた。
原口と柊。この条件が一致する人物は、俺の周りに一人しかいない。
でも彼奴に限って…。
「それって…しゅ」
「原口柊也の事だよ。」
嗚呼、当たってしまった。
いや、当たってしまったと言うのは少し違う。だって俺は心のどこかで理解してたのだから。
「死んだって何処で?」
俺がそう言えば、早水は驚いた様に目を見開き、そしてクククと笑った。
「嘘とか疑わないわけ?」
早水ってこんな風に笑うんだ。
俺は、そんな風にどこか他人事みたいに感じてた。
「だって本当なんだろ?」
「なんでそう思う?」
何故かと、そう聞かれても俺には答えることができない。
普通親友が死んだと言われても信じないんだろう。けど……
「昨日。」
「昨日?」
何となく、感じたんだ。日常が壊れるだろうって。
「……。」
俺は、踵を返して学校とは正反対の方向へとむかった。
「おい、何処行くんだよ!?」
早水の声が背中に聞こえたけど、俺は其れを無視して走り出した。
耳鳴りが、
していた。
風が、
運んできたんだ。
あの、
声を、
匂いを、
魂を、
行く当てなどなかった。
意思もなかった。
ただあるのは本能。
求められるから、
俺が求めてたから、
そこに在ると本能が啼いた。
其処に行けば、全てが壊れると理性が止めた。
けれど、其処に行かないと全てが消える。
消滅は、嫌だ。
『ねえ、聞いた?3組の原口がさぁ…。』
『何か右腕しか無かったんでしょう?』
『血の海だったんだって。』
『今警察が必死に探してるんだってよ。』
『バラバラなんだって。』
『あやつらは、人の肉を好むんじゃよ。』
『近づいてはいかんぞ。』
『あやつらに食われれば、死とは別の次元に逝く。』
忘却
『其れがあやつらの名じゃ。』
近づく、
だから、
「早く来よ。」
「我が元に、早く来よ。」
はあ、はあと息が切れる。後ろから早水が追ってきてる。
もう少しだ。
本能が赴くままに、
あの角をを曲がれば其処にある。
本当は小さい頃から視えていたんだ。けどその頃は怖くて仕方が無かった。だから視えないことにした。
自分は普通でいたっかた。だから、頼んだ。力を消してくれと。
でも、今はもういい。
『扉に気をつけろ。』
祖父さん、ゴメン。やっぱ無理だわ。俺には逆らえないよ。
其れが運命だから。
母さん、一寸行って来る。帰ってこれるか分かんないけど、とりあえず待っててよ。
目の前にある扉は、闇と同じ黒。
二つあるドアノブに手を掛ければギィって音と一緒に開く。
案外軽いな。
「おい、北条!!」
きっとあいつはあっちに居るんだ。
あの人も、
まるでちっちゃい星屑が地球ってでっかい星に引き寄せられるみたいに、強い引力が俺を引っ張った。
さぁ、何が待ってるんだろうな。
一つだけ確かなことは、そこは普通じゃないって事。
仕方がないだろう?いくら無視してたって聞こえるもんは聞こえるんだから。
『あぁ、やっと。』
捕まえた。
「北条!!!!」
光の洪水が俺を飲みこんだ。
さぁ、行こう。
忘却の都へ
誰もが忘れた
狭間の世界に
一寸展開が早くなってしまいました。
スランプで意味が分かんない文章に(泣)
一応こっからが本作のメインになっていきます。
今までのは、序章って感じですね。
更新が遅くなってしまうかもしれませんがここまでを読み、少しでも面白いと思っていただいたのなら待っていて下さい。
必ず書きます。
最後になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想など頂ければ当方泣いて喜びますが、本作品を読んで頂いていると思うだけでも幸せです。
本当にありがとうございました。