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16 王家の重みは半端ないのです

国王陛下と王太子殿下がご退出されたあと、フィリップ殿下は人払いをされました。

側近のノリス卿だけは、話が聞こえない程度の距離にと入り口付近に控えていただくことになりました。

万一耳に入っても差し支えない方であることと、安全を慮ってのことです。



「先程は兄上が失礼をしてしまった。申し訳ない」


ソファに座るなり殿下が謝って来られたので少し驚いていました。


「王家の人間は人を駒のように扱う事が多い。道理としてはわかっているけど、僕の大切な人を傷つけるのは許し難かった」

「いいえ。私達貴族は王家より地位と領地をいただいてそれなりの生活をしているのですもの。王家に仕え、領民を守る事が私達貴族の大事な務めだと思っております」


そう返事いたしますと、殿下はへにゃっと悲しそうなお顔をされました。


「僕もそのように育てられた。王族は国で最高の権威を持つのだから、私の部分を優先してはならない。国民に仕え、守るのが王族として生まれたものの義務であると」


両親である国王陛下と王妃陛下もそうだった。

正しく政略で結ばれ、他国の王女だった王妃陛下をこの国に迎えられた。

その婚姻に個人の意思など関係ない。


「母上が御子を三人授かるその前に父上は側妃方を迎えられた。国政補佐の意味合いも強い。自分の伴侶を自分の意志で選べなかった分、父上は自分の意志で選んだ令嬢を傍に置きたがったんだ」


国内の高位貴族令嬢でしたら、それこそ王妃の補佐をするくらいの器量はありましょう。


「母上は他の妃達に御子ができる事を望まず、御子ができないようにする薬を与えたが父上はそれを黙認した。下手に側妃達に御子ができて将来の王位を廻って内紛が起きては母上の母国との関係が悪化しかねない。そのような諍いは父上も望んでおられないからだ」


成程。

御自身の欲とはその辺りはきっちりと線引きしておられるのね。


陛下がそうだったから私のお父様もそうされたのかもしれないわ。

家督を争う事にならないように連れ子のカタリナに貴族の身分を与えなかったのは。


「無事に母上が僕という王太子のスペアと妹姫のアンジェを産んだから、王妃としての大きなお役目は果たされた。だからこそ母上の地位は揺るぎないものになったし、国王である父上とておいそれと王城を纏める母上には逆らえない」


そうね、対外関係を保つにも王妃陛下を立てなければなりませんわね。


「側妃様方は、陛下の御子を望んでおられませんでしたの?」


心に思った疑問を出してみれば、殿下はふるふると首を振られました。


「心の中でどう思ってるかは僕にも測りかねるけど。それでも国王である父上の立場を損ねるようなことをしたらたとえ父上でも斬り捨てなければならないと判断されるだろうね。そうでなければ国王なんて務まらない」


国を預かるという事は、自分自身の感情など二の次にさせられるものですのね。

貴族もそういう部分はありますけど、王族は重みが違いますわ。

だからこそ御子ができない薬を飲まされる事にも甘んじたのだろうし、陛下も黙認された。


「それは王族である以上僕も同じだ。初めて恋に落ちた日に僕は失恋したんだから」


王家の子供達と未来の女侯爵となるエヴァンジェリン、そしてその婚約者となった公爵家の三男ガスパールが集い、披露目と顔合わせの席が設けられた日。

時折王妃が開く茶会の席でも同じ年頃の令嬢を見る事はよくあったが、エヴァンジェリンは幼いうちから次期当主としてしっかりとした考え方をしており、ふわふわとした幼い令嬢の雰囲気とは一線を画していた。

将来の兄の治世を自分と助けて行くのはこの子なんだと思った。

そして彼女が王命で婚約を結んだというガスパールも併せて紹介され、この婚約が覆らないということは12歳のフィリップにも理解ができた。


「何度も父上に嘆願した。僕はエヴァンジェリン以外は妃にしたくないと。でも父上は僕の父上である以前に国王だった。人並みに恋をしても政略の前には諦めなければいけないことを父上は誰よりも身をもってわかっていらっしゃった」

「あの…陛下にはそういった、諦めた方が?」


うん、と殿下が頷かれます。


「最初の側妃、シルビア様が父上が学生時代に仲が良かった方で気心がしれていらっしゃった。家柄も伯爵家の令嬢で身分差もギリギリで。その後、リンゼイ王国の王女との政略婚が決まって、シルビア様とは婚姻できなくなった」


でも今側妃となっておられるのですよね。

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