第7話 ファミレスで距離がおかしい
私たち4人は近くにあるファミレスに来ていた。
「外食なんて滅多にしたいからなぁ」
父さんが感慨深く口にする。
「私たちも家で食べることが多いから、外食はほんとに久しぶりよ」
晴海さんもにこやかに笑った。
「せっかくの外食だ。莉茉も好きなやつ頼むんだぞ」
父さんに続いて晴海さんが凛花に言う。
「凛花も好きなものを頼みなさい」
「分かったよ。どれにする? お姉ちゃん」
お姉ちゃんという言葉。
私はその言葉に慣れるのには時間がかかるだろう。
まさかあの黒瀬さんに言われる日が来るとは、流石に思っていなかった。
しばらくすると各々の注文した商品がテーブルに運ばれてくる。
「美味しい!」
「良かったな!」
私たちは思う存分ファミレスを堪能した。
食事がひと段落したころ、凛花が少し体をこちらに寄せた。
「ねえ、これ食べてみたいんだけど……一口ちょうだい?」
さりげなく手が触れる。
ほんの一瞬のことなのに、胸が少し跳ねた。
「……せっかくだし、一緒に食べたいな、って」
凛花は小さく笑い、こちらをじっと見つめる。
父さんと晴海さんは普通に会話している。
その視線の先で、私と凛花だけの世界が、少しだけ静かに、近くなった気がした。
まだ小さな距離の変化だけど、確かに何かが動き始めている――そんな気がした。




