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『デジタル探偵シャドー』  作者: さらん
第二十七の事件:『空白の、ノート』篇

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第百三章『空白の、ノート』

『君たちの、言葉を、思い出せ』。完全に、デジタル化された学園を、沈黙させたのは、暴力ではなく、たった一行の、詩的なメッセージだった。


デジタル探偵シャドー:第百三章『空白の、ノート』


2025年10月13日、月曜日、午前8時30分。


豊橋の事件を終え、東京に戻った、冴木の元に、新たな事件の要請が、舞い込んだのは、週末が明けたばかりの、月曜の朝だった。


舞台は国内最高峰の、エリート進学校『私立・慧明学園』。


その朝学園は、静かなパニックに、包まれていた。

生徒たちが教室で、支給された学習用タブレットを開くと、全ての画面が、同じ表示で、固まっていたのだ。


そこにあったのは、美しいCGで描かれた、真っ白なノートの見開き。


そして、羽根ペンがひとりでに動き、流麗な筆記体で、何度も同じ言葉を、綴り続けている。


『君たちの言葉を、思い出せ』


アプリも、教科書も、開けない。再起動も、できない。

生徒と教師を繋ぐ、全てのネットワークが、このたった一つの、詩的なメッセージによって、沈黙させられていた。


理事会は、騒然となった。

各界の著名人や、富裕層の、子息が通う、この学園の、最先端システムが、麻痺させられたのだ。


通常のサイバー犯罪対策課では、手に負えない。理事会のトップダウンで、警視庁の奥の院……冴木閃に、白羽の矢が、立った。


警視庁の自室で、冴木はモニターに、映し出された「空白の、ノート」の画像を、静かに見つめていた。


冴木: 『……シャドー。犯行に使われた、プログラムの解析は、終わったか?』

シャドー: 『はい。非常に、高度な、技術です。OSの、根幹部分カーネルに、直接、介入し、表示を、完全に、ロックしています。データを、破壊するでもなく、金銭を、要求するでもない。……これは、明確な、思想犯です』

「……だろうな」


と、冴木は頷いた。


「この、メッセージ。『君たちの言葉を、思い出せ』。まるで、デジタル化された、現代教育への、アンチテーゼだ」


冴木: 『容疑者は、学園の内部に、いると思うか?』

シャドー: 『……可能性は、高いでしょう。ですが、あなた様が、先ほど、おっしゃっていたように、『動機を、持つ、人物』と『実行可能な、技術を、持つ、人物』が、同一とは、限りません』


シャドーもまた、生徒が外部の、プロを雇った、という、可能性を示唆していた。


「……いずれにせよ、だ」


冴木は、立ち上がった。


「机の上で、考えていても、生徒たちの声は、聞こえてこない。……少し早い、二学期といくか。行くぞ、シャドー」


思想犯の、息が潜む、沈黙の学園へ。

デジタル探偵の、新たな捜査が、今始まる。


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