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26 ハーレムも逆ハーレムも手を下さずとも不幸になるのですわ

シルビアが国王の寵愛を受けていられたのも数年の事だった。

どんなに可愛らしくても、加齢には逆らえない。

社交の場に出れば、若く美しい乙女達が目に入る。

どうしてもナバールと同い年のシルビアでは見劣りがする。

次第にナバールの足はシルビアから遠退いた。


そんな夫の所業にはマルガレーテはすぐに気付き、あの宝珠を溶かしたお茶をナバールにも飲ませた。



癒されたいというなら自身の子供達がいるではないか。



言い訳を重ねるナバールにもうんざりしていたが特にマルガレーテは罰を与えなかった。

マルガレーテが手を下すまでもなく、ナバールもその相手をする女達も報いを受けていたからだ。



癒しとなる筈の王子や王女達は、母親を蔑ろにする父親には懐かなかった。

特に母親と同性であるアンジェの反感は半端なかった。

そこから改めようとしたところで、もう過ぎてしまった時間は戻る事は無い。

可愛い盛りの王子や王女に疎まれた父親など、自業自得でしかなかった。

今更王妃に歩み寄ろうとしたが、


『多くの女達と夫を共有するなんて気持ち悪い。しかも下賤の女も含まれているのでしょう。貴方は多くの男と共有した女を側妃にしているからその辺りは頓着しないのでしょうけど』


と事実を楯に突き放されてしまった。

その場に居た侍女や侍従は尤もな事だ、と内心王妃の言葉に頷いていた。

王妃の立場はこの国だけでなく、リンゼイでも変わらず王位継承権を持っているので頗る強いものなので、国王とておいそれと逆らえない。

特に権力を翳して側妃や愛妾を虐めたりもしないので、咎める事もできない。

それどころか、シルビアの方がマルガレーテに「王の寵も受けられないくせに」とマウントを取っていたのは侍女達の間で有名な話である。

怒るマルガレーテ付きの侍女達を笑って宥めていたのはマルガレーテ本人だった。


改めて側近や侍女達はマルガレーテの器の大きさに感嘆することになった。



落ち度は国王にしかなかったのだ。

あれほど魅力的に思えたシルビアも、年齢を重ねて若い頃の輝きが褪せるとキィキィと喚いて私は愛されている!と吹聴する醜い女の本性が目についた。

そして王子と王女達は、将来自分のパートナーとは信頼できる関係を作ろうと固く心に誓い、成長した。

本来大切にするべき相手を大切にせず、誰からも愛されることも誰を愛することもなく、国王は孤独になっていく。


結果、他者を単なる駒の様に考える冷酷な国王になっていった。


誰のせいでもなく、国王自身がそうなるように自分を追い込んでいたのだ。



国民は王妃マルガレーテに心から感謝している。

もしもこの賢妃がいなければ、シオンはすぐにでもミッドガルドやリンゼイにさえも攻め込まれて国自体がなくなっていたかもしれなかったからだ。

王家の子供達は皆リンゼイ王家の血を引き、更にはリンゼイの王位継承権すら持っていたのだった。

フィリップとアンジェは王家のスペアであるだけでなく、リンゼイ王家のスペアでもあった。


次からエヴァンジェリン達の物語に戻る予定です。

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