13 青天の霹靂な事実が発覚いたしました
「うわあ…殿下、独占欲まるだしのドレスを贈って来られるなんて」
そうですよね!誰がどう見てもそう思いますわよね!
「違うの、私は殿下とはそういうのでは」
「案外と殿下はそのおつもりなのではないでしょうか」
「でも誤解されたら殿下はお困りになるんじゃ」
「御自身が誤解されてもそういう品をお嬢様に贈られるのですから自業自得にしかなりません」
それどころか誤解されたくてわざとこれを贈ったのでは、とまでアンナに言われる始末。
貴女、不敬罪になっても知りませんわよ。
抗議…は流石にできないけど、真意を聞く権利くらいはあると思うの。
手紙で訊いても素っ気ない返事しか返ってこないのはわかっております。
これでも付き合いの時間だけは長かったですからね。
それに一応お礼も申し上げなきゃですし。
その日の午後、登城をすると先触れを出したら、案外とすんなり了承されたので驚きました。
まるで私が行くのをわかっていて待ち構えてでもいたかのようです。
「ドレスは届いたのかな、エヴァンジェリン嬢。もう試着はして貰っただろうか」
王城で目通りしたフィリップ殿下は私の予想以上にニコニコとご機嫌なご様子でした。
「いえ、未だでございますが…ドレスを贈っていただきましてありがとうございます」
「なんだ、試着をして不具合があったら調整するから早く着てくれるといいんだけどな」
いやいやいや、ウッカリ袖を通してしまったら返品できにくくなるじゃないですか。
「王家からの下賜されたお品ゆえ、勿体無くておいそれと触れる事もできませんわ」
まあ半分は本当の事ですからね。
「僕が贈ったものなのが不満なのかな?」
「いえ、そんな事は!」
不味いですわ、いつもの喧嘩が始まる前のパターンですわ。
でも今喧嘩をするわけにはいきませんの。
「それで、今日はどういった用件で登城されたのだろうか。僕としてはただ遊びに来てくれただけでも歓迎するんだけどね」
「…」
殿下、侍従も侍女も近衛も目の前に控えておりますのに、そのご発言は不味くないのでしょうか。
「その、少々疑問がございましたので。お手紙で遣り取りするよりは早く的確なお返事がいただけるものと考えるに至りました」
「ほう?どういった疑問かな」
ふう、と一呼吸置いてから戴いたドレスについての感想を述べさせていただきます。
「祝宴の為のドレスを賜り、感謝申し上げます。しかしながら、あのお品は周囲に誤解を与えてしまうようなお品ではないかと思ったのです」
「誤解とは?」
「その、殿下が私などと特別な関係にあるのではないかという、王家にとっても不名誉な誤解をさせてしまうのは後々お困りになるのではと思いまして」
「…問題ない」
―――は?
いえいえ、問題は大ありでしょう!
「寧ろそう思って欲しくてわざわざあのドレスを仕立てて貰った」
「え?は?え?」
喧嘩どころか、殿下が滅茶苦茶楽しそうなんですが!
「公爵家と侯爵家の婚約破棄事件は確かに家門に傷をつけた。けどその責任はエヴァンジェリン嬢には全くないだろう?だからこそ父王陛下も君の後ろ盾になるとお考えになったのだ」
「ええ、はあ、まあ…」
「ああ、それと、サノーバ候はどこまで君に話をしているのかな」
「話と言いますと…父が家督を私に譲るということは聞き及んでおりますが」
ふん、と殿下が目を細めて足を組んだ。
「侯爵家は王家預かりになったんだよ。それは聞いてなかった?」
―――はぁあああ!?




