第11話「素材納品と次の一歩」
「これで……たぶん、必要数いったはず!」
梓が革袋を軽く持ち上げる。陽が少し傾き始めた森の中、ふたりは達成感のある表情を交わした。
悠斗も自分の袋の中を確認する。
「十二本ある。梓は?」
「十三本。あわせて二十五本だね。よし、依頼達成!」
「……地味だけど、けっこう大変だったな」
「ね。でも、最初の依頼ってそんなもん。お疲れさま、悠斗くん」
梓は笑顔で小さく手を出す。
悠斗は少し照れながら、静かにハイタッチを返した。
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ギルドに戻ると、受付の女性が明るく出迎える。
「お帰りなさい、梓さん。シュリ草の件ですね」
「はい、こちらです」
袋を渡すと、受付の女性は慣れた手つきで中身を確認する。
「ええ、確かに。必要数ちょうどですね。おふたりとも、お疲れさまでした」
そう言った彼女は、ふと悠斗に視線を向けたが、あえて話しかけることはなかった。
ただ、梓の方へ小声でささやく。
「……新人さん、なかなか優秀ね。素材の並びもきれいだったし」
梓はくすりと笑い、囁き返す。
「でしょ? 意外と真面目なんだよ」
そのやりとりを聞いていなかった悠斗は、きょとんとした顔で周囲を見回していた。
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報酬を受け取ってギルドを出たとき、夕焼けの光が石畳に長く影を落としていた。
「……ふぅ、なんとか終わったな」
「うん、いいスタートだったよ。ちゃんと依頼達成できたし」
梓はポーチを腰にしまいながら、ふっと笑った。
「これで、パーティーとしても一歩前進って感じだね」
「正式に組んでから、最初の仕事だったもんな」
悠斗は空を見上げて小さく呟いた。
自分が“誰かと一緒に”何かをやり遂げたことに、微かに胸が熱くなる。
「……これからも、よろしく頼むな」
「こちらこそ、よろしく。悠斗くん。あっ」
梓がふと視線を前方に向ける。
「あの子、また来てる」
街角の石の上で、黒猫——クロノがちょこんと座っていた。
まるでここが自分の居場所だと言わんばかりに、堂々とした佇まい。
悠斗の足が自然と近づく。
「……お前ももう、俺たちの相棒ってことでいいのか?」
言葉には答えないが、クロノはまっすぐに悠斗の目を見つめていた。
(ああ……なんか、悪くない)
悠斗は静かに、猫の背を撫でた。
その手に、ほんの少しだけ——未来への実感が灯る。




