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第14話「はじめての討伐依頼」


朝のギルドは、いつもより静かだった。

受付カウンターに立つ女性職員が、書類をまとめている。梓は悠斗の姿をちらりと確認し、迷いなく歩を進める。


「昨日、訓練もこなせたし。今日は討伐依頼に挑戦しよう」


「……うん、任せる」


梓が掲示板の前で立ち止まり、いくつかの依頼を眺めた。

そこにはモンスター討伐の依頼がずらりと並んでいたが、その多くは“Fランク以上”の制限つき。2人が受けられるのはまだ“Gランク”の初級依頼に限られていた。


「……あった。これ、どうかな?」


梓が指差したのは、「森周辺に現れる群れスライムの討伐」依頼だった。

危険度は低いが、数が多く地元の農家に被害が出ているという。


「スライムって、あの、ぷるぷるしたやつ?」


「そうそう。油断すると包み込まれて窒息するらしいけど、ちゃんと距離を取れば大丈夫。集団行動してるから、数には注意だけどね」


悠斗はうなずいた。

戦うのはまだ怖い。でも——見えないという利点を活かせば、自分にもできるかもしれない。


梓がギルド職員に声をかけ、依頼を受ける旨を伝える。

職員は確認のうえ、簡単な地図と討伐条件を渡してくれた。


「討伐数は最低三体。証拠は核石。持ち帰った数に応じて報酬が決まります」


「ありがとうございます。行ってきますね」


梓が頭を下げ、悠斗に合図するように目を向ける。


ギルドを出ると、クロノが木陰からひょこりと姿を現した。

今日もやる気はなさそうに見えるが、悠斗の後ろをとことことついてくる。


「……クロノも、くるんだね」


「なんだかんだ、気になるんじゃない? あなたのこと」


梓が冗談めかして言う。

クロノは返事をするように、小さく鳴いた。


森は街から少し離れた場所にある。

道中、2人は戦いのシミュレーションを交わしながら歩く。


「悠斗は前に出ないで、後ろから狙って。私は盾になるつもりで動くから」


「了解……。僕、奇襲ならできるかもしれない」


「うん。気配がわからないの、すごい武器だよ。普通なら“見えない”だけじゃ通用しないもん。気配も音も消えてるって、敵からしたら最悪だよ」


そんな会話をしているうちに、森の入り口に着いた。

梓は深呼吸をして、腰の剣に手を添える。


「じゃ、いこっか。初めての討伐、気を引き締めてね」


悠斗もうなずき、木々の奥へと足を踏み入れた。

その肩に、黒猫の影がこっそり乗る。


森の静けさの中、彼らの新しい一歩が始まった。

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