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第8話 名前で呼んで
食後の静かな時間。
なぜか凛花は、さっきよりも私の隣に近づいて座っていた。
「どうしたの?黒瀬さん」
「お姉ちゃん。私たち姉妹になったんだから、凛花って呼んでほしいな」
「凛花……?」
「そう。学校でもそう呼んでね?」
「学校では今まで通りじゃダメ?」
「ダメ!お姉ちゃんには名前で呼んでほしいの」
黒瀬さん――いや、凛花のこんなところ、今まで一度も見たことがなかった。
だからこそ、少し驚いてしまう。
まさか私が、凛花に甘えられる日が来るなんて。
そう思いながらも、私は凛花に返事をする。
「名前で呼ぶように努力するね」
決して「分かった」などと肯定してはいけない。
もし私が学校で凛花の名前を呼ぼうものなら、クラスメイトに注目されてしまうからだ。
「明日からは学校、気を付けないとね……」
独り言のように呟く私をよそに、父さんが明るい声を上げる。
「デザート食べて帰るか!」
その一言で話題はすぐに変わり、私たちは甘いものを堪能してから帰宅することになった。




