"糖果"
白く清潔な天井の、中央に無影灯が視える
と言うか、さっきから其れしか視えて居ない
「まだなの?」と尋ねるが、視界の真下──即ち、僕の躰の方からは、ぴちゃぴちゃとした液躰音が聴こえるばかりだ
暫くして、ようやく君の「ああ、ごめん」「メンテナンスに手こずって……ね?」と云う、言い訳
僅かに動く視界を曲げると、君は白衣をリンパ液や腸液に濡らして、僕の切り開いた腹部から引き摺り出した腑に、恍惚とした表情で愛おしげな頬擦りを繰り返して居た
最低の眺めだ
何しろ、あれを洗濯するのは僕なのだから
「これが───」
「………メンテナンスなわけ?」
嘆息する
君は、「まあまあ」と笑いながら答えると、手振りで僕に姿勢を戻すよう促す
『もしかして』と感じて意識すると、手くらいなら動かせる様だったので、僕は拳を握ると、君の頬を軽く打った
「やめなよ、恥ずかしい………」
顔を手で隠そうとしたが
今の状態の限界らしく、もう手はおろか指すら動かなかった
其れに気付いたのか
君は僕の臓器を口に含むと、歯や唇を使って激しく愛撫した
麻酔がもたらす麻痺の中で、出血が陶酔を連れて来る
君自身も、より多く血を僕の血管に吐かせる為、躰のあちこちを押したり握ったり、或いは、メスで軽く切ったりを繰り返す
次々と、全身が不可逆的に損壊されていくのを視て
僕の心の内に、絶望的な快楽の炎がゆらめいた
「気持ち良くなってんじゃない?」
君が耳元で云う
僕は瞼を降ろすと、違う、と答える
うっすらと
責めが、より激しいものになった事を感じた
「食べちゃおうかな……」
君が、僕の小腸を掴んで、いぢわるな視線を向ける
青褪めながら、僕は「其れは」「止めて」と叫んだ
腸が、舌でなぶりものにされていく
あちこちの切開箇所から、新しい血が溢れては散り始めた




