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7 実は第二王子殿下も可愛げがないと言われるようです

「早速だけどエヴァンジェリン嬢、祝宴までそんなに日が無いから君にドレスを贈りたいと思ってるんだ」

「え、でもそこまでしていただくのは」


婚約者でもないのにね。

そういうのは特別な方にするべきよ。


「いや、僕の隣に立ってもらうんだからそれなりの装いをしてもらう事が必要だよ」


そうね、私が祝宴の為に用意して貰っていたのはガスパール様の色のエメラルドグリーンだったわ。

確かにフィリップ様のプラチナブロンドとアイスブルーの瞳の色とは合わないわね。


「後日届けさせるから、それを着て欲しいんだ」

「わかりましたわ、ありがとうございます」


心なしか、お父様は成り行きを見守りながらおろおろしておられます。


「お言葉ですが殿下。娘にそのような…ドレスを贈られるというのは気が退けます。せめて仕立て代を出させていただけませんか」


そう申し出たお父様を殿下が不機嫌そうに睨みます。


「サノーバ候。私はエヴァンジェリン嬢に頼みごとをしに来たのだ。それを聞き入れてもらうために必要なものを私が用意することが不服か?」

「い、いえ、とんでもない事でございます。全ては殿下の御意に」


お父様は慌てて頭を垂れます。

ええ、そうなのよ、フィリップ殿下は昔から頑固ですのよ。

私もお父様が殿下に勝てるとは思っておりませんわ。


ご用事が済んだからもうお帰りになるのかと思っていたら、お父様と話があると言って殿下はお父様と応接室に向かわれました。

私はお部屋に下がった方が良いみたいですわね。

それならさっきのバラを部屋に飾るのを見ていましょう。

屋敷にある花瓶をたくさん集めないといけませんわね。

それにしてもお腹が空きましたわ。

朝食も未だだったんですもの。




「殿下、申し訳ございませんでした」


応接間にフィリップを案内すると、すぐにランセットは謝罪をする。


「ほう、その謝罪は何に対してだ?」


先程エヴァンジェリンに見せていたにこやかな表情とは打って変わって、フィリップの表情は険しい。


「それは…」


ランセットは視線を泳がせる。

心当たりのあることが多すぎた。

先ず第二王子の申し出を否定し断る様な事を言ったこと。

そして王命で結ばれた婚約を破談にさせた妾の連れ子の所業を見逃していたこと。


「…まあいい。”あの場”で父王陛下は最低限の処罰しか下されなかった。しかし王命に背く家門に対する貴族の目は厳しい。あの後、父王陛下の側近達にそれを危惧していることを諭され、両家に対してより厳しい処遇を決められた」


冷淡に発せられる第二王子の声は、年齢よりも大人びて聞こえる。


「なあサノーバ候?其方の何が最も重い罪だったのだろうか」

「それは…」


ランセットは決して貴族の常識を忘れていないつもりだった。

妾とその娘を引き取っても貴族ではないと線引きをきちんとしていた。

ただ、愛情を甘やかすことと履き違えて平民の娘を助長させてしまった。


「あの娘は平民ゆえに貴族社会の決まり事を理解するのは難しかっただろう。ならばそのような者を由緒ある侯爵家に入れるべきではなかった」


わかっている。

そのためにエヴァンジェリンにも嫌な思いをさせてしまった。


「其方の元に愛妾が居る限り、愛妾は何とか娘を助けようとするだろう。だがこれ以上裏切りに裏切りを重ねる事は王家は看過しない」

「…」


平民の愛妾を侯爵家から切り離す。

それは必須だった。

領地の経営においてもランセットはこれといった失策もせず、事業も上手く行っており領民からも慕われていた。

だがたった一つ、妻亡き後に求めた心の安らぎ。

その人間らしい弱さが招いた失態だった。


「一度付いてしまった悪評というのはなかなか払拭がし難い。何の瑕疵もないエヴァンジェリン嬢ですら疵物と呼ばれるのだ。その原因を作ったのは、候、其方もではないのか?」



『エヴァンジェリン様は、結婚も諦めると仰っておりましたの』


妹姫が悲しそうに言っていた。

彼女は共に国のために働いてくれる同志だと思っていた。

その未来を親が閉ざしてどうするのか。


「父王陛下からの言葉を伝える。サノーバ侯爵位を王家預かりとする」


それは実質的に家の取り潰しとなる。


「ははっ…しかし、それではエヴァンジェリンは」

「聞こえなかったのか。侯爵位を王家が預かる。次期侯爵であるエヴァンジェリン嬢自体も王家の預かりとなり…つまり私の妃にする」


今度こそランセットは絶句した。

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