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27 青天霹靂なご提案を王太子殿下からされました

あっという間に王太子殿下の婚礼式の日を迎える事になりました。

私も付け焼刃とはいえ、あれからみっちり王妃陛下の王子妃教育を直々に受ける事になりました。

侯爵家令嬢として、公爵夫人としての教育の素地があったのが良かったのか、王妃陛下より合格点をいただく事ができました。

王妃陛下は厳しい方という話を伺っておりましたので、王子妃として認められるのは嬉しいことです。


本日の王太子殿下の婚礼の祝宴では、同時に私自身のサノーバ侯爵継承とフィリップ王子殿下の婚約者としての発表とお披露目になります。

お父様は爵位をなくすかどうかの選択を王家から迫られており、先に私に爵位を継承されました。

その上で最後の最後に愛妾ではなく私の爵位が抹消されないようにと自らの身の振り方を選んでくださいました。


サノーバ侯爵家での愛妾とその娘のカタリナの振る舞いには思う事は多々ございますけども、最終的に私を守ってくださったのには感謝しています。



元のサノーバ侯爵の王都にあるタウンハウスには、お父様が元侯爵として管財人として残ることになりました。

執事のアルバートとその息子の私付きの執事だったアーノルドもその手伝いをしています。

特にアーノルドはいずれの日にか私が再び侯爵として、または私の子が侯爵としてそこに戻る日の為に研鑽を欠かさないとのことです。

邸で働いていた人達も、再就職先に紹介状を書いたものの、古参の方々は少なからぬ人達が残ってくれたようです。

領地の経営自体は王家の一員となる私が直々に続行しているのですから、そういった人達にお給金を払う事は王家からも任されていました。


領地の人々は、誰が領主であるのかの名前が変わっただけで、その他は何も変わったこともなく反発も起きずに平和に過ごしております。

それどころか要望や不満が侯爵家を通さず直接王家に届くので反応や対策が早く、領民達は喜んでおります。


細かい事はどうでもいいのです。

彼等の生活が幸せになったというのなら私も本望です。



婚礼式の前に、王太子殿下と婚姻なさるナミア様との顔合わせがございました。

ナミア様は島国であるトーエンの王女殿下です。

トーエンはシオンよりもはるかに小国で、資源もそう多くはありません。

リンゼイとミッドガルド、どちらとも盟約を結ばず中立の国です。

一見して大国からみれば旨味のない国に思えますが、問題はその立地でした。

この国を軍事拠点にすればリンゼイとミッドガルド以外の小国群を手に入れやすくなります。


そこには我がシオンも含まれます。


王太子殿下の結ばれた政略は、我が国にトーエンの勢力を取り入れるためでした。

そのためにはトーエンの一貴族ではなく、王家の者である必要がありました。


ナミア様はそれはお可愛らしい方でした。

庇護を必要とする国の王女殿下ならではです。

くるくると小動物のように変わる表情、愛らしい仕草。


自慢じゃありませんが私には到底真似できそうもありません。

世の殿方はこういう方を庇護したいと思うのでしょう。


顔合わせの後、王太子殿下が私に話があると仰って会談の場を設けられました。



殿下によると、ナミア様は王女とはいえ小国の王室。

シオンの国政の仕事は任せられない。

そこで王太子の側妃となって力を貸してくれないか、とのことでした。


ナミア様との婚姻により、ミッドガルドを刺激する恐れが出来ました。

何しろシオンの王家はリンゼイ王家の血を引く者が4人も入り込んでいます。

トーエンがリンゼイ側に取り込まれるのは確実です。

となれば、ミッドガルドもシオンに何かしら仕掛けてくると見るのが妥当です。


「ミッドガルドは直接王家の人間には手を出さないだろう。それはリンゼイへの宣戦布告と同義になる」


王妃陛下はそのための予防線をも張っておられたのです。


「エヴァンジェリン嬢、貴女にはその自覚はないだろうが、サノーバ領と侯爵のインフラ技術は大国であればあるほど欲しいと感じるものだ。貴女は公爵家の子息に婚約破棄をされて疵物になったからとフィリップの求婚に甘んじたのではないか。私の妻の身分なら強い立場を得て貴女を守ることができる」


…つまり何ですか。

私の保身の為に王太子殿下の側妃になれと。

ついでにナミア様では間に合わない国政の手助けも私ならできると承知の上で。



この場にフィリップ殿下を入れない理由がわかりました。

何処が良いのか私には甚だ疑問ではありますが、フィリップ殿下は私に相当執着しておいでです。

私がフィリップ殿下に恋愛感情を持っていないと踏んでのご提案だったのでしょうね。


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