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4 王女殿下もお怒りでございます

慌ただしくカタリナの出立を見送って数日後、王城のアンジェ王女からお茶会の招待状が届いた。

アンジェ様はエディン公爵の長子、オリバー様の婚約者だ。

オリバー様は流石に公爵家の後継ぎとして幼少期からしっかりと教育を受けて来られたので素晴らしい方で、国王陛下からの信頼も厚く、王女殿下の降嫁先として認められた方だ。

私も尊敬している。

知的な方なので様々な方面の話題でも話が弾む。

国策の話をする事もあれば、アンジェ王女もその中に交じって話す事も少なくなかった。



「折角エヴァンジェリン様と姉妹になれると思ったのに残念ですわ」


心からがっかりした様子を隠すこともなくそう言ってくるので、くすぐったいやら何やらで居た堪れなくてムズムズする。


「いえ、私がガスパール様を繋ぎ止められなかったばかりに」

「そんな事ありませんわ、エヴァンジェリン様は魅力的です!それがわからない殿方の方がおかしいんです!」


うふふ、アンジェ様、私の事大好きでいらっしゃるのよ。

それでガスパールと結婚したら本当に姉妹になれるって喜んでいらっしゃったから、その話が流れて一番悲しんでらっしゃったのはアンジェ様じゃないかしら。


「ありがとうございます、アンジェ様。でももう私、結婚は半ば諦めておりますの。私の代で侯爵家が終わるかもしれませんが、王家に領地が召し上げられる時に良い領地だと言ってもらえるように頑張るつもりですわ」


自分と釣り合いの取れる年齢と身分の殿方は大体結婚しているか婚約者持ちですからね。

次期侯爵になるからには、婚約を破棄された疵物令嬢だからって何処かの後妻になったりするわけにもいかないし。

それに、可愛げが無いって捨てられる程度には魅力もなさそうだし。

侯爵の地位と潤沢な資産目当てで近寄って来て可愛げのある他の令嬢を愛人として囲うような男と結婚するのもありえませんし。


「ああっ、私が男だったらエヴァンジェリン様の夫に立候補しますのにぃっ」

「ふふっ、アンジェ様にそう言っていただけると嬉しいです」


本当にアンジェ様は私が好きなのね。

可愛げが無くても良いという殿方だっていらっしゃるかもしれないわ。

尤も私が伴侶に望むのは誠実さと、できればそれなりの領地の経営手腕があればいう事なしね。


「エヴァンジェリン様は御自身の良さについて無自覚なのですわ。自らの幸せより国や領民の幸せを何より大切になさる心根の美しさには表面だけの美しさなんて到底及びません!それに妹御と比べてどうかというだけで、エヴァンジェリン様自身も美しい方だと思いますっ」


まあ、お父様もお母様も上流貴族なのでそれなりに整った容貌をしていらっしゃる。

その血筋なのだから平均以上の容姿に恵まれているとは思っておりますの、ありがたい事です。


「貴族として生まれて良い暮らしをさせていただいているのですから、支えてくださる皆様のために働くのは当たり前のことです。何も大層な事でもありません」


それにふるふるとアンジェ様は首を振った。


「そうなのですけどね、本来はそうなのよ。でも余りに私欲に走る貴族も多いし、恥ずかしながら王族にだってそのような者は居るの」


溜息と共にアンジェ様はカップを置いた。

王女殿下であるアンジェ様は政略の駒として他国の王侯貴族に嫁がれる選択肢もあり得た。

けれど確実に王族の血を残すために国内の公爵家の嫡男との婚約が決まった。

政略であれど、真摯なオリバー様はアンジェ様を大切にされて今では相思相愛の理想のカップルとして広く国民にも支持されている。


「私は可愛く愛される王女であれと育てられてきましたわ。けれど初めてエヴァンジェリン様にお会いしてから考えが変わりましたの」


アンジェ様とは7年前に王命でガスパールとの婚約が結ばれた時に初めてお会いした。

その折に大変王女殿下や王子殿下方に気に入られ、定期的に開かれるお茶会に招かれ交流を深めた。

私の話題などお父様の手伝いをしてる領地の経営の事や事業の事くらいしかない。

それをアンジェ様は大層興味を持って話を聞いてくれた。


いずれは王籍を抜けて貴族籍に下る。

だからこそ国民の暮らし向きの事に関心が向いたのだという。

今では兄王子殿下方とも国政の話をよくされるんだとか。

そして父王の事を身近に見ている分、社交界で可憐で美しいと言われるカタリナと比べられるエヴァンジェリンの味方でありたいと思うようになった。



若い頃は美しさを誇っていた王妃陛下も、年齢を重ねれば容色は衰える。

王族には王太子のスペアも必要で、周囲に求められるまま国王は側妃を次々に迎え、その側妃達も加齢で容貌が落ちれば王の寵を失い、世捨て人の様に扱われる。

今では市井に降りて美しい娘を伽に呼び妾として侍らせることも珍しくないらしい。

そんな人として爛れた者がすぐ近くにいるので、王女殿下は美醜でパートナーを選ぶ男を心底毛嫌いされていた。


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